説明会②
「帰れないのっ!?」
クロウの研究室にナナの声が響く
「すまんな、原理的には帰れるのだがエネルギーとなる魔素が全っ然足らん。父上の頃からコツコツ貯めてようやく、お前1人召喚できたのだ。」
「そんなぁ~・・・」
転移装置を使って元の世界に帰れないの?という疑問から上の会話となったわけだが、分かったことはすぐには帰れないことと、転移装置含め研究室内の機械のほとんどが彼女の父親の遺物ということだけだった。
「実は父上も召喚者でな。元の世界に帰れないかと研究していたのだが、そもそも科学の概念が乏しいこの世界では材料を手に入れることもままならんくてな。」
「そうなんだ...帰れないまま死んじゃったんだ、残念だったね」
ナナは柄にもなく、志し半ばで亡くなったクロウの父親を不憫に思う。
「いや、何やかんやで『新しい素材だー』とか『簡単な発明でも珍しいからバカ売れだぜ!』、『元の世界より美人が多い!!』とか言って毎日、自由気ままに楽しそうだった。死んだ理由も不健康な生活を続けたせいだったしの。」
「せっかく同情したのにがっかりだよ!」
「まぁ、そんな環境だったからの。自然と機械に触れることも多くてスキル『機工技術』を身に付けたわけだな。」
ナナは手につけたグローブを見ながら
「この『剛腕くん』もお父さんが作ったの?」
「変な名前を付けおって。いや、そのグローブは私の作品だ。入学してから色々作る予定だったのだが思いの他『転移装置』の調整と馬鹿が釣れるのに時間がかかってしまってな...材料もそんなに残っていなかったし、そのグローブしか作ることが出来なかったが」
「ふ~ん...また馬鹿って言った!」
「さて、長話になってしまったの。他に質問は?」
「ん~、今のところは大丈夫かな。あっ!質問じゃないけどこの学校の案内してよ!」
「そうだの、案内...いや、私は今から大至急で作らなければいけない発明があって手が離せない!(作りたい発明があるのは嘘ではないが、正直、馬鹿の相手で疲れたしの、歩くのも面倒だし)」
「そっか、残念。じゃあ1人で行ってくる!やることないし!」
そういって立ち上がるナナ
「お?1人で大丈夫か?...まぁ、今は講義時間だし人も少ないだろうから問題ないか、これを持っていけ」と、マイク付きのイヤホンと学園案内図を渡す。
「じゃあ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい。何かあれば連絡しろ」
そういってナナを見送る。
「さて、と。少し休憩したらあれの続きをやるかの」