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 「一カ月の自宅謹慎」が開ける頃には、アルムは、すっかりやる気をなくしていた。1日、部屋に閉じこもり、母親に注意されても、キレて壁を叩くような状態で、そのうちに母親も何も言わなくなった。担任のバイソンがアルムの家を訪ねて来たのは、謹慎期間が過ぎて一週間ほどたった頃だ。

「どうだ?そろそろ学校に戻って来ては」

 訪れたパイソンは穏やかな口調で言った。

「処分を受けたのは、君だけじゃないんだよ」

 パイソンの話によれば、ロビン、リュート、フォルスも、いかばかりの処分を受けたという。さらに、3人はアルムへの暴力に、反省を口にした、ともいう。ただ、アルムがクレーベの名を出すと、

「それは今回の問題とは別の話だ」

 とパイソンは突っぱねた。

「僕は学校に戻る気はありません」

 アルムは、そこで心を閉ざした。

 数日後、アルムは母親に気づかれないように外に出た。向かったのは、一度だけ訪ねたクレーベの家だった。何をすることもせず、玄関から中を覗いていると、誰かが飛び出して来た。

「あなた、お友達の・・・。どうぞ、あの子が会いたがっているから、会ってください」

 出て来たのは、クレーベの母親だった。家の中に入ると、そこにいるクレーベは、祭壇に飾られた写真だけの存在になっていた。

「取り乱してしまい、連絡もせず、ごめんなさい。私も主人も、あの子に厳しすぎたことを後悔しているの」

 見つめてもクレーベは何も答えず、ただ澄んだ目で笑っていた。

 パイソン先生が再びアルムの家を訪ねて来たのは、数カ月後、夏も過ぎ、秋が急ぎ足で通り過ぎて行く頃だった。

「学校もいろいろあった行事も終わり、落ち着いて来た時期だ。どうだ、再び学校に戻らないか」

 アルムは答えなかった。何もしないでも月日は過ぎて行く。すると少し考えた末に、パイソンは言葉を続けた。

「実はな、もし学校が嫌だったら、私の大学時代の友人が今、教員を辞めて私塾をやっている。そこを覗いてみないか」

 アルムが突然の提案に顔を向けると、

「今みたいな君を、リュートも喜ばないんじゃないか」

 考え抜いた末、アルムが「オーディン塾」を訪れたのは、もう師走で街が慌ただしくなった頃だった。駅前のビルの3階にある塾名が書かれたドアを入り、そこでアルムが名前を言うと、

「君のことはパイソンから聞いてるよ。君は、これから何をしたいんだい?大学に行きたいのかい?」

 そこにいたオーディンが、アルムに温かい視線を向けた。

「このままでは何も解決しない気がして。亡くなった友人にも、顔向けできない気がして」

 アルムがそう言うと、オーディンはうなづいた。

「よし、なら、ここで大学を目指そう、アルム君」。

 そこでアルムは年明けから「オーディン塾」に通うことになった。アルムがオーディンに思いのすべてを告白すると、

「社会の矛盾に立ち向かうためにも、君は学ばなくてはね」

 とオーディンは力強く言った。アルムは、ここでもう一度やり直すことを、心に誓った。

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