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空の鱗と金の瞳  作者: レクレク
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第一話 誘い

『ピピピピッ!ピピピピッ!ピピ…』


「んあ~?」


 朝だ、まごうことなき朝だ。

もぞもぞと枕の上にある目覚ましを止めて、上半身を持ち上げる。


「ふあああああぁ」


欠伸一発、まだ眠気の残る半眼で薄暗い室内を見回す。

カーテンの隙間からは朝の光が細く室内に差し込んでいるとはいえ、朝の行動を起こすには光量が足りず、まずはカーテンを開ける作業が待ってるのだが、それすら億劫で仕方がない。


「また、あの夢だったか…」


幼い頃、正確には小学生の時分に両親が他界する直前に頻繁に見た夢。

恐ろしく綺麗な金目の少女と、青年の最後であろう夢。


不吉な予感を感じて、友人や自分を引き取り育ててくれた叔父に相談してみたものの…。

友人からは「中二病乙!」という反応や、叔父からは「社会人になって慣れない生活からのストレス」なのではないかと疑われ、それとなく病院へ行くように言われてしまった。


「そんなんじゃ、ないとは思うんだけどなぁ…」


そんな独り言を言ってみたものの、客観的に見てみれば自分もそのような反応しか返せないような気がするだけに、なんともいえない気分になってしまう。


「は~、起きて準備するか…」


そんな胸の内に関わらず、仕事には行かなければならいのであるから気持ちを切り替えていくしかないのであった。



~数日後~


「今週末、久しぶりにBBQでもやらないかと思ってみんなに声かけてるんだけど。来てね?」


「……」


友人から電話がかかってきて、出た瞬間にそんなことを言われたのだが、予定がないことを前提にされているような気がして一瞬口籠る。

確かに、仕事の予定は薄っすら伝えてあるとはいえ、彼女でもできていたらどうするのかと…。

いや、彼女と呼ばれる相手は今はいないのではあるものの、少々イラっとしてしまう。


「行くけどさ…」


「オッケー!詳細決まったらまた連絡するよ!」


それだけ言われると、ブツッと音がして電話が切られてしまう。


「ったく…」


悪態をついてみたものの、口元にはうっすらと笑みが浮かんでいる。

そう、こういう強引な誘い方をする時は決まって、この悪友の思いやりなのだ。

何か落ち込んでいたり悩んでいるメンバーがいる時にはこうやって無理やりにでも遊びに誘い気分転換、もしくは相談に乗ってくれるのだ。

だから、最初から断るという気にはならなかった。

だから、あの夢で気分が落ちている自分には、何か準備しろという言葉がなかったのだ。

そして、久しぶりの焼肉(BBQ)というのもやはり、魅力的なお誘いであるのも確かで、当日は思いっきり遊ぶかと週末の予定が楽しみになり、心の中では感謝をしてみたりもしているのだった。



~週末~


川原に設置されたキャンプ場に、満足そうな声が響く。


「はー!食った!」


「お前、食べ過ぎだって…」


「いいじゃん、誘われた時から肉を楽しみにしてたんだからさ」


昼から始まったBBQはやっと終わりの様相を呈してる。

ほとんどの悪友(運転役以外)がアルコールでベロンベロンなって居眠りなどしている中、肉と少々の野菜で腹を満たしていた。

本人曰く、「旨い肉があるのにアルコールで腹の隙間を埋めたくはない」のだそうだ。


「まぁ、思ったより元気そうでよかったよ」


苦笑しながらも、そんな事を言ってくる悪友に、心の中で感謝しながら。


「肉食べ放題に勝るものなし!」


などとおどけてみせる。


「そっか、じゃあ、幹事としてゴミやらこいつらやら片付けしちゃうからその辺散歩でもしてこいよ」


「りょーかい、よろしくー」


幹事が片付けをするというのと、誰かを元気付けるために集まったなら、そのメンバーには何もさせないというのがこのメンバーの暗黙のルールである。

つくづく、得難い友人を得たと思いつつ、川原を歩きキャンプ場から少し川を上った、人気の少ない場所に出る。


「ありがたいよなぁ…」


改めて、感謝の言葉をつぶやきながらゆっくり歩くと、小川のせせらぎと遠く聞こえるキャンプ場の喧騒が耳に心地よい。

夕日に染められた川原や川面は、思いのほか綺麗で目を奪われる。

人が見えなくなったところで、川原に腰を下ろしてしばらく水の流れをぼーっと眺めてみる。


「オレンジ、か…」


思い出すのはやはりあの夢の事。

どうしても、時間があると頭に浮かんできてしまう。

そうして、しばらく呆けているとふいに。


『チャプン…』


水面が揺れた。

魚でもいるのかと目を凝らしてみると。

ゆっくりと、水面が盛り上がり、膨らんでいく。


「えっ…?」


何が起こっているのかわからず、その奇妙な現象に凍り付き反応出来ずに固まっていると。盛り上がった水の内部が、夕日ではないオレンジに輝いているのに気付く。


「!!」


慌てて逃げようと腰を浮かせたところでそれは、唐突に弾けて体をその光の中に飲み込んでゆく。

まるで、スローモーションになったかのようなひどくゆっくりとした時間の中で、強すぎる光に目を瞑り視界が暗転する中、軽い浮遊感のようなものを感じた直後、自覚することなく意識までもが暗転していったのだった。

第一話、初投稿します。

後悔はない

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