小さな穴には入れない
素人ですが好きな要素を詰め込んで楽しく書きたいと思います!
気に入って読んで頂けると幸いです。
よろしくお願いします!
「~♪」
カチャ、カチャ...ガチッ、ガチャン
「~♪最後に、このボルトを...んっ!よし、できたっ♪」
満足そうに少女は言った。
「ではでは、早速、起動~」
ブンッ、ウィイイイン
「キタキタ♪えと、繋ぐ座標は適当にこの辺でいいかの、ポチッと」
「....アクセス...対象ヘノ接続ニ成功シマシタ ゲート作成シマス ...ゲート作成成功シマシタ ゲートヲ開キマスカ?」
「もっちろん、Yes!さてさて、どんなのが釣れるかね
」
※ ※ ※ ※ ※
「まずい、本格的にまずい」
奈々菜は呟いた。
学校の帰り道なのだろう、髪を後ろに束ねた制服姿の少女はその可愛らしい顔の眉間にシワを寄せていた。
「確かに勉強はしなかったけど、まさかここまで成績が悪いとは我ながら驚いた!このままじゃ仕送りも止められて、気ままな独り暮らしが成り立たないじゃないか!ただでさえ、絶賛減額中なのに...どうせ、勉強もしないしバイトでも始めようかなぁ...ん?」
そんなことを考えながら歩いていると、ふいに壁に張られたチラシに目が留まる。
『試験体募集!最新の発明の試運転にご協力ください!』
『募集条件 若い健康な身体
勤務時間 要相談
報酬 要相談』
「...怪しいチラシ、誰がこんなのに応募するの?」
と言いつつ読み進めると
『備考:ご食付き
頭がよくなる発明もあります』
「ご飯付き!しかも頭まで良くなるの!?」
『興味がある方はこのチラシを壁から剥がしてください!』
「剥がすの?」
チラシを確認するが、確かに連絡先などは書いていない。
「ふ~ん、まっ、ちょっと怪しいけど時間やバイト代は要相談...ようは好きな時に好きなだけ働けるってことだよね。何より!ご飯付きで食費が浮くのは嬉しいし、頭までよくなるっていうし、話だけ聞いてみても損はないでしょ!」
そう結論付けた奈々菜は迷いなく、チラシに手をかけ、壁から剥がす。
「...剥がしたけど、で?どうするの?」
首をかしげた奈々菜はチラシがあった壁を見る。
穴が空いていた。直径15㎝くらいの穴だ。
「穴?もしかして...イタズラ?えー、がっかりだよ!!...え?ちょっ!ちょちょちょ、待って待って!?」
突然、その穴がすごい勢いで空気を吸い始めた。奈々菜の身体は穴に吸い寄せられる。
「うっそ、吸い込まれる!?無理無理入らないってば!」
そういってとっさに穴に手を伸ばすと、触れるか否かというところで手が小さく粒子に変わって穴に吸い込まれる。
「!?にぎゃー、手、なくなった!?」
そして手首、肘、肩と順番に粒子となり吸い込まれる。
「うそでしょ!?やーめーてぇえぇ!...んっ!」
と悲痛な叫びを最後に首から上も吸い込まれた。
※ ※ ※ ※ ※
気がつくと奈々菜は地面に転がっていた。
「ここは...」
まだ頭がはっきりとしていないが、とりあえず状況確認をしようと辺りを見回す。
地面はフローリング様で、周りには天井まで届きそうな大きな機械がいくつか並んでいる。その間を埋めるように中くらい、はたまた小さな機械が置いてある。後ろを見ると丁度、人間一人が通れそうなゲート状の装置があった。
加えて機械の可動音が微かにしている。
「ここは...工場?穴に吸い込まれて、腕とかなくなって...あっ!?」
奈々菜は慌てて腕を確認した。
無事だ。何事もなく腕は彼女の肩から伸びていた。
ぐーぱーぐーぱーと手を閉じたり開いたり。動きも問題ない。
「ほっ、良かった。」
ひと安心していると
「お目覚めかな?すぐに目を覚まさないから失敗したかと焦ったけど...良かった良かった♪」
奈々菜は突然の声に驚き、恐る恐る声がする方を見た。
「...小学生?」
「誰が小学生かっ!」
その自称非小学生は叫んだ。しかし、12歳程度の背丈、目は大きくつり目がちで大人びていたが、顔に幼さは健在でぱっと見は小学生にしか見えない。
強いて言えば、オイルに汚れて黒ずんだつなぎと帽子が小学生らしさを否定する要素ではあるものの...やはり幼い見た目は隠しきれていなかった。
「お嬢ちゃんもここに迷いこんだの?工場は危ない機械も多いと思うからあんまりはしゃいじゃダメだよ?お家どこかな?」
「幼児扱いはやめんか!私は18歳だ!まったく、ようやく釣れたテスターがこんな失礼なやつとは...」
「18!?歳上!?...いくらなんでもその嘘は通じないよ。ん?テスター??テスターってあの怪しいチラシにあった...」
「ふむ、失礼な発言はさておき、ちょっとは話ができそうだの。そう、そのいかにも怪しいチラシを貼っておいたのが私、稀代の発明家!クロウ=インヴェントである!」
「ご丁寧にどうも。クロう~・・・えと、くーちゃん。私は奈々菜、七瀬奈々菜、よろしくね」
「早くも私の名前を覚えられないとは・・・ある程度の馬鹿を釣るためにあんな怪しいチラシを使ったとはいえ、実際、会うと痛々しいものだな」
「馬鹿?!馬鹿って言った!馬鹿っていう方が馬鹿なんだよ!バーカバーカ」
「...チェンジ」
「何?英語??よくわからないけどまた馬鹿にされてる?」
「...まぁ、健康な身体という条件は満たしているし、ある程度馬鹿な方が言うこと聞くだろうという目的もこれほど頭空っぽなら問題ないだろう。何より時間もない。」
「また馬鹿って言った...」
「さて、奈々菜...いや、ナナ、話が脱線してしまったが本題だ。お前は私の発明品の試験体として私がここに召喚した。協力してくれるな?」
「召喚?え、なんかよくわかんないけどお断りします。理由は状況がよく分からないから」
「さすがに馬鹿でもこんな状況で承諾しないか...承諾すれば報酬は弾むし、ご飯付きだぞ?」
「本当!?...いや、でも怪しすぎる」
「頭も良くなる」
「やるっ!」
「お、おぅ(本当にこの馬鹿で大丈夫だろうか)」
と、不安に思いつつもクロウは一枚の紙を取り出す。
「では、この契約書にサインを」
「はーい」
といい、奈々菜改めナナは名前を書く
「よし、書いたな!では行くぞ、時間がない」
「どこへ?」
「初仕事じゃ、このグローブを着けろ」
と、手渡されたグローブを手にはめつつナナはクロウの後を付いて部屋を出る。
部屋を出て廊下を少し歩くと扉の前で男性が立っている。
「クロウ、遅いぞ...ん?その少女は?」
「遅くなりすいません、先生、彼女は私の『召喚者』です。それより先生、試験時間はあと何分ですか?」
「『召喚者』...そういうことなら、よし。では、入れ、あと5分だ!」
「はい」
そういってクロウはナナの手を引き、扉を開ける。
ナナは訳が分からない。
これは決して私の頭悪い訳じゃないと思う、本当に
「じゃあ行くぞ、ナナ」
「ちょ、ちょっと待ってよ!どういう状況!?」
「説明してやりたいのは山々だが、いかんせん、試験時間もギリギリだ...そうだな、蹴散らせ!」
「はい?」
と声をあげるのと後ろで扉が閉まるのが同時だった。
ナナは訳もわからず前を見る。
目の前には剣を構えた骸骨が立っていた。
「いや、本当に説明をしてよっ!」
骸骨がナナに向かって切りかかってきた。