護るための力
大地が呻り、風はゴウゴウと渦を成し雄叫びを上げる。
その中心に向かって、声が投げかけられた。
「行くわよ、どんな手を使ってでも私の攻撃を防ぎなさい!」
辺りを燃やし尽くさんと、大きな火球が渦に吸い込まれんばかりの勢いで飛んでゆく。
火球の先から大きな光の柱が空を突き抜け、怒号を上げながら大岩がドーム状に組み立った。
「良いわね。私はこのまま押し切るから、貴方は押し切られない様に抵抗して!」
―何が戦闘は苦手だ…!
思いのほか強力な攻撃に、マーシャは苦笑いをするしかなかった。
――――――――――
時は少し遡り、中庭にて。
クシミルスが手を叩いた瞬間に現れた道具一式が、マーシャの上にドサドサと落ちる。
慌てて地面に落ちる前に全てをキャッチしたマーシャに、クシミルスが拍手を送った。
「これは一体…。」
「専門書に関しては、説明不要ですね。こちらの杖はロッドと言います、魔法を発動させる為の道具です。打撃技で相手を弱らせる事も出来ますよ。更に命令を下すと何処までも伸びます。」
「なるほど、ではこちらの短剣は?」
「これは破魔の短剣、結界を張る際に…」
結局、数々の道具を譲り受けたマーシャは、荷の重みによろけながら自室に戻るのであった。
――――――――――
轟音を立てながら左側の壁が砕けた。容赦なく炎の蓋が迫りくる。
マーシャは、とっさに周囲の壁を崩し小さな空洞を作り逃げ込んだ。
「打ち砕け、ロッド!!」
地面にロッドを突きつけ、下に身を隠すスペースを作る。
そして、あらかじめ準備をしておいた呪符を崩した壁に張りつけた。
壁となっていた大岩が組み立って、人型を成す。
「驚きました、もう兵士召喚を覚えられたのですね。…しかし、詰めが甘い。」
造作もないと言わんとばかりに、クシミルスが杖をひと薙ぎした。
瞬間、兵士は内側から爆発する。四散する残骸の影でマーシャが微笑んだ。
「…はっ!?」
大きな手がクシミルスに覆いかぶさる。
しかし、寸での所で気が付いた彼女に打ち砕かれてしまった。
その隙に放った鞭にも気付かれてしまい、結局は自身がお歳暮のハムの様に縛られてしまった。
「ありゃ、あと少しだったんですけどねぇ。はっはっはっ。」
「ええ、本当に貴方の成長速度には驚かされます。」
彼女の戦闘服が瞬時にドレスに変わる、そうすると戦闘終了の合図だ。
「いつ見ても見事な術ですね、私も早く身に着けたいものです。」
何度試しても全裸になるので、変身を禁止されているマーシャであった。
――――――――――
「今帰ったか、クシミルスにマーシャ!皇子が探しているぞ!」
威勢の良い声が、倍音でワンワンワンと反響する。
廊下に立っている者の首が一斉に、声の主へと振り返った。
「何処の山男が宮殿に迷い込んだのかと思いましたよ、ロイアロイ。」
「お母さんみたいな事を言うなよ…。」