大きな穴がいいってわけでもない
「ムリムリムリムリ!」
突然、切りかかってきた骸骨から逃げ回りながらナナは叫ぶ
「ナナ!時間がない、早く蹴散らせ!」
「無理だってば!相手、骸骨!剣!意味わかんない!」
叫ぶナナの後ろで骸骨が剣を振るう。
危ない、今のは絶対にかすった、とナナは焦る。
「殴ればいい!!そのためのグローブだ!骸骨兵はそんなに動きも早くない!」
と言われ、部屋に入る前に装着していたグローブの存在を思い出す。
「これ?」
少しゴツいが見た目には普通のグローブだ
「こんなので倒せるの!?どう考えても無理でしょ、剣を持った骸骨の化け物だよ!」
「大丈夫だ!拳を強めに握ってから殴るだけでいい!本当に時間がない、早く!」
「もうっ!!分かったよ!」
ナナは腹をくくる。
骸骨兵は剣を上段に構え...降り下ろす
剣が動くと同時にナナは横に跳んだ。
剣は地面に当り、ガキンッっと音を立てる。
「えいっ!」
拳を握り、骸骨の脇腹めがけて腕を伸ばす。
『パリッ』
グローブから小さな音が聞こえた気がするが、もう拳は止まらない
...どぉぉぉぉおんん!!!
凄まじい音が部屋に響き、土埃が舞った。
「痛ったーい!!」
ナナが叫ぶ
拳の痛みに涙ぐみながら、どうなったのか訳も分からず、目を開く。
すると目の前の壁に大きな穴が空いている。
「これ...私が?」
さらに壁の手前にはさっきまで骸骨兵が持っていた剣が落ちている。その周りには白い物体が粉々に散らばっていた。恐らく骸骨兵だったものだろう。
「ナナ!よくやった、偉いぞ!」
「ちょっと、どういうこと!?本当にもう何が起こったの!」
「いやいや、グローブの出力が最大になっていたようだな。だが、さすが召喚者!普通なら反動で腕が消し飛ぶところだが、まさか無事とは!」
「腕が消し飛ぶ!?何て物を着けさせたの!!」
ナナはまた叫ぶ
「すまんすまん。ともあれ、これで試験は合格♪良かった良かった♪」
クロウは満足そうに微笑む
「ちっとも良くないよっ!」
「その通り」
空いた穴の向こうから男性の声が聞こえてきた。先程の男性がいた、埃まみれで。
「クロウ、やりすぎだ」
「...すいません」
「説明はここを片付けてからだな...」
「...うん、そうだね」