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葬り去りたい黒歴史たち

黒歴史……誰にでもありますよね?

前世のベルヴィアは、正直かなり痛い性格をしていた。


学校ではギリギリ人並の成績を取れていたが、それ以前の問題で、人間としては色々とダメな部類に入れられてしまう、超が付く濃厚なオタク女子だった。


大学卒業後もずっと『ハルソラ』に夢中になっていた彼女は、二十五歳の時に駅の階段から転落し、その人生を終えた。


都心の会社に勤めていた彼女は、仕事帰りに駅で歩きスマホをしながら『ハルソラ』の公式サイトで映画化の情報を見つけてニヤニヤしていたのだが、そこで足を滑らせ運悪く階段の上段から一番下まで転げ落ちてしまったのだ。

階段から落ちて頭を強くぶつけた…そこで記憶が途絶えているので、そのまま打ちどこが悪くて死んでしまったのだろうとベルヴィアは思っている。

落ちる時、他の人を巻き沿いにしなかった事だけが救いだろうか。


社会人になり、毎日乙女ゲームの事だけで頭が一杯だった自分は、もしかしたらかなり痛い人間なんじゃないのかと、少しばかり気にし始めた、その矢先の転落死だった。



一つの事にのめり込んでしまうと、ついその事に夢中になってしまい、気が付くと周りが見えなくなってしまって暴走してしまう癖が彼女にはあった。

それで何人の友人を失くしてしまった事か…。

特に大学時代は若さゆえの怖いもの知らずという事もあり、『ハルソラ』関係ではトラブルばかり起こしていた。

ベルヴィアは過去の黒歴史の一部を思い出してみた。





実は面白ければ腐もOKな雑食腐女子のくせして、『ハルソラ』でBL二次創作を書いてた作者に怒りのメール爆撃をしたこと18回。


『乙女ゲームにホモ妄想持ち込むんじゃねーよ!

 フィーナ以外をあいつらが好きになるとか、マジありえないし!

 更にホモとかマジキモイ、死ね!!

 ホモ好きならBLゲーでやってろよ!こっち来んじゃねーーーーーー!!』


……ちなみに、前世ではBLゲーにもそれなりに手を出しており、『トキメキ王道学園☆』は名作だと思っていた。





攻略対象×ベルヴィアのイラストを描いた絵師さんに、今すぐ消せと脅迫メールを送って、危うく犯人だと特定されそうになって冷や汗をかいた事もあった。


『はぁ? 王太子はフィーナのものですから!!

 王太子×悪役令嬢とかキモイ絵見せられて、マジ吐きそうなんですけど!

 どう責任とってくれるんですか!?

 その捏造イラストすぐに削除しないと、本気で怒りますよ!

 消さないなら、覚悟してくださいね?どうなっても知りませんよ?』


そんなに嫌ならネットなど見なければいい話なのだが、その絵師さんはジャンル内で一番絵が上手く、本当は王太子×フィーナの絵を描いて欲しかったので、余計に腹を立ててしまったのだ。





友人と舞台を見に行った時は、フィーナ役の女の子が気に入らなくて、

『あんなブスがフィーナとかありえない! あたしのコスの方がまだ可愛いし!』

と劇場で大声で言ってしまい、友人にドン引きされた。


そして更に続けて、

『何か演技とかも超ヘタだったし、あんただって、もし次に一押しのアレックス編が舞台化したら、絶対あの大根ブスにフィーナとかやって欲しくないでしょー?』

とも言った。


……もちろんその友人は、その後アレックス編が舞台化した時は、どんなにしつこく誘っても自分と一緒に見に行ってはくれなかった。

結局、アレックス編ではフィーナ役はもっといい女優さんに変更になったので、あの場の空気を読めなかった事は悪かったかもしれないが、自分は何も間違った事は言っていないと今でも思っている。





舞台化事件での発言で、本当に自分の方がフィーナに相応しいと思い込み、二次創作関連のイベントでフィーナのコスプレをして参加した事もあった。

手作り衣装に厚化粧。

今考えると微妙な出来栄えのコスプレだったが、その時はまるで本当に自分がフィーナになったような、幸せな気持ちになれた。

会場でもとても可愛いと評判になり、写真も沢山取ってもらえて有頂天になっていた事を覚えている。

しかし結局、中身は所詮、前世の自分…。

ベルヴィアのコスをした子に『ごきげんよう、フィーナさん』とにこやかに挨拶され、幸せな気分を台無しにされた気持ちになり、つい『フンッ!』とガン無視して歩出してしまった。


『ちょっと、あなた! 感じが悪いですよ。無視とかやめて貰えませんか』


『はぁ? あたしに注意とか、何ベルヴィアになりきっちゃってるワケですか?マジ迷惑なんですけど悪役令嬢さん』


『……あなた、フィーナのコス、まったく似合ってませんね。何て下品なんでしょう』


『もう、なんなのよ! そこどいてくんない? 超不愉快なんですけど!』


『ああ、もしかして、ざまぁされてしまうヒロインちゃんのコスのつもりなのですか? それなら納得いきますね。ピッタリすぎて、驚いてしまいましたわ!』


『はぁぁぁ!? なに人の事侮辱してんのよ! このベルヴィアもどきのクソ悪役令嬢!!』


どちらも引っ込みが付かなくなった結果、相手の女の子と取っ組合いに近いケンカをしてしまい、運営委員会の人たちに取り押さえられてしまった。

だが、前世ではフィーナの姿でお下品な行動を取ってしまった事しか、反省していなかった。

しかし今はきちんと思える。……運営さん、ゴメンナサイ、と。





現在ほぼ六歳である少女ベルヴィアは、過去の『ハルソラ』関連の黒歴史の一部を思い出し、遠い目をした。


一応これらの行動・発言の全てが痛々しい事だったと、死ぬ直前の二十五歳の時には学習していたのだが、六歳とはいえ公爵令嬢としての礼儀作法も多少は学んだ今は、更に余計辛く思えた。

本気で泣きたい。



妄想。暴走。自爆。

黒歴史的な事を繰り返しては、自由気ままに生きていた前世のベルヴィア。


フィーナのコスプレをして、

『わたしはフィーナみたいな素敵な女の子になりたい!皆の心を救えるような、天使みたいな優しい子に!』

と叫んだ事もあったが、冷静に考えるとコスプレをするなら、自分はむしろベルヴィアの方が似合ってたんじゃないだろうかと今は思う。

わがまま放題暴言を吐く所とかが特に……。


ああ、だからベルヴィアに生まれ変わったとか!?


ベルヴィアはだらだらと冷や汗をかきながら、叩きすぎてボロボロになってしまった羽枕を抱き締めた。

ベルヴィアは、運営さんには謝りますが、ケンカ相手のコスの女の子には謝りません。

何があっても絶対にです。

そこは譲れませんから。


次は、ゲームに登場する攻略対象達の不幸設定についてです。

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