Blind Justice
「気にしないで、また皇子のへそ曲げが始まっただけ。気が向いたら、またいつでもいらっしゃいな。」
クシミルスの優しい言葉に涙が出る思いのマーシャであった。
無人星で、マーシャは独り魔法の練習をしていた。
変身魔法は相変わらず上手く行かないが、その他のエレメントを操る能力は格段に進化していた。
今ではテレポートや治癒魔法まで使える様になった。
《…マーシャ!助けて、マーシャ!》
頭が割れそうな程の痛みが襲った。
突然の思念波に只事ではないと焦ったマーシャは、急いで思念の持ち主の元へと急いだ。
――――――――――
荒れ果てた図書館に、一羽の孔雀…否、クシミルスが倒れていた。
「どうしたのです、子ども達は!?」
「ああ…良かった…。無事です、隠し通路の先にある小部屋で大人しくしています。」
「酷い怪我じゃないか…。」
「ふふふ、貴方に心配される日が来るなんて思いもしませんでした。」
「いいから、静かに。いま治癒魔法を掛けます。それから、子ども達のところへ…」
「いえ、私の様子を見た子ども達が動揺してはいけません。何処か別のところへ連れて行ってください。」
クシミルスを背負って、極秘図書の在る隠し部屋へと急いだ。
いつもと変わらない様子の部屋を見て安心したマーシャは、クシミルスの傷を見て一つの答えに辿りつく。
「もしかして、反乱軍ですか?」
「どうしてわかったの?」
「いえ、経験則と言いますか…。」
「…そう。じゃあ、外の様子も何となく分かるわね?」
「はい、来るべき時が来てしまいましたね…。」
子ども達と彼女が安全な場所に居ると分かった今、次に優先すべきことは一つである。
「皇子とロイアロイは、どちらに?」
――――――――――
―血濡れた空、荒れ果てた街…
まさか、二度も同じ光景を見るとは思っていなかった。
振り子に導かれ、二人を見つけ出したマーシャ。
しかし―
「シア、今行く!!」
「来るな、ロイヤル!」
皇子の首をもぎ取らんと、四方八方から反乱軍が押し寄せていた。
その中心に居るのは反乱軍のリーダー…ではなく、王の姿だ。
「なんたる事だ。予想していた混乱が、まさかこんな形でやって来るとは!!」
マーシャの放った鎌鼬が周囲の敵を蹴散らす、その隙にロイヤルは皇子の護衛に向かった。
しかし、現王も鍛錬を怠ってはいない。
二人を相手に、尚も衰えない勢力。
―これでは、二人が…!!
治癒魔法を掛けようとした瞬間のことだった。
―ザクッ…
最期に見た光景は、二人が一筋の槍に貫かれている姿――――――