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第80話 転生

そう、黒間大三郎はまだ生きている。


俺が殺したのは、クローンである確率が高い。


…そうとしか思えない。


ほんと証拠もないし、自信もないが、大三郎があそこまで簡単にくたばるはずがないのだ。


なら何故、死んだことにして身を隠す必要がある?


答えは出ないが、少しの推理が頭に浮かぶ。


俺のクローンを完璧に作り上げ、邪魔な俺を消す。


それだけならばいい。


しかし、そうして作られたクローンは大三郎の意のままになる。


英雄が、大三郎のラジコンカーになる。


それだけは避けたい。


そうなってしまうと、黒間が世界を牛耳ることになる。


恐らく、鳳会との全面戦争も避けられないし、真希や一果に危害が及ぶ。


だから…。


「大三郎は、多分生きている。だから、こっちから行ってやろうかと思うんだ。俺にはもう残された時間がない。」


また戦いを続けるのか、とおばさんは怒る。


「いや、違うんだ。大三郎のクローン制作に協力する。そして条件として、俺の脳にある情報全てをクローンに移植する。簡単な話、記憶や意思、力がそのまま受け継がれる訳だから、転生するようなもんだ。」


「あんた本人は死ぬとやろうが!」


キツく言われる。


でも、そんなことは…。


「些細な事だ。世界と俺を天秤にかけるなら、もちろん世界だ。クローン完成時に、俺は大三郎を確実に殺し、研究所も爆破する。これで俺たちの全てが終わる。だからこそ、今は世界中に散らばっているクローンどもを倒して、力をつける必要がある。奴との対戦は、ギリギリでいい。」


何を言っているのか、というような顔をしていた。


大三郎が生きているという仮説が間違いだったにしろ、クローンを倒す目的は初めからある。


白虎がどこか俺の雰囲気を感じて懐いてしまったという前科がある。


真希や一果、鳳がそうならないとは言い切れない。


だからこそ…。


「危険分子は全て、摘んでおきたい。」









弾君が外で話し始めて10分、ここのボルテージは最高潮だった。


「もう全員着替えたか!!??」


「「いえーーーい!!」」


道路を挟めばもう海だ。


車が来ていないのを確認し、走ってそのまま飛び込むらしい。


もちろん私は足が動かないので、監視役だが。


珍しく九条さんもテンションが高く、真希ちゃんや一果さんはもはや踊っているようだった。


最年少の瞬ちゃんは面倒見のいい宮村さんに懐いていて、テンションの高い宮村さんは鳳くんに賛成し、飛び込む気満々だ。


にしても…。


皆んなスタイル抜群だ。


水着のせいか、普段よりもっと可愛く見える。


正直言って、羨ましい。


車椅子もあるが、体が弱いので、水着の上に薄い上着を羽織り、日傘をさすというなんとも地味な絵面になってしまったから。


じゃあ行くぞ〜!


という鳳くんの掛け声と共に、皆が走り出す。


全員ほぼ同じタイミングで海に飛び込んだ。


私も玄関から出たところで、弾君とすれ違った。


「俺も着替えて来ますね。」


と笑って言っていた。


瞬ちゃんのお母さん、弾君のおばさまがそこに座っていたのだが、心なしか涙を流した後に見えた。


私はその横に車椅子をつけ、停止した。


何を言うでもなく、ただ青春のはしゃぎ声と潮騒だけが聞こえる。


今はなんだか、おばさまの涙の真相を、知りたくはなかった。


と、早着替えを済ませた弾君が私を飛び越えてそのまま海に落ちる。


鳳くん達はきゃっきゃとはしゃぎ、殆どノリで楽しんでいた。


私はそれを、微笑ましく見ていた。


と、おばさまがぼそりと私に話しかけて来た。


「あんたは弾の、えっと、彼女さん?」


平生を保とうと必死なのだろう、声がかすれていた。


「いえ、彼に彼女は居ないと聞いていますよ。それに私は、彼に好かれる立場じゃありません。」


「…もしかして、貴方が桜庭美波さん?」


「はい。」


「そう…貴方が…。」


甥を危険な目に合わせた女だ、当然印象は良くないだろう。


もちろん、覚悟の上でここへ来ている。


しかし返ってきた言葉は、


「そう、やっぱ綺麗ねぇ。お嬢様のごたぁ。あ、弾のことよろしくね?あんなんで結構抜けてるところもあるし、変な方向に考えすぎることもあるけん。」


だった。


「色々思うところもあると思うけど、弾が一緒に住むことを許しとる時点で、弾自身は過去のことは流しとっとやけん、あんたもあんまり昔のことは気にせんと、姉に生まれ変わったくらいの気持ちで面倒見たって。」


と笑う。


姉、かぁ。


たしかに、それくらいの年齢差だ。


だが、私は彼に弟ではなく、1人の男性としての感情を抱いている。


はい、と普通に答えたつもりだったがバレていたのか、


「青春やねぇ。」


と笑われた。

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