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妖精君は進化したようです

ベルヴィアと愉快な仲間たちでお送りします。

エミリオが来た事で、仕事に一区切りをつけ一同は一休みをする事になった。

メイドにお茶とコーヒーと大量のお菓子を用意させ、ベルヴィアはローテーブルの前のソファーに座った。

隣にはケビン、正面にアレックスその隣にエミリオが座っている。


「なるほど、それでケビン君はちょっと落ち込んでいるわけですね?」


先ほどの『ケビン・モブ疑惑』の話を聞いたエミリオもまた、吹き出しそうな顔をしていた。


「いいじゃないですか、モブ属性。僕は好きな設定ですよ?

 普段は人畜無害な顔をしてヒロインを油断させておきながら、ここぞという時に牙を剥いて襲い掛かるんです……!!

 獲物を前にした、野獣のごとく…!!」


あ……また始まった。エミリオのエロ妄想……。


ベルヴィア達は遠い目をする。


子供と大人の狭間に位置した、愛らしさと麗しさを兼ね備えた美しい姿をしておきながら、エミリオは子供の頃よりも更にエロ方向に思考が特化した、妖精というよりも妖怪と言った方が的確なのでは…というエロエロ青年へと成長してしまっていた。


「気を付けて下さい、ベルヴィア嬢。彼は闇属性を内に秘めたヤンデレ予備軍だと僕は睨んでいるんです!」


あ、うん。ソレ、わたしもお兄様も知っています……。


ベルヴィアはチラリと隣に座るケビンを見てしまう。

ケビンはエミリオの言葉に固まってしまっているようだ。


「浮気とかは絶対にしてはいけませんよ? ちょっとしたよそ見だって危険です。

 思い込みの激しいヤンデレは、勝手に誤解してヒロインを拉致監禁して調…」


「はい、そこまで」


隣に座っていたアレックスがエミリオの顔の前に手の平を差し出し、それ以上先は言わせなかった。


「ここからがいい所なんですが、残念ですね」


とても熱弁を奮っていたとは思えない優雅な姿で、エミリオはテーブルの前に置かれた紅茶を手を伸ばした。

 

「お、俺はそんな事しないからな!?」


ケビンはベルヴィアの腕に縋りついた。だが……。


「あ、うん。そうだね」

「ベル、信じて!!」


ベルヴィアの目が泳いでしまったのを、ケビンは見逃さなかったようだ。


「大丈夫だ、ケビン。ベルは浮気なんかしない。

 二人の間には、愛がある。そうだろう? それを信じないでどうするんだ」


アレックスはケビンのヤンデレ疑惑問題から話をそらしているのだが、それに気づかずケビンは『愛』という言葉に頬を赤くする。


「そ、そうだよな! 俺とベルは…」


「フッ、ケビン君。突如ベルヴィア嬢に横恋慕する美青年が現れてしまった場合、君はどう思いますか?

 ベルヴィア嬢の自分への愛は信じている。だが、それでも抑えられない嫉妬の炎……!!

 やがてケビン君は、愛するベルヴィア嬢を自分だけのものにしたくなり、ナイフを…」


エミリオは妖しい笑みを浮かべ、煽る。


「エミリオ、そこまでよ! ケビンいじりはここで終了!!」


ベルヴィアはケビンをからかうのが大好きなのだが、ケビンの瞳から若干光が消えかけているような気がして慌てて止めた。


「ベル…俺、そんな事しないからな? 本当だからな…?」


あ、コレやばいやつだ。


ケビンいじりはやり過ぎるとツケは全てベルヴィアへと向かってくる。

できればこの場では使いたくなかったが、ベルヴィアは必殺技を使う事にした。


「もう、ケビンったら、おバカさんなんだから!」

 

ベルヴィアは、ケビンの頬にチュッとキスをした。


「ベ、ベル!?」

「これで機嫌なおして?」


ベルヴィアはあざとく首を傾げてみせる。

ヤンデレではないとか、ケビンの事を信じてるとは決して言わないベルヴィア。

しかしケビンは愛する婚約者の言葉に、首まで真っ赤にしてうんうんと首を縦にふった。


「やりますね~ベルヴィア嬢。さすが幼馴染兼婚約者!!」

「ベル………」


友人たちのラブシーン(?)を見て興奮するエミリオに、妹の捨て身の行動に頭を抱えるアレックス。


「もう、エミリオがやり過ぎるからー!!」

「いやぁ、ケビン君のこの純情っぷりは貴重ですよ! ジェフリーの次に僕のお気に入りなんです」


王太子の幼馴染の吊り目青年ジェフリー。

王太子とエミリオがエロ繋がりで親友となってしまった為、彼は高確率でエミリオのセクハラ攻撃を食らい、泣きそうな目に遭わされていた。

それを知っているアレックスは、ため息を付く。


「エミリオ、ケビンは僕の未来の義理の弟なんだ、程々にしておいてくれ」


「はい。アレックスさんとケビン君には、僕の憧れのエロゲーを作る協力をして貰わないといけませんからね」


どうしてコイツは……と、ベルヴィアも兄と共にため息をついた。


「あのね、エミリオ。何度も言っているけど、エロゲは18歳未満は絶対にやってはダメ!!

 18歳未満の子供がそんな物を作るだなんて、もっての他!!

 ついでに、ケビンにはエロゲは作らせないわよ!」


五年程前、ベルヴィアはつい口が滑ってしまいエミリオにパソコンのR18のエロゲーの存在を話してしまったのだ。

それ以来男性向けのR18のエロゲーを作る事が、エミリオの最早悲願となってしまっていた。


今この場にいる四人は、この世界でのゲーム作りの全てに係わっている。


アレックスは何でも屋だが、メイン担当は光魔法を応用したプログラム。

ケビンは風魔法を応用した音響担当と、アレックスのサポート。

ベルヴィアはアイデア提供と、乙女ゲーのシナリオ担当。

エミリオはイラスト担当で、ギャルゲーのシナリオも担当している。


『携帯ゲーム』が有名になってからは、プログラマーやデバッグ作業要員を雇用し始めたが、欠かせない主要メンバーは今でもこの四人だ。

 

一番最初に作った『ハルソラ』のイラストはアレックスとエミリオの二人で描いているのだが、攻略対象はどちらが描いてもカッコイイのだが、フィーナとベルヴィアのイラストはエミリオが描いたものの方が可愛い。

エミリオ曰く、可愛らしい少女たちへの愛がアレックスには足りないのだという。

ベルヴィアにとって、正直エミリオに自分ソックリな美少女を描かれるのはぞわぞわしてキモチガワルイ。

だが、エミリオの描くフィーナの可愛い事といったら……!!


キャラクターグッズを販売する『キャラメイト』用の描きおろしイラストは、全てエミリオが描いている。

ベルヴィアは男性向けのエロゲなんて作りたくないのだが、エミリオの機嫌をそこねてしまえば、もうあの可愛らしいフィーナのイラストを描いて貰えなくなってしまう。


エミリオはそこの所を良く分っているため、堂々とエロゲーを作りたいとシスコン魔人のアレックスに向かって言うのだ。


「エミリオ、その君の為のゲームは風魔法の音響担当は他を探そう。ケビンにやらせたら、ベルが怖いからね」


エロゲーという単語を避けるアレックス。


「ええー。ケビン君の風魔法って繊細だから、音声録音の時は断然音質がいいんですよね。

僕、女の子のあえ…」

「はい、そこまで」


アレックスはまたエミリオの顔の前に手を出し止める。


「僕は割とどうでもいいと思っているけど、この二人には刺激が強いからね」


「ええー。エロゲーって素晴らしいものを教えてくれたのはベルヴィア嬢なのに」


「わたしが好きなエロゲはBLなの!! ボーイズラブ!!

 乙女ゲーなら朝チュンで十分。エロならやっぱり、男同士ね!!」


キリッ! とベルヴィアは言い放った。


「ベル、女の子なんだからもっと慎みを持とうね?」


アレックスは、無駄とわかりつつ兄の役目として一応言ったが、ベルヴィアの暴走は止まらない。


「えー。BLはファンタジーだしー。

 女の好きなエロって言えば、やっぱり基本はホモでしょ!」


「そうですねえ。美しい女の子の姿だけを見ていられるのは美味しいですし、僕も女の子同士のエッチなシーンには非常に興味があります。

 女性なら男同士のエロを好んで当然でしょう」


エミリオは感心している。


「そうそう。男が男に突っ込…」

「はい、ベルそこまで」


言葉だけでは駄目だと、アレックスはベルヴィアの前に手の平をかざしてた。

そうされる事により、ベルヴィアは大事な事に気が付いてしまった。


「あああ!! わたしったら『ハルソラ』に危なくホモを持ち込んでしまう所だった!!」


乙女ゲームとBLは混ぜるな危険!!

それは絶対に譲れないベルヴィアのポリシーだ。

 

この世界では、まだBLは広がってはいない。

本能で目覚めた腐女子たちは一定数潜んでいるはずだが、まだそれを同人誌という形で発表しようという猛者はいない。


前世のベルヴィアは同人誌即売会などのイベントが大好きだったが、もし同人誌という表現手段をこの世界の腐女子たちが手に入れてしまったとしたら…!


ベルヴィアは、前世のイベント会場で見かけた数々の発狂しそうな本の表紙たちを思い出す。



★王太子×ジェフリーのショタ本(子供同士なのに、表紙が肌色)。


★エミリオ×ジークの同じくショタ本(仲良し兄弟ものだと思って中を開いたら、中身はR18。しかもジーク受)。


★本編では決して仲がいい訳ではないのに、美しいからというだけの理由で作られた謎カップルの王太子×アレックス本(表紙が綺麗過ぎて、見たくないのに目を惹く恐ろしい罠)。


★フィーナとベルヴィアの性別を男にした、フィーナ×ベルヴィア本(フィーナが絶妙な面影を残したままイケメン化。それに寄り添うツンデレ美少年のベルヴィア)。


★ガチムチにピーー(自主規制)されてる攻略対象が見たいと作られた、ジーク総攻め本(こういう時だけ人気がでるジーク)。


★微エロ担当が男にピーー(自主規制)されたら…?という酷い企画から生まれたライアン先生総受け本(先生が赤いロープで縛られている表紙)。



ベルヴィアは数々のトラウマ案件を思い出してしまい、頭を掻きむしった。

特に後半の総攻め・総受け本は、シャレにならない。 

たとえあれが『ハルソラ』以外のジャンルの本であっても、間違いなくドン引きしていた。


あの時の恐怖と怒りが忘れられないため、ベルヴィアは自分からはBLをこの世界でわざわざ広げたりはしないと決めていた。

『トキメキ王道学園☆』を作りたい衝動になど、負けたりしない。


また、同人誌即売会の開催も、他の人が作った『ハルソラ』の二次創作を読めないのは悲しいが、諦めるしかない。

腐女子はどこからでも沸いて来るし、絶滅させる事は不可能だ。

ここで油断すると、自らの首を絞める事間違いなしだ。


「あ、そこはベルヴィア嬢の拘りでしたね」


エミリオはハハハと笑い、アレックスは目を閉じて首を振った。


「ベルはどうして兄と婚約者の前で、そういう話が出来るんだろうね?」

「え、だってお兄様相手なら今更だし、ケビンなら多分聞いてないよ?」


ケビンはまださっきのベルヴィアの『ほっぺにチュッ!』効果でまだ上の空だった。


「ケビン君、妄想の世界に入ってますね。さすがヤンデレ予備軍」

「かわいいからいいの! 刺されるようなヘマ、わたししないもん!」

「……ケビン、君は本当にベルでいいのか…?」


三人で話していると、ケビンはやっと現実世界に戻ってきた。


「え、なんで三人で俺の事見てんの??」


「なんでもないわ!」


「いやぁ、僕も恋人が欲しくなりますねえ」


侯爵家の長男であるのに、16歳になった今もエミリオにはまだ婚約者がいなかった。

双子の弟のジークの方は、木刀大好き娘のキャロルと出会ってすぐに婚約している。


「エミリオ、子供の頃は割と頑張って婚約者探してたのに、いつの間にか仕事の話しかしなくなったよね。せっかく王立学院にいるんだし、そろそろ本格的に婚約者探してみたら?」


ベルヴィアは自分がオタク街道へ引き込んだせいかと思い、少し疚しかった。


「いえ、僕は自分で思っていた以上に女性という存在が好きなんだと気が付いてしまったんです。

婚約してしまったら、色んな女性と遊…いえ、お付き合いし難くなるじゃないですか」


「「「エミリオ……」」」」


妖精のようなこの容姿で履いていいセリフではない。

ベルヴィアたちは、エミリオを白い目で見る。


「この国が一夫多妻制だったなら、僕も婚約くらいとっくにしてましたよ?」


エミリオは真顔で言っている。


「はぁ…どこかにいませんかね? 『こんな素敵な男性なのだから、他の女性に愛されても当然』とか言ってくれたり、『妻が一人だけだなんておかしいです! わたしたち皆でエミリオ様をお支えしましょう』とか言ってくれる、僕に都合のいい女性たち……」


「エミリオ、現実世界に返ってくるんだ。

 君の理想はファンタジー。ハーレムなんてラノベの中でしか成立しないよ」


アレックスはエミリオの肩を叩く。しかしエミリオには通じない。


「う~ん、僕くらいの爵位持ちで美青年なら、いけそうな気がするんですけどねえ」


「うわ……跡取りとかどうする気だよ…。実の兄弟で殺し合いとか始まりそう」


親戚から爵位目当てで両親を暗殺されかけた過去を持つケビンは、そこが気になったようだ。


「あ、ケビン君の所も大変だったみたいですね。

 僕の所も大変だったんですよ。

 ベルヴィア嬢とアレックスには本当に感謝しても仕切れないです。

 お二人が味方でなかったら、僕は間違いなくあの世逝きでしたからね」


一瞬遠い目をした後、エミリオは話を続けた。

次回はエミリオのシリアス回です。ベルヴィアの書いた予言書の結果、エミリオは…?

細かい修正が必要なので、明日投稿します。

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