表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PORTE→→世界の扉と心の鍵  作者: 七色夢見
2/4

2話





―――後ろ手にパタリ。と自室のドアを閉めて、机の上へとそっとギアとゲームを下ろす。

いくら説明書を読まない質だといっても、セットアップの方法は調べたのだ。


…まぁ、大した手間じゃなかったんだけど。


まず、立ったままギアを装着。電源を入れて、表示される指示に従うだけ。

ね、簡単でしょう?


以上が大手ゲームサイトに乗ってた方法。短すぎる。ざっくりし過ぎていてなんだか不安もあるけれど、まあ簡単に越したことはないよねと試してみることにした。



ええと、なんかこれどこで留めるんだ…?

半円形のバイザーのようなゴーグルの様なギアには引っ掛けるようなところが見つからなくて、

着けて立つ、なんて最初の1歩からつまづいてしまいそう。


なんて矯めつ眇めつ手の中で転がしながら、恐る恐る目に当ててみると、とてつもないフィット感にびっくりした。



鼻と頬と耳を硬い外殻にも関わらずなぜかぴったり覆う不思議素材ギアにビビりながら、これなら立ってセットアップ出来そうだと机から慎重に立ち上がり電源を入れてみると、

音もなく真っ暗な視界に広がったのはピーポ♪なんてやけに軽い起動音と、

何故か私の個人端末の壁紙だった。



「…あれ?」



新品を起動したばかりなのに意味がわからない。

ありふれた壁紙ならまだしも、

「私の今度お昼を食べに行きたいお店メモ」なんて壁紙私にしか設定できないはずだし一体どうなってというより、



「セットアップは…?」



なんて混乱の極みから漏れた言葉に反応したのか否か、耳届いたのはギアから聞こえてきた、特徴が削ぎ落とされたのが特徴のような声だった。



「オハヨウゴザイマス。シュマン正常二起動。本日ハ4月23日木曜日。コノアトノ天気ハ晴。セットアップハ無事二完了シテイマス。」



「……え?」



「メッセージガ一件届イテイマス。確認シマスカ?」

「…えっ、いや、うん。ええと見るんだけど、あーとどうやって操作するんだろうこれ」


「メッセージヲ開キマス。尚、音声入力又ハ思考入力デ操作ガ可能デス。


【よう、空。無事に起動してもらえたみたいでお兄ちゃんは嬉しいぞ。セットアップとかはこっちで済ませといたから存分にゲームを楽しんでくれ。

ゲームもインストールしてるから、送った箱は実質空箱みたいなもんだ。ま、そろそろその端末のパスワードの設定方法変えた方がいいぞ。今回変えるにしても決められないだろうからな!わはは 海


P.S. 3件目のお店。おすすめだぞ】」



目を通し終えたメッセージがふっと燃えるようなエフェクトで目の前から消えて、

【私の今度お昼を食べに行きたいお店メモ】が壁紙のホーム画面に戻ってきた。


思考入力って便利だ。燃やして捨てたい気持ちまで反映してくれるなんて素敵すぎる。



なんであの兄は私の端末のロックコードを知っているんだろうかいやその前にそのことを知っててなんて思われたんだろうか、ニヤケ面が脳裏に浮かんでああ、恥ずかしい。


【兄ちゃんの帰ってきた日付】なんて設定しなければよかった。もちろん理由はあるのだ。


超不定期に帰ってくるから丁度セキュリティ面でもうまい塩梅にパスワードが変えられてよかったのに、知られてしまっていたんじゃなんの意味もない。



とりあえずおすすめされた店にチェックを…おお、すごい。

こうしたいって具体的なイメージを持って焦点を当てると、【私の今度お昼を食べに行きたいお店メモ】壁紙にクルリと赤い丸がついた。便利だなぁ。



…と、気を取り直して、兄ちゃんがセットアップしてくれてたらしいから早速ゲームをやってみようかな。

1度ギアを外して、ダイブ中は無防備になる体をベッドに横たえる。


ギアは耳から額側にかけて覆っているからなんの苦もなく仰向けになれた。にしても軽い。謎素材すぎる。

硬さも感じない、けれどしっかりとフィットしてるのに圧迫感のない兎に角心地いい何か。ちょっと怖い。


準備が終わったので先程のように思考入力でゲームを起動しようとすると、



「【PORTE】ハフルダイブシステムヲ使用スル為、安全ノ為音声入力デナイト起動出来マセン。

起動スル場合ハ思考入力ト同時二【ポルト ダイブ・イン】ト入力シテ下サイ」



なんて聞こえてきて、あー確かになんて納得。

立ったまま起動する気もないのに起動しちゃったりしたら大変だもんね。

起動したら最後全身から一気に力が抜けて床に叩きつけられるなんて目も当てられない。



じゃあ、親切に起動の仕方も教えて貰った?し、気を取り直していってみますか。楽しみだ。

兄ちゃんの事も陸くんのこともあるけれど、それ以上に私がこのゲームをやってみたくて。


こんなにわくわくしているのが久しぶりで口角が上がって、

勝手にニヤついちゃうのが誰もいない自分の部屋だけどちょっと恥ずかしくて。

不安も楽しみもいっぱい持って、あっちの世界にいってみよう。どんなことがあるんだろう。どんな人に会えるかな。



「よし、行こうか【ポルト ダイブ・イン】」






〜完〜


……な訳では無い次からやっと進められそう!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ