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2 「どーおしよっか」←きゅんきゅん

 


「で、どうしようか」


  リア充が全員を見回して、いう。

 

「どーおしよっか、どっしよっか」


  バカが頭を左右に振り振り、歌うように復唱する。


  バカは童顔で幼児体形で、ぱっちりお目めがお人形みたいで、高二にしては痛々しい行動がやたらと似合う。

 髪型も、ご丁寧に高い位置でのツインテ。もしもこの顔とこの体型と、このおもちゃみたいな声じゃなかったら、ただただ痛いだけの大バカだ。ってもこの見た目でやったところで痛くてバカなのには変わりないんだけども。


 でも、可愛い。痛げなしぐさにきゅんとくる。


 と、バカはきゅんきゅんしているあたしに向かってやにわに、


「どーおしよっか、ねーえ、かなめちゃん?」


 意見を求めてきた。


「え、は、へっ?」


 いきなりこられて、動揺した。口をぱくぱくさせてると、今度は


「かなめちゃん?」


 リア充が声をかけてくる。


「あ、は、え、ええっ?」

「さっきからずっと立ってるけど、疲れない?」


 にこにこ笑って、草地をぽんぽんと叩く。


「ね、座って?」

「あ、はい」

「かなめちゃん、でいいよね。あたしのことは眞子って呼んでよ」


 言われるがままに座るあたしに、リア充はとんでもないことを提案してきた。そんな、リア充さまを呼び捨てさせようとは陰キャぼっちになんて仕打ち……バス内での桃香さんといい、動悸の高速連打であたしの寿命の灯火をさっさと消そうって魂胆か。

 しかし、


「じゃあ……眞子、で……で、あの、あたしも呼び捨てに……」


 従うのです。弱気なんです!

 するとリア充改め眞子は、すごく満足そうに、


「うん! かなめ、よろしくね!」


 満面の笑みでいう。笑顔が、キラッキラ。陰キャは慣れないリア充式光明を正面から食らって、目が潰れそうです。


「えーじゃあヒナもぉ! ねえかなめ、ヒナもかなめをかなめって呼ぶから! そんでね、かなめはヒナのこと、ヒナって呼んで!」


 おもちゃみたいな高い声がさえずってくる。


「え、ひ、雛……」


 従うのです!


 いやったあ! と、バカ改め雛は両手をぱたぱたと上下に動かす。今まさに羽搏かんとするかのように。雛だけに。

 雛はひととおり羽搏き終えると、


「でね、このひとはサユミ。サユミって呼んでいーよ」


 男前(オトコマエ)を差す。


「人を指差すな」


 男前こと沙弓は雛を軽く窘めてから、


「よろしく」


 短くいって、軽く頭を下げた。表情に一見、変化はないが、切れ長の目がすこし笑った気がする。

 これまた、きゅんときた。そのしぐさと口調が男前すぎて。さっきの雛へのきゅんきゅんとは違う、いうなれば、きゅん……っ、だ。


「凛ちゃん、ご挨拶は?」


 このやりとりを見ていた眞子が、傍らの茶髪にいった。だが茶髪は顔を背けて、茂みの方を見たままだ。

 眞子は苦笑し、


「照れてるだけだから。凛、って呼んだげて」


 促した。これも、従うしか。


「り、凛……」


 と、


「黙って!」


 凛が鋭くいった。え、ダメだった?


「あ、ご、ごめんなさ」

「静かに!」


 さらに鋭く、今度は抑えた声で。

 茂みを見つめる凛の目が、吊りあがっている。


 え、なに?


 見廻すと。


 沙弓も、岩から腰を浮かせている。そして凛に目配せをした。凛が沙弓に頷く。

 雛も立ちあがり、眞子は中腰で草地に右手をついている。


 なにか、あるの?


 あたしも腰を浮かせかけた、その時。


 正面の茂みが、ガサガサと音をたてて大きく動いた。

 

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