買い物の案内さん
生きている事の方が地獄である……。そー言った奴、語った奴もいる。
「うーっ……」
「今日の夕飯、明日の朝食、お昼のお弁当、何がいーい?」
現在進行形で、日常を地獄に感じている少女がいた。嬉しそうに鼻歌交じりに、手慣れたみたいに買い物カゴを持つ女子大学生の同居人。
「たまには難しい料理に挑戦してみよーかな。ね、のんちゃん!」
「ま、まだ早いですよ!ミムラさん!」
「え?」
「思いつきで料理を作らないでください!」
阿部のん。通称、のんちゃん。訳ありで沖ミムラの家で暮らしている少女である。
お互い、特別な能力を持っているのであるが、それとはまったく無関係に、というかたまにこちらの方が最悪なんじゃないかって思えるくらい。ミムラには欠点があった。
「のんちゃんがこーして付き添いしてるの、分かりますか!?」
「……うーん。何を食べたいかを決めたい!でしょ!」
「違いますーーー!!」
彼女は、家事関係がダメであった……。
◇ ◇
この前は思い付きで、春雨ラーメンとかいうの食べさせられました。
味がしなくて、最悪でした。
『じゃあ、今からコンソメ入れて作り直すねー』
『入れてないんですかーーー!?というか、今から入れるなーーー!!』
ミムラさん。料理がとことん下手なんですけど、家事そのものがかなりダメで。掃除ものんちゃんがやってますし、なんていうか。どっちが居候でしたっけ?みたいな。
「ねーねー!のんちゃん!サンマにしよ!旬の魚だよ!」
「せめて、捌いてあるのを買ってください!なんで、鮮魚選ぶんですかー!?」
「何事も挑戦だよ!」
「何事も順序があります!!」
その場のノリで料理を決めては、のんちゃんに食べさせる困った人。一度やられたんですが、
『ラーメンを作ってみたよ!のんちゃんの世界じゃ、なかったらしいし』
『わぁ、美味しそうです!これが日本の世界の食事なんですね!』
ずるずる……
『……あの、マズイんですけど……。温い上に麺に水分というか、スープの味が残っていて』
『あちゃー、失敗かな。じゃ!このカップ麺も食べて!あたしが食べようかと……!あ、かやく入れ忘れた!具なしだよ!?』
失敗したラーメンを食わせる上に、とても便利なカップ麺でもやらかす。
ミムラさんってホントに家事ができない……。
本人に向上心があるのは良いんですけど、人の話を聞けっていうのがあります。というか、のんちゃんがなんで食事を考えなきゃいけないんですか?
「簡単な料理にしましょー!」
「電子レンジで1分シリーズとか?」
「いいですね!切った野菜とお肉に、素を振りかけて電子レンジで温める。これなら今のミムラさんでもできると思います!」
「そんなに馬鹿にしてるんだね!!」
「家事のほとんどはのんちゃんじゃないですか!」
のんちゃん(小学生)の付き添いの元、ミムラ(大学生)の買い物&料理の勉強が始まる。
「栄養バランスは、今はいいです。ミムラさんの調理レベルが上がってから考えましょう」
「そ、そんなに酷い……?」
「包丁と火、レンジを使った簡単レシピでいきます。炒めるより茹でる方が簡単ですし、パスタにも応用できます(基本ですけど)」
のんちゃんが一番に買ったのが、卵!
「こちらの世界じゃ当たり前で羨ましいです。キッチリカバーされていて……」
「卵!もしかして、」
「まずはゆで卵をしましょう。卵焼きと目玉焼きも順序良く」
「ひよこ茹でるの可哀想!」
「ひよこはいねぇーよ!!」
「ギャグにマジ切れしないでよ、のんちゃん…………」
栄養価もあるし、色んな調理が可能な卵。メインとして使うも良し、添える和えるも良し。ポピュラーな食材である。
「ご飯にお味噌汁、おかずは2,3品。デザート1食。これを基本の一食としましょう!1日最低6食は作りましょう!」
「えー、そんなにー?」
「上手くなるためにはそれぐらいでも足りないぐらいです!自分も食べてて、オカシイと思ってるんですよね!?」
「うーん、多少!さっきから酷いこと言うから」
「酷いのはミムラさんの料理ですよ!」
とにもかくにも、ここからのんちゃんが決めたミムラが作るおかず。
1つ、ゆで卵。塩味!
2つ、レンジで簡単!かぼちゃとお肉の煮物!
3つ、じゃがいもとたまねぎのお味噌汁。
「なんかバランス悪くない?」
「作れない人が言わないでください!簡単な料理だけ考えたら、バランスも悪くなりますよ!!のんちゃんはこれでも、ミムラさんが作れるのか不安なんですよ!」
さらに買ってくる物を自分で選んでくるよう指示する。
「かぼちゃって、これ一つ丸ごと?」
「カットされてるので良いですよ!」
「お味噌買えばいいんだよね?」
「だしの素も買いなさい!!味噌汁は味噌だけじゃないんですよ!!」
「ゆで卵をちょくで買ってきたよ。ゆで卵はもういいね!」
「いや、作れよ!!作るんだよーーー!!」
「デザートは何が良いの?」
「あっちのケーキコーナーの、」
「それは却下、高い。プリンで良いね」
そんなこんなで買い物から、どっと疲れるのんちゃんとミムラ。
これからはもっと大変であろう、ミムラの調理指導である。果たして彼女達は無事に一食分の料理を作れるのであろうか。
ガチャァッ
「………ミムラさん」
「な、なんですか?」
家に帰って来た時、目にしたのは……。調理意欲を失わせる光景。
「食器やフライパンを片付けてから、出掛けなさいって言いましたよねーーー!!のんちゃん、料理しかしませんよ!」
「わーーーん、忘れてた!ごめん!今するーー!」
とりあえず、今回はここまで。
ミムラがちゃんとした料理を作ることはできるのだろうか?
「それよりもミムラさんは片付けをマスターしてからの方が……」
「のんちゃんが片付けしないのはずるい!」
これは単なる思い付きだったんですが、
ホントに暇ができて、料理とかも上手くなったら、ミムラとのんちゃんを中心とした料理関係の物語を作りたいですね。
デジカメで実際に料理を撮影したり、キャラも入れたりで。(ここで投稿していいのか分からんけど)
自分もですが、ミムラの成長記録的なものがあると楽しいかな。
自炊もそれなりにするんですが、始めた当初は色々大変だなって思いました。それをミムラに演じていただけたら、良いかもなー。