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第82話 総長

その昔、それは遥か昔、あの話を俺に聞かせたのが母方の祖母であったことから、彼女が生きていたくらい昔、ある話を聞いた。


実話かどうかはわからない、お伽話のような話。


昔、少年と少女がいた。


彼らは、いわゆる幼馴染というやつだ。


幼い頃からお互いを知っていたが、少年が戦争で長崎を離れている間に、長崎には原子爆弾が落ちた。


彼はこの地に帰り、彼女の訃報を聞く。


この時、彼は17歳だった。


学童疎開。


この地を離れ、彼女を亡くしたことを悔やんだ彼だが、奇妙な体験をすることになる。


なんと少年は、少女の霊と出会ったのだ。


それはまるで生きているかのように鮮明で、しかし儚げで、良い意味で、霊としてそこに立っていた。


彼女は彼の帰還を喜ぶ。


「貴方は生きていたのね。」


と。


そう、彼女は彼に恋をしていたのだ。


しかし彼が同じく彼女に恋をしたのは、霊になった彼女だった。


亡くしてしまったことで、より貴重に思えるこの時間に、恋をしたことを気付かされた。


しかし結ばれることはない。


戦争も集結し、平和が訪れても、一度あの世とこの世に引き離された彼らの場所は戻る事はない。


2人はずっと、切ない恋をした。


やがて少年は嫁を迎え、子を連れて、生きて、死んだ。


その時の彼らの感情はどのようなものだったろうか、という話。


とても、子供に聞かせる話ではない。


しかし今考えれば、俺がこの立場になる事を予想して話したのだろう。


中々、悪い女だ。


で、その話のオチだが、彼らは結局あの世で会わないことに決めた。


あとを追ってくる彼の子孫は、彼女と愛し合うことを望んではないないからだ。


俺はそれで良いと思う。


恋をしたからといって、未来永劫、愛し合わなければならないことはない。


悲しむ人間がいる選択をする必要はない。


と、ふと聞こえる。


聞こえないはずの、祖母の声が聞こえる。


「お前の、黒間に対する怨念の熱も、いつかは冷めるのではないのか。」


冷めやしないさ、絶対に。


俺は……。









スイカ割り、ビーチバレー、死体ごっこ。


一通り遊びつくして、私たちは家に帰ることにした。


またボートに荷物と桜庭さんを乗せ、私たちは泳いで帰る。


帰りは梯子が遠くにしかないので、斜めに泳いでそこへ行き、梯子を登って道に上がり、家まで歩く。


約300メートル。


遠いと言えば遠いし、そこまでと言えばそこまでの距離なので、見えてしまった。


「おい弾、家の前になんかいねぇか?」


鳳さんが言う、が、お兄ちゃんは桜庭さんと荷物が乗ったボートを担いでいるため、前が見えないようで、


「あー?そうなのか?」


なんて呑気に言っていた。


結局私たちが家の前に着いた時には、ヤンキーたち、この場合は暴走族と表現しても良いのか、が、たむろしていた。


お兄ちゃんはボートを置き、桜庭さんを下ろし、家に入れた。


エンジン音が夕日に照らされる。


不思議と誰も動けず、桜庭さん以外は結果家の前に立ち竦んでしまっていた。


瞬はこんな場面は初めてだろう、引きつった表情をしている。


ざっと50人ほど。


兄の影響でこういった場面はよく見てきたが、未だなれない。


心臓が過剰にバクバクいって、怖いという感情が芯から伝わる。


と、リーダーのような、一際体が大きくて先頭にいた男が話し始めた。


「……4代目…。」


兄を4代目だと知っていることから、明王を倒しにでもきたのかと思った。


しかし…。


「お疲れ様です!!!その節はお世話になりました!!!」


と、男が深々と頭を下げ、続いて後ろの大勢も


「お疲れ様です!!!4代目!!!」


と大声で叫び、頭を下げた。


「おう、久しぶりだな、えっと…亜流高留アルコールだったっけ?お前は、…勝又、だよな?」


知り合いか?


と考え、思いつく。


もしや九条さんの不良取締月間の時の…。


「覚えてくださっていたんですか!4代目!!」


「当たり前だ、お前ほどの優秀な人材を忘れるわけがないだろう、と、今日はどうしたんだ?」


「いえ、長崎へ来られていると聞いたので、あの時のお礼をと思いまして!」


正直、見直した。


兄がトップとして相応しい人間であると、再確認した。


やはり人から慕われる人間というのは、こういった人間なのだろう、うまくは言えないがな。


「あーー、そんなこと!いや、全然いいよ!言っても俺九条とやった時伸びちゃったしな、うん。」


と言いながら、ちらりと九条さんを一瞥する。


きっとあの男の娘だとバレないように、九条さんに気を使っているのだろう。


「まぁ、皆さんお楽しみのようで、あまり長居するのもアレなんで、俺たちこの辺で失礼します!!長崎は俺たちが仕切ってますんで、なんか困ったことがありましたらすぐにご連絡ください!!」


「おう!頼りにしてる!元気でな〜!」


そう言い合って、彼らは私たちにまで一礼し、また爆音を鳴らしながらバイクで帰っていった。


「嵐のような奴らだな。」


「悪い奴らではない。」


と、例の作戦に参加していた阿部さんと杉田さんが話していた。


「瞬、ビビったか?」


と、笑いながら一果ちゃんの後ろに隠れていた瞬にお兄ちゃんが笑いかける。


「お兄のバーカ!!」


からかわれたりことに怒りながら、瞬は家の中へ入る。


お兄ちゃんたちも、私も、それに続いて笑いながら中に入った。


「なんかあったとね?凄い音してたけど…。」


と、心配そうに叔母さんが言う。


しかし皆事が何か分かっているので、笑いながら


「大丈夫!」


と答えた。


1日目。


叔母さんが作ってくれた夕飯を食べ、皆んな疲れていたのか、ばたばたと倒れるように眠っていた。


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