エリートの集う場所
4月5日木曜日、今日は私立大河原高校の入学式だ。
「行ってきます!」朝食を食べ終わると、彼、成川大地は慣れない制服を身にまとい、慣れない通学路を一目散に駆け抜けていった。
高校につくと、大地は唖然とした。彼の目の前には、まるでプロ野球チームの本拠地で使われているような、大きな大きな野球場があったからだ。最初は唖然としていた大地だが、やがて、にこりと笑うと
「さっすが、名門の練習場なだけあるぜ」とつぶやくと、一目散に校内に入っていった。
校内には、すでにクラスの書かれた紙が張り出されていた。するとその中に聞き覚えのある
名前が多数あった。
「駿河の大船に越前の山原、川崎の西口、エリートぞろいじゃねぇか!」
対戦していなくても耳に入ってくる、全国レベルの選手が数十人単位でいることに、大地も湧き上がる興奮を抑えられなかった。
「で、俺のクラスわっ、と」
けれど、もちろん野球部目当てではない生徒ももちろんいる。大河原高校の一年生は今年、216名で9クラスあるそうだ。
「えーっと俺は、1-Cか!おお、仙台の柳沼と一緒かー!あと、この菅原元春って聞いたことあるけどどこのチームだっけ」
少し考えてからやっぱりいいかと思い直し、集合場所へ向かった。
「はーーシャドーピッチングしてーー」
入学式が始まり、大地は地獄のような時間を過ごしていた。長い校長の話やPTAの人からの挨拶
来賓の紹介などがようやく終わり、そして最後に担任発表が始まった
「A組 吉川先生 B組 谷口先生 C組 奈良原先生」
「え?」
大地は言葉を失った、なぜならたった今よばれたC組の担任が、彼の入りたい野球部の顧問にして、春夏合わせて5回の優勝経験を持つ名将・奈良原雄二その人だったからだ。
これには、大地も驚いた。
「流石に、これは想定外だ。すげぇ!やべぇ!」
けれど、彼の目の前にいる人が名将だなんて想像もできなかった。
もちろん、同じクラスの野球部志望者も驚きを隠せない
熊本ボーイズからはるばる東京のこの学校に来た谷川は腰が抜けてしまっている
「C組退場するぞ」
その威厳のある声に従い、C組は教室に帰っていった
次回は
「菅原元春という男」をお送りいたします
なお更新日は不定期なのであしからず




