我が子よ、光よ
「貴方は既に無名の光であり、自由な選択が可能なのです。」
「…ええ、どうやらその様ですね。」
「直ぐに転生しても構いませんし、気が済むまで宇宙を彷徨うことも赦されています。」
―既に答えは決まっていた。
数多くの本に名前は登場すれど、その地の出身者は極少数。
いつか自らの目で、足で、その存在を確かめたかった星―
「ならば、私は彼の地への転生を望みます。」
「良いでしょう、これも貴方の決定であり運命です。早速お送り致しましょう。」
「ありがとうございます。」
「それでは、向こうの住民の方々とシナリオを摺合せてください。」
「ん?どういう事で…」
一筋の光が、男の本を指す。
「終わりの方を開いてご覧なさい。」
言われるままに本を開くと、見返しとのどとの間に一枚の紙切れと白紙が数枚ほど挟まっていた。
「この小さな紙切れは切符というものです。行き先には貴方の望む場所が書いてあります。」
「…おお。」
「そして、白紙にはシナリオを描いて提出してもらいます。他の魂たちと予定を調和しながら組み立ててくださいね。」
「という事は、今までの出来事は―」
「その通り、全てあなたが望んだことなのです。」
彼は、ようやっと二頁半の意味を理解した。
恐らくはもっと短い文章だったのだろう、という察しも付いた。
彼の魂は産まれたばかりだったのだ。
「星に生まれるとはどういう事なのか」を理解する為に、アルクトゥルスに降り立った。
そして、その時代に生きる人々の予定調和に合わせ行動していたに過ぎなかった。
――――――――――
もはや、彼の身体は形を成してはいない。
ただの小さな光として宇宙に身を委ね、新天地へと向かっていた。
道中、自らと同じような光とたくさん出会ったが、彼らも又、思い思いの星へと散って行く。
目指す星の名は、シリウスB。
シリウスAと対を成し、ネガティブを担う星―