説明会①
試験会場の片付けを済ませ2人は元の部屋に戻っていた。
「説明っ!!」
「分かった、分かった。とりあえずお茶を淹れるから待っておれ」
そういうと、クロウは傍にあった機械に触れる。クロウが機械にカップを置くと、紅茶が注がれ、いい匂いが部屋に漂う。
「ほれ」
「ありがと、紅茶サーバー?」
「ただの湯沸し器じゃよ、熱いぞ?気をつけろ」
「はーい」
冷ましつつ、紅茶をすする。
先程の非現実への驚きから喉も乾いていたのだろう、一気に飲み干す。
「ぷはっ、美味しっ!もう一杯!」
「はいはい」
2杯目を受け取り、今度はゆっくり飲む
「んじゃ、説明!」
「本当に忙しないのぉ」
といいつつクロウは紅茶を一口飲んだ
「ここはどこなの?」
「ここは、国立学園マゼリア内の私の研究室だ。ナナは私の手によってここに召喚されたのだよ。この世界はナナが暮らす世界とは異なる、いわゆる異世界というやつだ」
「異世界...召喚?なんで私、召喚されたの?」
「この世界には先程の骸骨兵のような魔物、または妖精や精霊、獣人などが暮らしておる。更に便利なスキルや魔法が日常的に使われておる。」
「ふむふむ、お茶菓子ある?」
「...ほれ、これを食べろ...続けるぞ?」
「まだ、ギリギリ理解してる、大丈夫」
「ここ、学園マゼリアでは国家のためにスキルや魔法を扱える者を教育、輩出しておる。私もその1人じゃ。だが、私は魔法を使えず、スキルも実戦向きとは言えない。」
「ふ~ん」
「だが、この学園では先程の骸骨兵との戦闘のような実戦試験が定期的に行われる。その試験を突破できなければ進級も難しい。そこで私は『召喚者』を使うことを思いついた。私のスキル『機工技術』を駆使して作製した機工魔装を『召喚者』に装備させる。召喚者や召喚獣は術者の持ち物、道具のような扱いだから試験で使用するのも問題はない。」
「ふ~ん」
「...召喚術、特に人間の召喚は、巨大な魔力を持つ一部の才ある者にしか発動できない大魔法じゃ。それを、私はこの『転移装置』で可能にしたのじゃ」
「ふ~ん、凄いじゃん」
「ふふん、そうじゃろ?(お、一応、伝わってるようだな)」
「えと~、なんで装備を付けるのは私がいいの?くーちゃんが自分で使えばいいじゃん?」
「くーちゃん...と、とりあえずいい質問じゃ!先程のグローブの威力を体感したじゃろ?あんなものこの世界の住人が使ったら腕が消えてなくなる。召喚者はいずれも身体が丈夫なようなのだ。なぜかは分からぬがな。だから、私の機工魔装の威力を存分に発揮するには召喚者が最適だというわけだな!」
「そりゃあ、あんだけ小さな穴を無理やり通ったら身体も丈夫にもなるよ...」
「ともあれ、これがナナをここに召喚した理由だの。まぁ、少し残念なこともあったが」
「残念?」
「うむ、召喚者は世界を移る際、身体の分解&再構築が行われる。その際に術者によって多大な魔力が練り込まれる。だが、私は召喚するのに手一杯でそんな余裕も魔力もなかった」
「つまり?」
「ナナは身体が丈夫なだけのただの娘ってわけ」
「...生きていける?」
「無理だろうな」
「どうすんのさっ!」
「だから、私の機工魔装のテスターとなれと言ってるではないかっ!」
「嫌だよ!また化け物と戦わせる気だ!」
「そうなるな。」
「嫌~~~」
「だがもうナナは断れないぞ?ほれっ」
とクロウは契約書を取り出す。
「この契約書は私の発明の1つ、『絶対契約書』じゃ。もしこの契約書に背くことがあれば身体中の穴という穴から液体が溢れて止まらなくなる!(嘘じゃが)」
「ひいっ、やりますやります」
「(案の定騙されたの。私は魔法が使えんから、呪いの類いも使えんのだが) それに、チラシの通りご飯に加えて、働き次第で報酬も出す。」
「やります!やらせてください!」
「よし、よく言った!これからよろしく頼むぞ!」
「はい!!」
「...やはり馬鹿すぎるか?これは本気で賢くなる装置も検討だの...まぁ、でも素直でよろしい」
「何かいった?くーちゃん?」
「何も...くーちゃんは止めないか?」
「可愛いよ?」
「...好きに呼べ(何を言っても無駄な気がする)」
「はーい」
喋り続わるとクロウは冷めた紅茶を飲み干した。
「もう一杯飲むか?」
「うん」
そう言うとクロウは立ち上がり、紅茶サーバーに向かう。