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第81話 乙女

この日の為に、水着を新調した。


思えば初めて弾と水遊びをしたのは、幼稚園の時だった。


まだ真希ちゃんも小さくて、一緒には入れなかったが。


ビニールプールで私と弾と2人で、ちょっぴり喧嘩混じりで仲良く遊んでいた。


今では私も、弾も大きくなって、ビニールプールでは遊べないし、単純に遊ぶことよりも、アピールとして見ることの方が多い。


弾が買った別荘は、道路を挟んですぐに海。


飛び込んで、泳ぐだけならそこでよし、砂浜などで遊びたければ少し泳いで行けば小さな小島があり、そこが砂浜になっている為、かなりいい場所だ。


何やら弾は桜庭さんも来られるように、きちんと船を買っていた。


船というよりは、小さなボートだが。


ともかく、私たちは1時間ほど泳いだ後、多少の荷物と桜庭さんをボートに乗せ、小島へ向かった。


ビニールシートを敷き、その上に桜庭さんが座り、パラソルを立て、私たちは砂浜でビーチバレーをしたりしてしばらく遊んでいた。


しばらくすると個々で遊びはじめ、男子達は海でやんちゃに遊んでいた。


弾が加わっているのが、私は不思議だったが、はしゃぎきってはいないところを見ると、やはり弾は弾なのだなと思う。


私はふと気になり、疲れてビニールシートの上で休んでいた瞬ちゃんに話しかけた。


「瞬ちゃん、久しぶり。私のこと覚えてる?」


萌も、真希ちゃんも、九条さんも、向こうで遊んでいた為、今が2人で話せるチャンスだった。


「もちろん!一果お姉ちゃん、久しぶり!」


まだ幼く映るその笑顔は単純に明るかった。


「瞬ちゃん前に会った時、弾と結婚するって言ってたよね?今もまだ弾のことが好き?」


ずっと聞きたかったこと。


「うーん…結婚したいとかじゃあないけど、お兄のことは好きだよ!男として!あんなカッコいい男子、他にはいないし!」


「私もそう思いますよ。」


ふふふ、と横から桜庭さんが笑う。


「じゃあ、瞬ちゃんは弾の事を…言い方は悪いけど、その、狙ってるの?」


「もちろん!」


ふんすっと自慢げに言う。


「私、分かってるよ、あの萌さん以外は、皆んなお兄のこと好きなんでしょ?あのブラコン野郎の真希も含めてさ。」


あー…、それで仲が悪いのか。


「…うん。」


変わらず一途だね!


と瞬ちゃんが笑い、私たちは皆んなライバルですね、と桜庭さんが笑った。


私たちに夏を楽しむ余裕は、ない。


「おい!お前ら!スイカ割りしないか?」


そう言いながら、弾が近づいてくる。


いや、やっぱちょっとくらいは余裕あるかも?






小島に着いて、真希ちゃんと遊びはじめてからふと真希ちゃんに言われた。


「宮村さんは、他の女の子と違ってお兄ちゃんのこと好きじゃないよね?誰が好きなの?」


鋭い子だ。


普段は兄同様馬鹿みたいなのに。


いや、失礼か。


だが図星ではあった。


「いや、特に誰が好きとか…。」


と、濁しながら鳳の方を見る。


阿部のことを持ち上げて、海に投げてゲラゲラ笑っていた。


やっぱないな。


「分かった!鳳さんでしょ!」


九条さんが、クスッと吹き出す。


九条さんはエスパーじみたところがあるから、悟られたようで少し悔しい。


「あんなやつ、好きなわけないじゃん。ただ、少しだけ気にはなっていると言うかなんというか…。」


ごにょごにょと、誤魔化す。


いや、誤魔化しきれていないことは自分でもよく分かっていた。


恥ずかしい限りだ。


「宮村さん、鳳くんが好きだったのね。」


と九条さんが大笑いをこらえている。


クッソォ、あんただって黒間にぞっこんのくせに!


と思ったが言えない。


鳳のことが気になっているのは事実だし。


なんでだろう、阿部や杉田もだけど、鳳は特にほっとけない。


あーあ、なんであんなロクでもないやつに私の貴重な青春の時間を割かなきゃならないんだろ。


と思ってあいつを見ていると、横で2人がクスクス笑っていた。


少し腹がったので、海の水をぶっかけてやった。


青春。


………まぁ、今年の夏は、そこまで悪くもないかな?

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