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セクハラはいけません。

かわいそうなお兄様……。

誕生会は何とか無事に終わった。


招待客の大半は、王都へと繋がっている特別な転移魔法陣を使って、帰る事になっていた。


こうして特別なイベントがある時は、各領地からの移動は時間がかかりすぎため、一度王都に集まってから特別に転移魔法陣の使用許可をとり、会場となる場所へとまとめて移動する事になっている。

帰りはその逆となり、王都へと大勢でまとめて帰る事になる。


大抵の貴族は王都にも屋敷を持っている為、それで問題はない。


友達になる為の交流会で疲れてたため、アレックスが王太子とジェフリーにランバート公爵家の案内をする約束は、延期される事になった。


ベルヴィアたちは、王都へと帰って行く新しく出来た友人たちに、『また近い内に集まろうね!』と約束して、手を振ってお別れをした。


ケビンは隣の領地に住んでいるため、王都へは行かずに帰宅する事になっているが、今日は両親と共にランバート公爵家に滞在する事になっていた。



ケビンの両親にはこれから起きるかも知れない未来を回避する為に、ベルヴィアの書いた『ハルソラ』の小説を一晩かけて読んで貰わなくてはならない。


その為、父親であるランバート公爵を通して、ローガン伯爵夫妻には明日の朝までに『ハルソラ』を読んで貰うように頼んであった。


アレックスは王都で買った写本用の魔道具を使い、ベルヴィアの書いた『ハルソラ』のケビンルートの小説を、五冊作り上げていた。

文字は魔法で大陸共通言語の活字に変換されているため、誰が書いたかは分からない仕様となっている。


ローガン伯爵夫妻には、そのうちの二冊を渡す事になっている。

ケビンはまだ子どもなので、読んでも理解できるとは思えなかったので、明日アレックスが口頭で説明する事になっていた。




誕生パーティの二日前に、ベルヴィアの記憶に前世の記憶が戻ったとランバート公爵夫妻には告げたのだが、その時の反応には兄も妹も驚いた。


先に本を読んで貰ったのだが、その感想は、


「これをベルヴィアが書いたのか? アレックスだけでなく家は娘も天才だったのか!」


「アレックスのおかげかしら? 急に頭がよくなったのですね。ベルヴィアはお勉強するのが苦手だったから、わたくし心配していましたの。でもこれでもう大丈夫ですね。安心しましたわ」


二人ともニコニコしていた。

寝食忘れる程の情熱で娘が書き上げた作品だったので、読むのを楽しみにしていたらしい。

その内容がケビンが不幸になるという設定だったので、そこだけは微妙だったが、ドラマとしては充分大人も楽しめるようなものだったため、二人は『家の娘には小説家になる才能がある!』と、ご機嫌だった。


続けてベルヴィアは前世の記憶を思い出したからこれを書いたのだと説明したのだが、二人は笑顔を崩さない。

本当に状況を理解したのかと尋ねると、


「アレックスが言うなら、そうなのだろう。私たちの息子は頭がいいからな」


「そうですね。わたくしたち、アレックスの事を信用してますから」


アレックスのが言うのだから真実に違いない、そう判断したようだ。


これを聞いたベルヴィアは、わたしの事は信用してないのね!っと、ちょっとだけ拗ねたが、よく考えたら自分だって自分の事を色々信用出来ないのだ。両親だってそうだろうという結論に達した。


そして、アレックスが計画を立てるのなら、全面的に協力してくれると、両親は約束してくれたのだった。




誕生会の疲れもあり、ケビンは夕食を食べ終わると早々に今日泊まる為の部屋に引き上げて行った。


その為、ベルヴィアとアレックスは今日の誕生パーティの反省会をするという名目で、大人たちを残してアレックスの部屋で明日どう動くかを相談する事にした。


部屋へとメイドにお茶を用意させると、アレックスは先日ベルヴィアに用意させた資料などを応接セットのテーブルの上に並べた。


「さて、今日の感想からまず行こうか」


「はい! 王太子様はエロい人でした! わたしびっくりしちゃった!!」


ベルヴィアは聞いていない振りをしていたが、しっかりレイノルドとエミリオのおかしな会話に聞き耳を立てていた。


キャロルの方はジークと戯れていたので、彼らの怪しい会話は聞こえていなかった。

普通の十歳の女の子が聞いていたらさぞかしショックを受けていた事だろう。


「最初に出て来る内容がそれって……ベルはもう少し女性としての恥じらいを身に着けるべきだね。しかも早急に」


アレックスは額を抑えた。彼としては全力で回避したい内容を真っ先に言われてしまい、かなり辛かった。…色々と。


「殿下ってば、さすが、ゲームで十八歳の時点で婚約者候補が四人もいただけある!

 優柔不断とかじゃなくて、単なる女好きだったのね!!

 トラウマとか人間不信とかなくても、絶対婚約者を決めるの遅いと思う、あれは!」


ベルヴィアは拳を握って、力説する。

実はアレックスもそう思っていた。


「そうかもれないね。けれどその話は今は置いておこうね?」


「じゃ、エミリオね! あの子ゲームでは妖精みたいに可愛いって設定だったし、侯爵家ではジークが死ねば良かったのにって言われちゃうくらい可愛がられてたみたいだけど、両親はエミリオがエロ小僧だって、知ってるのかな?」


まだベルヴィアはエロから話を離さなかった。

アレックスは勘弁してくれと思う。


「エミリオは頭のいい子だからね、多少問題発言をする事があったとしても、政治的には侯爵家に必要な人材と考えられているはずだよ」


アレックスは、エロに関する直接的な発言を避けようとしていた。


「えええ? 子供なのに王太子様と猥談とかって、アレ多少じゃないよね?

 まぁあの短時間でレイノルド様の心をしっかり捉えていたから、凄腕といったら凄腕なんだけど、侯爵家の品位とかどっかに行方不明になっちゃってない?」


ベルヴィアの瞳は爛々と輝いている。


「手段を選ばない彼の資質もまた、才能の一つと考えればいいんだよ」


「選ばなすぎというか、アレ単に自分が猥談したかったんだよね?」


「……ベル、お前、僕の事からかってるよね?」


ようやくアレックスはベルヴィアにおちょくられている事に気付いた。


「だって、お兄様が珍しく動揺してるんですもの!」


ベルヴィアはテヘッと笑った。


「ねえねえ、お兄様はキャロルのパンツ見たかった?」


「子供の下着になんか興味ないね。お前たちが自分で言ってたんじゃないか。価値なんてないって」


まさか実の妹とこんな話をする日が来ようとは。

アレックスの精神的疲労は既に限界に達しようとしていた。

今日は色々な事があったが、彼にとってはこの瞬間が一番キツイものだった。


「そうなんだけど。うーんお兄様のガード固いなぁ。ケビンとかジェフリーはあんなに可愛かったのに!」


「お前のその発言の数々は、間違いなくセクハラに分類されるべきものだね。その話はもうなしだ」


アレックスは身を乗り出すと、目の前に座っていたベルヴィアの額にデコピンした。


「はーい。からかってごめんなさい。お兄様」


ベルヴィアはやり過ぎてしまったと反省をした。だが後悔はしていない。


「今日はジェフリーには可哀想な事をしてしまったけれど、ベルは良くやったと思っているよ」


アレックスは話を大きく変えようと、ベルヴィアの今日の功績について話す事にした。


「ホント!?」


「王太子殿下とジェフリーの関係は改善しないといけないと思っていたからね。あの二人は少し距離を置かないと、僕らが幾ら未来を変えようとしても、結局何処かでジェフリーは殿下の為に命を投げ出してしまって、意味がなくなってしまうから」


ベルヴィアに書かせた本を利用して、二人を引き離す切っ掛けを作ろうと考えていたのだが、今日の出来事によって、自然な形で関係性を変えて行く事になったのだ。


「うん!! ジェフリーの奴ったら超生意気で頭にきたけど、死んじゃうなんて絶対イヤだもの!!」


「ジェフリーは良い子だよ、不器用なだけで。僕は割と好きだな、ああいう子は」


「えええ!? 面倒くさくない!?」


ベルヴィアは驚いたが、アレックスから見ると、ジェフリーは自分にはない純粋な心を持った、健気な子共だった。


「僕からすれば、ベルの方がよっぽど面倒な子だと思うけどね?」


「ヒドイー!!」


ベルヴィアはブーっと頬を膨らませた。


「はいはい。明日はケビンに話をして、ローガン伯爵夫妻の未来を変えられるようにしないとね」


そう、明日はケビンの為に動かなくてはならない。


「ケビンのご両親には、あの本はベルが書いたとは言わずに、ある筋から手に入れた予言書だという設定で、父上から話してもらったから」


「予言書!?」


自分の書いた『ハルソラ』小説が、予言書扱いされてしまう事になろうとは!

ベルヴィアは目を丸くする。


「おまえが予言者みたいな事が出来ると世間に知られてしまったら、面倒な事になるからね」


「でも、家の使用人たちはわたしが小説を書いたって、みんな知ってるよ?」


何しろあれだけ大騒ぎしたのだから。


「この家の使用人たちは全員口が堅いし、彼らにはおまえが書いた小説とは少しばかり違う内容の小説を見せる事にしたから」


アレックスは先の事をしっかりと考えていた。


「さすがお兄様!! スゴイ!!」


「お前が書いたって雰囲気がでるように、僕がちゃんとヘタクソな内容を用意しておいたから。一応、予言書を読んだお前が興奮して、マネしておかしな内容のパロディ小説を書いたって設定だから、覚えておいて」


「ヘタクソ!! ちょ、お兄様!! ヒドイ!!」


せっかくの自信作なのに!!

小説化の作業、とても大変だったのに!!


ゲームには無かった場面と場面を繋ぐ地の文は、ベルヴィアが自分の言葉で書いたのだ。

使用人たちにも褒めてもらいたかったのに!


「お前の為なんだから仕方がないだろう? ベルは誘拐とかされたいのか?」


アレックスの問いに、ベルヴィアは青くなる。

これは異世界転生・転移ものにあるテンプレ的展開の一つだ。


「お兄様、助けてくれてありがとう!!」


ベルヴィアは慌ててお礼を言う事にした。


「どういたしまして」


アレックスは面白そうに微笑んだのだった。


相談会は、実はまだ続いています。次はキャロルについてです。


※長くなってしまったので分割しました。本日の夕方頃に手直しをして、後半部分を投稿します。


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