プロローグ2
突然だが、オレは異世界からの転生者である。その世界では日本という国で生まれ育ち、年は17歳だった。
そんなある日、オレは死んだ。死因は多分、心臓麻痺とかそんな感じ。ゲームをしてたら突然、胸に痛みが走ったと思ったら、次の瞬間には死んでいたんだから、笑うしかない。
何故、死人が死んだと分かったのか──
自分でもよく分からないが、ふわふわとした世界で、ぐにゃぐにゃしながら自分の死を悟ったのだ。ホント、よく分からないけど、そういう訳だ。
そして、気づいたら赤ん坊になり、新しい命として、異世界にいた。オレは、転生した。
その転生先の世界だが、オレには馴染みのある世界である事に、少し成長してから気がついた。
この世界は、オレが日本にいたころにやっていた、オンラインゲームの中の世界そのものだったのだ。地名や地形、一部の人名までもがゲームの中の物と同じ。更にオレは、オレ自身が、ゲームの自分のデータを、一部引き継いでいる事に気がついた。
自慢じゃないが、オレはゲームの中じゃトップクラスの魔法使いで、ぶいぶい言わせていた。そのおかげで、最強クラスの魔法を使い放題の、ヌルゲー人生が待っている──。
なんて思ったのは、一瞬だけだった。
というのも、そのゲームは装備に対する依存度が大きく、イイ装備を装備してなければ、いくらレベルがカンストしていても、雑魚というゲームだったからである。具体的に、オレは全ての魔法が使える。しかし、先ほども述べた、イイ装備を装備していないと、ある一定以上のレベルの魔法は、使えない。というか、雑魚魔法しか使えない。そして、イイ装備がないので、魔法が使えても威力がしょぼい。そして、この世界に、ゲームの中のイイ装備のような、装備者のステータスを飛躍的に伸ばす装備は、存在しない──まぁ、多少は役に立つものはあるが、ゲームの中の物と比べると、しょぼすぎる。更にはレベルという概念も特にないので、ステータスの引継ぎはなかった。ただ、習得した魔法は全て引き継いでいる。なので、全ての魔法を使えるのに、使うことができないという、ジレンマに陥っている。
唯一の救いは、ユニークスキル──無詠唱を引き継いだことか。その名の通り、無詠唱で魔法を使えるという、便利なスキルだ。
通常、魔法を使うには、グリムという、体内と大気中に含まれる、魔法の元素みたいな物を収束する、魔法の杖等の媒介物が必要らしい。それを手に持ち、人間が聞くことのできない言葉を唱え、媒介物から魔法を放つという、少々時間がかかる物だ。普通の魔法使いの魔法を見たことがあるが、コレがけっこう時間がかかる。オレはこの無詠唱のおかげで、詠唱時間を飛ばし、更に詠唱をしないので媒介物も必要なく、魔法を使用できる。けっこう凄い事らしい。
このスキルのおかげで、ゼイベル率いる傭兵団、グランレックスに入ることもできた。傭兵団に入るまで、紆余曲折あったがそれはとりあえず置いておくとして、無詠唱と、習得済みの魔法が、オレの引継ぎデータという訳。
これがなければ、本当に普通の人間だった。傭兵団に入る事もなかっただろう。
傭兵団にはいってからは、それなりに楽しかった。ダンジョンに潜り、スケルトンやらゴブリンと戦ったり、交易をしたりして、国中を駆け回った。その中で、命を落とした仲間もいたが、ゲームの中でしていた冒険を、実際に自らの身で体験するのは、充実感を与えてくれた。
そんなある日、獣人との戦いが始まって、それで一時的に、軍に雇われる形で戦う事となってしまった。その初戦が、先ほどの、ライオン型の獣人との戦い。
ゲームの中では、おとなしかった獣人と、どうしてこんな事になってしまったかは、分からない。上手く境界線が作られていたので、争いになる理由も、気性もないはずだ。
しかし先ほども見た通り、この世界の獣人は凶暴で、凶悪なようだ。一つの国は、彼らに潰され、皆殺しにされたという話も聞く。そんなヤツらに負けたら、どうなることか。想像するのも恐ろしい。
今は、そんな戦いの渦中に、オレはいる。