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アルムがエコーズ高校に電話をしたのは、テレビで終業式のニュースが伝えられた翌日だった。呼び出したのは、彼の元担任教師パイソンで、電話に出た彼はあわただしく、
「出してほしい書類がある。私は出勤してるので、訪ねてくれ」
とだけ言って、すぐに電話を切った。
「去年の夏と、今年の始めの2回、君の自宅に検定試験の案内を郵送したんだが、君は参加してくれなかったね」
アルムがエコーズ高校を訪れると、通されたのは進路指導室という小さな部屋で、入るとすぐパイソンは言葉を向けた。
「教育制度が変わり、これからは授業にどれだけ出席しても、検定に合格しないと進級も進学もできないんだ。つまり、検定を受けないと、非常に不利な立場に追い込まれる。私にも君の担任という責任がある。だから君には何とかしてほしい」
パイソンは、そう言うと、2枚の紙を机に置いた。1つは「復学届」、1つは「退学届」だった。
アルムは2枚の紙を見つめたまま、何も言わない。
「検定試験は昨年度から、英語と数学。今年度からは、国語と理科も始まるのだが、試験を受けないと、君はいずれも無資格となる。そこで、復学をして検定に臨むか、無資格のまま、学校を辞めるのか、どちらかを決めてほしい」
パイソンの言葉に、紙に視線を落としたまま、尋ねた。
「復学とは、学校に通えって、ことですか?」
すると、少しの沈黙の後、パイソンは答えた。
「極端に言えば、今後は出席は関係ない。9月か3月の検定に受かれば、それでいい。ただ、君の場合は1つ問題がある」
アルムはパイソンに顔を向けた。パイソンは、少しためらうような表情を見せ、言った。
「君の場合、2回の検定試験が未受験だ。それで、それが不合格扱いになっていて、昨年9月に高1前期レベル、本年3月に中3後期レベルが落第ということになっている」
アルムには言葉の意味が分からなかったが、パイソンは続けた。
「つまり、中3前期レベルが不合格の君は、英語と数学の授業を中学校で受けてもらわないといけないんだ」
「中学校ですか?」
思わずアルムは声を上げた。
「中学に行くのは、君一人ではない。他にも数人いる。検定試験は、9月に3過程、3月に2過程が受験できるので、頑張り次第では、高校への復帰も可能だ。ただ、今さら中学に行くのは嫌だと言うのなら、ここで学校を辞めてもらうことになる」
バイソンの言葉に、アルムは少し考えたが、すぐに答えた。
「いいですよ。僕、中学に行きます。英語と数学でしたね。それを中学でしっかり復習して、高校に戻って来ます」
アルムがそう言うと、パイソンは笑みを浮かべた。。
「そうか。ただし、他の教科の検定は、ここで受けてもらうよ。そして君の担任は、これからも私ということだ」
アルムが復学届を書くと、パイソンは1枚の書類を机に置いた。
「中3レベル前期、担当グレイ、イフ中学校」
「イフ中学校」はアルムの出身中学で、担当のグレイも顔見知りの教師だった。書類にはその他、出校の日時と、授業のある教室名、用意する物などが書かれていた。




