怒ったんだからっ!
ナナは迫る火球を避けるが、横を通りすぎただけで肌が焼け焦げそうだ
「熱いってば!これって人に向けて打っちゃいけないタイプのやつだよっ!?」
『フレイム』
「またっ!?あの紅い髪の人、すごい美人だったのに中身は悪魔だよ!紅い悪魔だよ!」
必死に相手をなじるが無慈悲に危機は迫る
「ちょっとくーちゃん!意地悪してないで早く出てっ!!助けてってば!」
「・・・・・・」
「あーもー、壊れてるのっ!?ひぃっ!!」
目の前に火球が落ちた。
「あ、あぶ...熱いっ!」
気がつくとスカートの裾に火がついていた。
必死に裾を叩いて消火に努める。
「こっちで唯一の私の服がっ!?」
何とか身体に燃え移る前に消火に成功したが
「服、焦げちゃったよ...あぁ!もう、怒った!!」彼女の心中は穏やかではない。
『フレイム』
「何度も何度もしつこいんだよっ!!」
ナナの目付きが変わる。
構えを取り、右手に思いっきり力を込める。
『パリッ』
という音がした。
骸骨兵と戦った時には必死で気づかなかったが、右腕に電流が走るのを感じる。
「すう~っ!はっ!」ナナは思いっきり息を吸い込むと、目の前の地面を思いっきり殴り付けた。
「ずがあぁぁあん!!!」
拳は地面をえぐり、砂と石を撒き散らす。
火球は掻き消え、砂埃が辺りには立ち込める。
殴った腕が痛むのを無視して、ナナは砂ぼこりに突っ込んだ。
...人影が見える。
「いた!!」
人影の横に位置取ると、もう一度、拳に力を込める。
「仕返しだよ!えいっ!!...あっ!ダメっ!」
放った拳は紅い悪魔の横っ腹に命中した...が、その瞬間にナナは頭にのぼった血が引いた気がした。地面を抉るほどの力で殴り付けたらどうなるか分かったからだ、殺してしまう、と気づいたからだ。
「がはっ」
紅い悪魔の唸る声がナナの耳を突いた。
ナナは恐ろしくなりとっさに目をつむる。
命中した拳は地面なんかよりも軟らかい紅い悪魔を容易く抉ったことだろう。...見たくなかった。
「ほう、戦いの最中に目を背けるとはいい度胸だな。」
背後から女性の声を聞いた次の瞬間、ナナは後頭部に衝撃を受けた。
「きゃっ!?」
ナナは突然の衝撃に頭がくらむ
「...良かった、生き..て...た」
霞む目で真紅の髪を見たナナは安心する。
ドサッ
ナナはその場に倒れ込んだ。
「...ん、どうした?ずいぶん、騒がしいな。おーい、ナナー、どうしたー」
イヤホンからクロウの声がした
「おっそいよ...」
ツッコミもそこそこにナナの意識は途切れた。