オタク大国、バンザイ!!
勢いで調子に乗ってみました。読んでて面倒になってきましたら、お兄様登場の所からドウゾ。
べルヴィアが記憶を取り戻してかから約九年半後……。
どうしてこんな事になっちゃったんだろう??
15歳となったベルヴィアは、その日発売されたゲーム雑誌『ゲーム・ログ』の記事を見て、顔を引きつらせた。
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『輝ける、ラベンディーア王国ののオタク十年史!!』
~~これであなたも『オ・タ・ク通!』~~
読者の皆!!
全てはラベンディーア歴1006年から始まったんだよ!
今日は、僕たちの愛する『ラノベ』や『ゲーム』の歴史について振り返ってみようと思うんだ!!
さあ、皆は何処まで知っているのかな…!?
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■1006年
予言書という名の小説が発見される。
実在人物と酷似した登場人物が多数存在し、予言書を読んだ人々の間で大問題となる。
■1007年
予言書の内容を改変したとされる、人気女性向け小説『春風の鎮魂歌~悠久の空へ』通称『ハルソラ』が発売。
『ハルソラ』には画期的なデザインの表紙と挿絵が付けられ、女性の間で、書籍としてはいまだかつてない売り上げを誇った。
実在人物に酷似した登場人物たちの存在が問題となるが、作者は不明。
出版社は『国王陛下から発売の許可を貰った。
これはあくまでもフィクションであり、実在の登場人物・団体とは一切関係はありません』で押し切ったという。
■1008年
『ハルソラ』のヒットを受け、主に男性読者を対象とした冒険小説……のちに『ライトノベル』と呼ばれる作品が次々と発売される。
その第一作とされる『転生したら竜王様だった件について』は、発売の前日に書店に大行列が発生し、王国騎士団が警備に駆けつける騒ぎとなった。
『ライトノベル』の発売は次第に社会問題へと発展していく事になったが、経済効果は抜群だったため、王国はこれを支持すると表明した。
■1009年
人気女性向け小説『春風の鎮魂歌~悠久の空へ』が乙女ゲームという形で、携帯ゲーム機という名前の魔道具と共に発売される。
初めて登場した『ゲーム機』という魔道具に国民は騒然とした。
通称『ハルソラ』と呼ばれたこのゲームは、瞬く間に王国中に知れ渡り、貴族の間ですら、品切れ購入待ちの状態が長く続くいた。
■1010年
『ハルソラ』のヒットを受け、男性をターゲットとした『ギャルゲー』が誕生。
『ときめき♪青春学園 ~~約束のサクラの下で~~』(通称『ときガク』)は、『ハルソラ』のシステムを利用した作品で、内容は明るいラブコメ。
可愛らしい少女たちのイラストが話題となり、結果的に『ハルソラ』を超える売り上げとなった。
■1011年
ホラー要素を全面に出した『妹切草』というノベルゲームが発売。
それまで若者のものだった携帯ゲーム機が、全年齢を対象とした幅広い層に広がるきっかけとなる。
イラスト付きの小説とゲームが売れていく中、コミック(マンガ)』という絵で物語を読ませる作品が登場。
『ハルソラをコミカライズしました!』という宣伝文句から始まり、次々と人気小説やゲーム作品が『コミック(マンガ)』作品として発売される事に。
■1012年
『ゲーム』を作る為の魔法システムが無料で一般公開される。
開発チームの発表によると、「自分たちも他の人が作った新作ゲームをプレイしたいから」だという。
これにより、この年の将来子供がなりたい職業のトップが、『ライトノベル作家』から、『ゲームを作る人』に変わった。
また、小説やゲーム、コミックの登場人物たちをモチーフにした『キャラクターグッズ』が多数発売。
「キャラメイト」というそれらの商品を取り扱った専門店が誕生。
■1013年
王都に国立芸術劇場が誕生。
『ハルソラ』を題材にした演劇が公開され、そのチケットは一時入手困難となり、三ヶ月だった公演予定は急遽半年へと延長された。
それと同時に、第二国立芸術劇場が西の都市エルンへと建設される事が決定した。
前年にオープンした「キャラメイト」がヒットを受け、全国展開に。
売上金の一部は慈善事業に投資しますと発表し、更に注目を集める。
■1014年
月間コミック雑誌『少年飛翔』、『少女と夢』が発売。
発売元の出版社は、
「やっとマンガ(コミック)を描けるだけの画力を持った人材が多数育ちました」
と雑誌のインタビューで回答している。
■1015年
携帯ゲーム機の大型機種、『家庭用ゲーム機』が発売。
それと同時に発売されたRPG『最後の竜王伝説』という新ジャンルのソフトは、これまで発売されたゲームの発売本数を大きく上回る事となる。
また、『家庭用ゲーム機』による大画面の迫力ある映像は、今後どのような発展を遂げて行くのか、演劇界の面々も注目しているらしい。
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そして来年1016年は、いよいよあの有名なキャラのモデルが、王立学院に入学するんだ!
ハルソラを知ってる皆なら、もう分るよね!?
そう、悪役令嬢『ヴィヴィアン』だよ!
レイノルド王太子殿下が『ハルソラ』の『アーノルド王子』のモデルだっていうのは有名だよね!?
フィオナのモデルは本誌では掴めなかったんだけど、ヴィヴィアンのモデルは有名だよね。
名誉棄損で訴えられると困るから実名は残念ながらここでは出せないんだけど…。
これでヒロインの『フィオナ』が本当に王立学院に入学したら…予言書通り、『ハルソラ』がスタートしちゃうかもしれないんだ!!
どんな凄いラブストーリーが学院で展開するのか、本誌の記者はしっかりと追いかける予定だから、皆楽しみにしててね!
(*^O^*)/
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何処からどう突っ込むべきなのか……。
ラノベ→マンガ→舞台化→アニメ→家庭用ゲーム→携帯ゲーム
普通に日本を参考にしていけば、こういったような順番になりそうなものなのだが、全て愛する妹を喜ばせたいというシスコンを拗らせたアレックスが思い付きで次々と制作し発表していったため、微妙におかしい発展の仕方をしている。
ラノベ→携帯ゲーム→マンガ→舞台化→家庭用ゲーム→多分次は映画→そろそろアニメ?
これがこの世界の現実だ。
ベルヴィアがアニメが好きだったなら、そろそろテレビアニメやドラマが登場していてもおかしくないのだが、一番発展しているのは何故かノベルゲームとなっている。
同じゲームでも、大勢の人に求められて間違いなく売れるのはアクション系のゲームであるはずなのに、そちらは『ハルソラ』や『ときガク』に登場したちょっとしたミニゲームで開発が止まってしまっていた。
アレックス曰く、「妹の欲しがるものを作るので手一杯だから、他の事に手を出してる時間はない。欲しいなら、他の人が作ればいいんじゃない?」という事だ。
この言葉を覆せるのはベルヴィアだけなのだが、基本我儘で自分の事で常に頭が一杯な彼女は、「わたしアクション系とか格ゲーとか超苦手なんだもん、そんなのいらないしー」で切り捨てていた。
ちなみに、ベルヴィアが前世の記憶を頼りにアレックスに作らせていった作品たちは、莫大な利益を上げていた。
しかし、ベルヴィアの中でこれらの作品群は自分が考えた物ではないという気持ちが強かったため、明らかにオリジナリティのない作品から得た売り上げ利益は、全て慈善事業へと寄付している。
『盗作で儲けるとか、超ヤバイよね!!
それに、家はお兄様もいるしお金には全然困ってないんだもん!
フィーナはゲームで孤児院に寄付したり、平民用の学校を作ってたりしたから、わたしもマネするんだもん!!』
いい事をしているのだが、その考え方の根本が『ハルソラ』から離れないため、周囲からのベルヴィアの評価は常に微妙な事になっている。
けれど彼女は、そんな事など全くもって気にしていなかった。
また、ベルヴィアがマンガよりもラノベが好きだったため、マンガの普及も若干遅れている。
二年前にやっとオリジナルストーリーのマンガが発表出来る雑誌が発売されたのだが、それは、アレックスとベルヴィアの友人である、双子の片割れのちょっとエロ…いや、ませた方の少年エミリオの力が大きかった。
エミリオの『もっととエッチな作品が欲しい』という欲望と、『エロゲは18歳未満がプレイしてはダメ!!』というベルヴィアの珍しく常識的な主張がぶつかり合い、その結果ゲームは無理でもマンガでなら…!!と、エミリオが自力でオリジナルマンガを出す出版社を立ち上げたのだ。
ちなみに、この世界のマンガやゲームのイラストはどうなっているかと言えば。
丸っきり日本のマンガの絵柄となっている。
ベルヴィアが微妙な画力で再現した日本の実在漫画家の絵をマネした絵を、アレックスとエミリオがデッサンの狂いなどを修正して、多種多様…それでいて何処かでみたようなイラストを作り上げていた。
著作権的にコレってどうなの??
ベルヴィアは気まずかったが、アレックスの
『ニホンのマンガってやつは模倣から発展して行ったってベルは言っていたよね?
僕らもそれを実行しているんだって解釈すればいいと思うよ?
まあ、どの作品でも元の作者って人がこの世界に転生していてクレームが来たら、その時対応すればいいしね』
この言葉で一応納得する事にしていた。
コレも一応内政チート…になるわよね。
転生者でもなんでもないお兄様が内政チートしちゃってるこの世界、いったいどうなっっちゃうの…!?
無気力気怠い系のキャラが覚醒したら内政チートって極端過ぎない!?
ベルヴィアのツッコミは止まらない。
そして、今年発売された大作RPG『最後の竜王伝説』だけは、唯一アレックスが自身のために作成したゲームだった。
元々ゲームブックが好きだったアレックスのツボにはまったらしい。
『ドラ〇エ』と『エフエ〇』を足して二で割ったような形のロールプレイングゲームなのだが、シナリオはアレックスの作ったオリジナルストーリーだ。
お使いイベントやら壮大なムービーが盛沢山の、ベルヴィアも満足できる面白いゲームに仕上がっている。
主人公と仲間たちの名前変更が可能なため、ベルヴィアは主人公の青年の名前をグレイ、ヒロインの名前をフィーナに変えてプレイした。
主人公の名前が『グレイ』な理由は、隣国の第二王子にだけベルヴィアがこの世界で会った事がなかったからだ。
フィーナとグレイが世界を救った!! フィーナってばマジ天使!!
……と、ベルヴィアは二次萌えもどきをしながらこのゲームを楽しんだ。
ちなみに、ケビンはこのゲームの主人公の名前をケビン、ヒロインの名前をベルヴィアにしてプレイていた。
その事を知ったベルヴィアは「ないわ~自分の名前を主人公に付けるやつって、本当にいたんだ~信じらんない~」と本人に向かって言い放ち、ケビンを半泣きにさせた。
この瞬間、全世界の『ゲームの主人公の名前は自分の名前を付ける派』男子を敵に回したが、ベルヴィアは悪役令嬢なので気にしたりはしない。
何だかんだで他の記事も読み終えたベルヴィアは、抱えていた雑誌をとうとう部屋の真ん中へと放り投げた。
「もう、何なの~この雑誌!!」
「ベル、お行儀が悪いよ」
同じ部屋で黙々と仕事をしていたはずのアレックスが仕事机の前から立ち上がり、ベルヴィアの投げた雑誌を拾い上げていた。
17歳となったアレックスは、子供時代より更に『ハルソラ』のキャラに容姿が近づいており、薄紫色のサラサラとした長髪が肩からこぼれ落ちる姿はゲームの一枚絵のようにも見える。
しかしそんな兄の姿も既にすっかり見慣れてしまっているベルヴィアは、愚痴をいい出した。
「だって、この記事……!!」
「ん?」
パラパラと雑誌をめくり、アレックスは少し噴出した。
「まあ、間違ってはいないよね」
「そうなんだけど!! でも、何かこうイラッて来るっていうの?」
二人のやり取りを聞いて、更に同じ部屋で仕事をさせられていたケビンも立ち上がった。
「何? ベル達どうしたの??」
15歳となったケビンもまた身長が伸びに延び、ゲームの攻略対象に相応しい美形へと成長していた。
しかし、その姿はゲームキャラの『ケビン』とは大いにかけ離れていた。
「ケビン、この雑誌見てよ!! 特にココ!!」
「あ、『ゲムログ』の12月号出たんだ。え、ベルがヴィヴィアン扱いかー。
……って、俺だって王立学院に入学すんのに、なんで名前出てない訳??」
「それは……」
ベルヴィアはチラッとアレックスをみたが、兄は吹き出すのをこらえている。
「俺、この間の『ゲムログ』の人気投票で『ハルソラ』の一番人気キャラになってたよな?」
そう。人気投票でケビンの名前を変えたキャラ『ケイン』は組織票の効果で隣国の王子キャラを抜いて一位になっていた。
だが……。
「だって、『ケイン』も入学するって宣伝みたいな事が書いてあったら、詐欺になりそうっていうの?」
「え!? 何で?」
何でって言われても…っていうか、どうして分かんないの!?
お兄様も一緒に何か言って…とベルヴィアは思ったが、アレックスは後ろを向いて肩を震わせている。
ちょっと! 無気力系キャラに成長する予定が笑い上戸になってるだなんて、お兄様も十分キャラ崩壊してるんだから!!
ケビンを笑ってられないんだからね!?
ベルヴィアは心の中でそうツッコミを入れつつ、ケビンに厳しい現実を突きつける事にした。
「ケビン、ハッキリ言うけど、『ハルソラ』の『ケイン』がケビンの事だって、雑誌の記者は特定できなかったのよ!」
この世界で『ハルソラ』を作ってしまったアレックスとベルヴィアたちだったが、登場人物の名前は微妙に変更して発表していた。
そして、予言書という噂がついた『ハルソラ』は実在人物がモデルとなっていると話題になっており、誰が誰のモデルなのかと非公式で特定作業が進められていた。
そしてその中で、『ケイン』だけはモデルとなった人物がまったくわからないと『ハルソラ』ファンの間では有名だったのが、どうやら本人はその事を知らなかったらしい。
「えええええええ!? 俺なんて簡単に見つかるだろ!?
髪の色も同じ薄茶だし、瞳の色だって深緑で一緒だろ!?
名前なんて『ケイン』と『ケビン』とかって、殆ど変えてないのと一緒じゃないか!!
…そりゃ、髪の長さはあっちは長髪で俺は短くしてるけどさ、顔だってソックリなんだし、正面から見たら一目瞭然、モデルは俺しかいないって分るだろ!?」
うん、ここまで一緒なのに全く別人にしか見えないって、スゴイわよね!
ベルヴィアが上から下までケビンの事を見やっていると、アレックスもチラリと振り返って同じようにケビンを見た後、また後ろを向いて笑いを堪えだした。
「ケビン、大事な事を忘れているわね。あなたのその服は何?」
「え?仕事用の作業着だけど?」
ケビンはアレックスの仕事部屋へと拉致され、新作ゲーム用のプログラムの修正作業を手伝わされていた。
「ケイン様なら、仕事の時だろうが何だろうが、あの深緑のローブを脱いだりしないわ!!」
「ローブ着たまま仕事!? バカじゃねーの??」
15歳にしてアレックスのアシスタントとして、デスクワークのプロと化してしまった哀れな少年は、心の底から驚いていた。
「それに、ケイン様はサークレットだって、寝る時以外絶対に外さないわ!!」
「はぁ!?」
前世で公式ファンブックを読み込み暗記していたベルヴィアは、自信満々だった。
「ケイン様は自分は常に命を狙われているって思っているから、完璧な結界の張ってある自室以外でくつろげないって設定なのよ。
特にサークレットの魔法石には、闇魔法の呪文やあらゆる特殊効果が秘められていて、命を守る為の必須アイテムなの!」
「お、おう」
ケビンの顔は思いっきり引きつっている。
「つまり、わたしたちの作ったゲームの『ケイン様』は、常にローブは着たまま!!
額にはサークレット!!
今みたいに緩い恰好が平気で出来るケビンと、あのケイン様はまったくの別人って事なのよ!!」
「いや、だって顔一緒なんだぞ!?」
「ケビンは服装ってものを舐めているわね!?
どんなイケメンだって、恰好がダサかったらモテない。それと一緒よ!!」
「……俺ってダサいわけ!?」
「ダサくはないけど、今も普段も常に平凡っていうの? 髪の色も目の色もこの国じゃものすごく多い組み合わせだし、あの華やかなケイン様と比べて見たら、今のケビンは…例えるならモブね」
ベルヴィアは腕を組んで、悪役令嬢スタイルでちょっと意地悪く笑いながら頷いてみせた。
「モブ!? 俺、人気ナンバーワンキャラのモデルなのに!?」
ショックを受けて、ケビンは固まってしまった。
それを見たアレックスはさすがに笑うのは止め、ケビンの肩を叩いた。
「ケビン、冷静になるんだ。今の君は確かにケインとはかけ離れている。
だけど、君さえ本気になればあっという間にケインのモデルは君だと世間は認識するはずだよ」
「本気を出せば……!」
ケインの目は輝く。だがしかし……。
「だけど、ソレにはリスクが伴う。
君には引きずるような丈の深緑のローブを着て、あの派手な宝石だらけのサークレットを付けたまま外を歩く勇気があるのかな?」
「!!!!!?」
「無理だろう。僕だって無理だ。それに、言葉遣いも変えないといけないだろうね」
「ううう……」
「『フッ…俺にあのローブを着ろだと?
いいだろう。お前がどうしてもというのなら、な…?』……こんな感じかな」
アレックスは、額に指を当て、ケイン様っぽい口調でセリフを捏造してみせた。
「無理無理無理!! ソレだけは許して!!」
ケビンは真っ青になって慌てふためくが、ベルヴィアはそれに食いついた。
「お兄様、ソレ凄くかっこいい!!
今更ケビンにそういう中二病キャラをやれっていうのは無理があるけど、お兄様ならマジイケる!!
この際キャラチェンジして、お兄様がその路線で行くっていうのはどう!?」
ベルヴィアの瞳は本気で輝き始めていた。
「いや、そういうのはやはり婚約者に任せた方がいいと思うな、僕としては」
アレックスはケビンの背中をベルヴィアの方へと押す。
「ちょ…!! アレックス!! あんたが責任とれよな! 自他共に認めるシスコンなんだろ!!」
今度はケビンがアレックスの肩をグイっとベルヴィアの方へと押す。
「いや、婚約者に良い所を見せる場面だね、ここは。さあ好感度を一気に稼ぐんだ、ケビン」
「俺、ベルの事世界一愛してるけど、乙女ゲーごっこだけは無理だからーー!!」
ケビンが絶叫した所で、部屋をノックする音が聞こえた。
ベルヴィアがどうぞと声をかけると扉が開き、本日訪れる約束をしていた友人が姿を現した。
「こんにちは、皆さん何やら楽しそうですね?」
黄金色の波打つ髪を長く延ばし後ろで緩く束ねた、真っ青な瞳の美少年がにこにこと笑っている。
双子の片割れのエミリオだ。
16歳になった今も変わらず妖精のように愛らしい姿をしたエミリオだが、彼は間違いなくラベンディーア王国をオタクの魔窟へと変えてしまった元凶の一人である。
そしてそんな彼が加わる事により、この場は更にカオス度を増す事になるのだった。
次は『ハルソラ』の登場人物たちの未来がどう変わってしまったかです。




