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PORTE→→世界の扉と心の鍵  作者: 七色夢見
1/4

1話





「うーん…」



学校から帰ってきてみるとポストには不在届。家にほとんど居ない兄からの荷物なんて珍しくて、すぐに電話して届けてもらったけど。


想像より小さかった箱を開けてみると、中には2組のゴーグルと、何処かの景色がプリントされたケース。表面に輝く題字は【PORTE】と記されていて。


「…ねえ、陸くん」

「…何かな、姉さん」

「全世界で売り切れ続出!ってニュースで話題になってたアレがなんでここにあるのかな?」


一緒に帰ってきていた一つ下の弟と何かなにかと荷物を開けてみれば、

そこに入っていたのは、ゴーグル型のこの前発売されて売り切れたばかりのVRギアと、同じく売り切れたばかりだったはずのVRMMOのソフトだった。



「兄さんからの荷物だからね…」

「にしてもだよ。どうやって手に入れるの、こんなの」

「あ、姉さん。手紙入ってたよ」

「兄ちゃんから?中は?」

「【よっ!久しぶり!急で驚いたか?運良く手に入ったからお前らにやるよ、それ。俺のことは気にせず楽しんでくれよな。

PS.放置したり売り払うと俺が泣くから頼むな 海】…だって」

「はぁーーーー」



特になんの説明にもなってないいつも通りの兄ちゃんの言葉にがっくり。物心ついた時にはもう放蕩してた兄ちゃんから貰う物に、いやほんとびっくりするんだけど意味の無いものなんてほとんど無くて。



「兄ちゃんからだもんね…はぁ…絶対なにかあるよ」

「姉さんはこのゲームには興味ない?」

「正直、めっちゃやってみたい。でも兄ちゃんからの贈り物だよ!?なにがあるか」

「それは否定出来ないね…あぁ……」



ここでひとつ、私たちの兄の逸話を聞いてもらいたい。

まあいつも家に居ないのは分かっているけれど、何をして何処にいるかそう言うのは聞いてもはぐらかされて全くわからない。

かと思えばふらっと家に帰ってきて、数日過ごしてふらっと見送りもさせずに家を出る。

そんな兄ちゃんが偶にくれるモノや言葉は必ず何かの意味が秘められていて。


一つ、2駅先のケーキ屋までシュークリームを買いに行かされると、何も言わずに引っ越す所だった友達(家族)に会って別れの挨拶が出来た。


一つ、これをやろう、と子供向けのキャラクターがプリントされた可愛い絆創膏を貰い。怪我したクラスメイトに目立つように絆創膏を貼って雑談すれば。隣町で美味しい移動販売が来てる話を聞いて、放課後行こうと思えば珍しい兄ちゃんからのメール。直帰セヨとは何事か。泣く泣く移動販売を諦めて家に帰ってみればそこには噂の移動販売メニュー。兄ちゃんは食べたいかなと思って、となんでも見透かしたような顔で笑っていた。


一つ、雷って思ったより近くに落ちるらしいぞ、なんて言われて弟…陸くんと一緒にへーって生返事。

それが良くなかったのか帰り道では夕立に降られて、バリバリ!と目の前が真っ白になったと思えば、どうやら近くの電柱に落雷したようで。

上空で響くゴロゴロという音にどうしようもなく怖くなって陸くんと一緒に家まで逃げ帰った。

リビングのソファで寛いでた兄ちゃんは雷鳴ってるな、怖いな、ってニヤニヤしながら笑っていた。

許せん。


他にも良いこと悪いこと含めて沢山兄には驚かされて、今回のコレもきっと何か私たちに内緒で何か起こることが秘されているのだと思うと気が進まない。



「まぁ気持ちでいくら駄々こねたってやるんだけど、さ」

「何が起こるかわからないからね…」

「陸くんもやる?」

「2つ送られてきたしね。付き合うよ」

「地獄の沙汰も弟次第だね」

「幸先悪い事言わないでくれます?」



箱からギアとソフトを取り出して陸くんに半分渡して、自分のセットを手に取り自室へ。


「あれ?えっ、今から?」

「そうだよ?多分晩御飯いらないよね?」

「いやまあ始めたら多分食べないけど…展開が急すぎるよ姉さん」



戸惑った様子で手に持ってそうは言われても、こんな面白そうなもの兄ちゃん抜きにしても目の前にあったらやるしかないでしょう。


「禄にどんなゲームかも調べてないのにさ」

「陸くん。いい言葉があったよ。【説明書は】」

「……【読まないタイプ】……はぁ」




何かを悟ったような諦めたような顔で吐き出された吐息が耳に届く頃には、陸くんも既に気持ちを切り替えたようで、それぞれお互いの自室に兄ちゃんのくれたPORTEセットを持っていくのだった。





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