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悪役令嬢?

ごく自然に悪役令嬢な振る舞いができるベルヴィア。

ベルヴィアは、ぞろぞろと美少年三人を引き連れて、王太子とその乳兄弟の元へと向かった。


その様子は、紫色の髪をした美少女が早速美しい少年たちにモテモテで、まるで逆ハーレムを従えているかのようだった。

ある意味そう間違ってもいないのだが、傍から見た図と彼らの心境は大きく違っている。



エミリオは王太子に近づけるチャンスだと喜び、口の端がニヤリと持ち上がっている。


彼は、波打つ金髪に真っ青な瞳をした愛想のいい美少年なのだが、かなり計算高い野心家で、見た目の可愛さに油断すると泣かされる事になる。



ジークはケンカとかヤバくないか? と思いつつも、ジェフリーにギャフンと言わせやれるチャンスは逃したくないと、拳を握ったり開いたりしている。


蜂蜜色の金髪に青い瞳と整った顔。整髪料で固めたツンツン頭が微妙に邪魔をしているが、ジークも兄と同じく美少年と言える。

だがこちらは脳内が筋肉に汚染されているため、何でも物事を剣と拳で解決しようという傾向があり、色々と残念な事になっていた。



ケビンは恋敵がこんなに増えた上に、ベルヴィアが王太子たちと友達グループを作ってしまったら、自分はそれについていけるのだろうかと段々不安になっている。


ケビンは普段は明るく元気な少年だが、ゲームでは暗黒魔道士になってしまうぐらいなので、ネガティブな部分も潜在的に持ち合わせていた。



「レイノルド様!! わたしのお友達を連れてきました!!」


ベルヴィアは、誕生会に招待されていた女の子たちの群れを掻き分け、堂々と王太子の前に現れて見せた。


「ベルヴィア嬢のお友達か。エミリオにジークに、君はケビンだよね?」


驚いた顔を見せたあと、レイノルドはおっとりと微笑んで見せた。


それを見た、王太子を囲んでいた七人の少女たちは、うっとりとしたため息をつく。


レイノルド様、素敵、と。


三人はそれぞれ王太子に挨拶を始めたが、ジェフリーはそれを見ながらまた目を吊り上げた。


「おまえ、やっぱり王太子狙いなのかよ」


他の七人の少女たちも、嫌そうにベルヴィアを見る。


ベルヴィアが引き連れてきた少年たちは、この誕生会に来た少女たちにとって、重要人物ばかりだった。

何しろ全員、親の爵位を継ぐ事が約束されている婚活における優良物件な上に、甲乙つけがたい程の美少年ばかりなのだから。


それを独り占めした挙句、王太子にまでちょっかいをかけようというのか。

少女たちは殺気立つ。


招待客として呼ばれた年の近い少女たちには、この誕生会に来た少年たちに自分をアピールする権利がある。

だがどこの家のお披露目会でも、主役である子供の邪魔をする事は許されない。

重大なマナー違反となってしまうからだ。


「ジェフリーってホント感じ悪いよね? あなたがそんなんだと、レイノルド様が他に友達作れなくなるって思わないわけ?」


ベルヴィアは腰に手を当てて、見下すような眼差しをジェフリーに向けた。

まさしく悪役令嬢といったスタイルで、非常に相手をイラッとさせる。

しかし本人にはそんなつもりはないので、そう指摘されたら多分わめき散らすだろう。


「なんだと!」


ジェフリーは既に大人たちから注意されていた事もあり、図星を指されてかっとする。


「だからね、わたしレイノルド様にピッタリな友達を連れてきたの!!」


ベルヴィアはぐいっと、エミリオの腕を引っ張った。


「ディサート侯爵家の双子か。そいつ、腹黒そうだよな」


いくら王太子の親友とはいえ、身分的には男爵家の子息であるジェフリーよりも、エミリオの方が上となる。


「ジェフリー、失礼な事を言っては駄目だ」


率直に感想を言ったジェフリーを王太子は慌てて咎めた。


「悪い、レイ。けど俺はおまえが心配なんだ!」

「僕だっておまえが心配なんだよ。わかって、ジェフリー」

「けど、あんな性格の悪そうな女が連れて来たんだぞ? 心配にもなるだろ!」


二人でゴソゴソ話を始める二人に、ベルヴィアは文句を言う。


「何かホントにジェフリーって、ダメダメだよね。すごく威張ってるけど、わたしのお友達の方が絶対王太子様にはピッタリ!」


ベルヴィアはふふんと笑う。

ますます悪役令嬢っぽく見えた。


「何やってるんだ、ベル」


「お兄様!!」


アレックスは婚約者候補のキャロルと踊りつつも、ベルヴィアの様子は常に目に入るようにしていた。

その為、逆ハーもどきを引き連れて王太子の方に向かったのを見つけ、慌てて追いかけてきたのだ。


子供同士の争いに大人が参加する事はみっともない事だ。

その為大人たちは遠巻きにこの様子を見ていたのだが、アレックスの登場にランバート公爵を始め、関係者一同の親たちはほっとする。

アレックスが普通の子供ではない事は、すでにかなり有名だった。


精神年齢はおそらくすでに十歳以上は離れていると思われるが、一応アレックスはまだ八歳だ。

子供のケンカを仲裁してもおかしくはないはずだ。……見た目的には。


「なんでお前はこう問題ばかり……はぁ」


きょとんとしているベルヴィアを見て、アレックスはため息を付いた。

これは、これから自分が叱られると思っている顔ではないと。


「あのねお兄様、レイノルド様とジェフリーはお兄様と仲良しのお友達になりたいんですって!」


ベルヴィアは兄の様子など無視して、自分の話したい事を笑顔で言い始めた。


「なるほど」


アレックスは、素早く態度を切り替える。


「殿下、この度は妹がご迷惑をお掛け致しまして申し訳ありません」

「いや、僕がべルヴィア嬢に君と仲良くなりたいと頼んだんだ」

「そうでしたか。これは光栄です殿下。本日はお時間がありましたら是非この会が終わった後、この屋敷の中を案内させて頂けたらと思うのですが、いかがでしょうか?」

「いいのか? それではぜひ喜んで…」


アレックスと王太子のやり取りを見ていたベルヴィアは、疑問に思ってジェフリーの方を見る。


「なんで、お兄様が殿下に近づくのは邪魔しない訳?」


「アレックスは特別だろ。剣も魔法も勉強も何でも完璧なんだぞ! 性格だって悪くないし、アレックスはレイノルド様の側にいるのに相応しい」


真面目な声でジェフリーは返した。

アレックスは、年下であるジェフリーと王太子にとっては憧れの少年だった。

所謂、自分も将来ああなりたい、目標にしたい先輩、というやつだ。


「えええ!? お兄様は天才だけど、性格悪いから!!」


ベルヴィアは大声で訂正する。


「な! おまえ、自分の兄だろ!!」


ジェフリーは尊敬するアレックスを悪く言われてカッとする。


「いい所はいい、悪い所は悪い、それはハッキリしておかないとね。お兄様は…」


ベルヴィアが更に言葉を続けようとすると、アレックスが素早く間に割って入った。


「ベル、僕の悪口はそれまでだよ? ジェフリー、君にも迷惑を掛けたようだね。済まない」


ジェフリーは慌てて首を振る。


「わ、悪いのはアレックスじゃないから! こいつだから!」


「な、悪いのはジェフリーでしょ! わたしやわたしのお友達の事悪く言って!!」


「なんで、二人はケンカしている訳?」


アレックスが問うと、ジェフリーは気まずくて口を閉ざしてしまう。

大きな騒ぎを起こしたきっかけははベルヴィアだが、言い合いの根本にあるのが自分の心の狭さだと、ジェフリーは自覚していた。


「えっと、わたしはレイノルド様にはジェフリーやお兄様だけじゃなくて、もっと沢山お友達が必要なんじゃないかって思って、ケビンと新しく出来たお友達を紹介しようと思ったの!!」


ベルヴィアは、それまでじっと様子を伺っていた、ケビンとエミリオとジークの方を見た。


「ああ成程。それで、ジェフリーがまた追い払おうとして、ケンカになった訳だ」


ジェフリーは、アレックスの言葉にショックを受けた顔をする。


「お前たちは、どっちも悪い。けど、僕はそういうのは嫌いじゃないな」


アレックスは、何故か微笑んだ。


「殿下、それからベルヴィアたちも、これから中庭に行きませんか?」


そして、騒ぎを起こした本人たちと、それに巻き込まれた子供たちは全員会場から屋敷の外へと連れ出されたのだった。





ベルヴィアたちは中庭の中央に集められた。

中庭の中央は広く場所が取られており、ちょっとした剣術の稽古や試合が出来る広さがある。


王太子の護衛の騎士たちは何時でも駆けつけられるような距離に控えていたが、基本大人たちは会場の中から何をやるんだろうね、と窓の外を気にしているぐらいだった。


他の子供たちもベルヴィアや王太子たちの事が気になっていたが、大人たちにたしなめられ、付いていく事はなかった。

……ただ一人を除いて。


「アレックス! 何やるの? わたしも混ぜてちょうだい!! いいでしょ、ダンスを途中で放り出されて、ショックなんだから!!」


この騒ぎのせいでダンスを中断されてしまった、アレックスの婚約者候補のキャロルだった。

赤い巻き毛をポニーテールにし、何をする気なのだろうと緑の瞳を輝かせている。


今日は天才少年で剣術の腕も確かなアレックスを紹介して貰えると聞いて、キャロルは必死になって慣れないドレスを着込んでパーティに挑んでいた。

オレンジ色のドレスは彼女にとても似合っていて、アレックスも「お綺麗ですね」と言ってダンスを申し込んでくれた。


これで仲良くなれたら、天才少年が自分と剣の対戦をしてくれるようになるかもしれない!


ちょっと間違った方向ではあったが、キャロルはアレックスにときめいていた。

しかしベルヴィアが騒ぎを起こしたせいで、台無しにされてしまったのだ。


「キャロル嬢申し訳ありませんでした。ですが、ここから先は見るだけにして下さいね。せっかくのドレスが台無しになるような真似は絶対にしてはいけませんよ?」


アレックスは、ベルヴィアから聞いた『ハルソラ』情報で、キャロルの性格をすでに大体把握していたので、先に釘を刺しておく事にした。


「え、ええ!」


キャロルは自分の考えを読まれてしまい、頬を赤らめた。





そんな二人のやりとりを、ベルヴィアはじっと見ていた。


これがキャロル…お兄様の未来の最愛の人……。

運命の恋人同士の邪魔をしちゃ悪いわよね?


でも、物凄く気になるし、やはりなんだか面白くない。


キャロルはアレックスより二つ年上の十歳だ。

アレックスは年齢よりも背が高く、キャロルは若干低いので、二人の身長はキャロルが少し高いかなというくらいで、それなりに釣り合っていた。


「ベル、あの二人婚約すんの?」


ケビンは素直にベルヴィアに聞いた。


「……多分」


ベルヴィアがそういうと、それにエミリオが反応する。


「あれはモアトン伯爵家のキャロル嬢ですね。僕より三つ年上ですが、家柄もなかなか良くて婚約者がまだいない。僕もべルヴィア嬢が駄目なら彼女をと考えていたのですが、キャロル嬢はアレックスさん狙いでしたか」


エミリオは七歳の割には情報通だった。


「けれど僕にはこんなにも可愛らしいベルヴィア嬢がいますからね。ベルヴィア嬢どうか悲しまないで下さい。お兄様の代わりに、この僕があなたを支えてみせますから」


ちゃっかりとエミリオはベルヴィアの手を取り、口説いてきた。


「おおお!! エミリオ、スゴイ!! 乙女ゲームの攻略対象っぽい!!」


ベルヴィアはついはしゃいでしまったのだが、それにケビンが大慌てする。


「な!! 手、離せよ!! ベル、コイツ危険!! 近づいちゃダメだ!!」


「ベルヴィア嬢は君の物ではありませんから。口出しは止めて下さい」


「ベルは俺の幼馴染なんだから!! 俺が守ってやるの!!」


顔を真っ赤にして叫ぶケビンの手をベルヴィアは掴む。


「ありがとうケビン!! 嬉しい!! わたしも絶対にケビンの事守ってみせるんだから!! 暗黒魔道士になんて、絶対にさせないんだから!!」


「あ、暗黒魔道士?? 何それ?」


会話がカオスな方向へ進みそうになった時、アレックスが号令をかけた。


中途半端な所でつづきになってしまいまいた。


次回はパンツです。

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