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第76話 課題

終業式。


学生の、夏が始まる日。


学生の夏と言われてさて連想するものは何だろう。


甲子園、虫取り、恋愛、お祭り、夜遊び。


総称、青春。


青春。


「…にしても…。」


暑い。


今年は特に。


登校前に、玄関先で桜庭さんに会った。


「今日から夏休みですか?」


「はい、今日は終業式なので…。」


車椅子で朝から外に出るなんて、この人は暇なのか?


と、答えはすぐにでた。


ばたんっ、と勢いよく扉が開き、一人の男が出てくる。


「行ってきます!!鍵お願いします!!」


明王は挨拶がある為朝が少し早い。


とはいえ、真希ちゃんも友達と約束があるとかで、今朝は早いようだ。


「はい、行ってらっしゃい!」


笑顔で返事をした、が、弾は見てない。


なるほど。


朝から挨拶をしたいし、鍵をしめるという仕事を任されることを予期していた。


しかし、狭い玄関に車椅子でいると、勢いに任せて家を出る弾の邪魔になる。


だからあらかじめ外に出ていたのか。


……このクソ暑いのに。


「…中々やりますね、桜庭さん。」


出来過ぎだ。


この美貌に、この気遣い。


どこの恋愛マンガのヒロインなんだ。


そして彼女は余裕を含んだ笑みを浮かべてこう言う。


「私は皆さんのように学生ではありませんからね。それにライバルは多そうですし、皆かなり強敵ですし、自信がなくなります。」


一度は弾の心を掴んだ女だ。


その辺りに強みがあるのだろう。


一礼して、私も登校する。


本当に今年の夏は、熱くなりそうだ。









「………………………以上で、明王からの挨拶を終わります。くれぐれも我々の手を焼かすことが無いように。」


はぁ。


やっと平和に迎えられる夏休みだと言うのに、気分は重い。


いや、まだ俺の夏休みは始まっていないのだ。


……真希のやつめ。


「よぉぉーう黒間ぁ。いや、明王かぁ?」


嬉しそうに笑うこいつは去年の俺の担任で、今年度は真希の担任だ。


兄妹揃って迷惑をかけている訳だが…まぁいい。


「冬は悪かったな、北海道の件。」


まずは言おうと思っていたことで話をはぐらかす、が。


「通用しない事はわかってるだろう。」


と笑う。


下品な男だ。


「話はお前の妹、黒間真希についてだが…まぁまず、なぜ三者面談に妹が来ていないのかから問おうか。」


「用事があるんだと、しかも急用だそうだ。」


「信じてるのか?」


「な訳ねぇだろ。嘘だよ、お前に怒られんのが分かってるからこねぇんだ。」


「…相変わらず妹には甘いな、弾。」


下の名前で呼び捨てにされる事は嫌いではなかった。


まさか意識しているのだろうか?と思ったがボサッとした顔を見てないなと否定した。


「で、黒間の成績だが…」


こいつが言うには、中学三年までに取らなければならない成績のちょうどぴったりしか取れていないそうだ。


もちろん学年順位は最下位。


高校からもこの学校には入れるのだが、その偏差値には全く届いてないらしい。


「ったく、兄のお前の方は成績面では心配した事はなかったのに、どぉーーしてこの妹は…。」


「俺が色々心配かけてるのも原因の1つなんだ。ここのところ家を空けることが多かったからな、ほら、俺がいないとあいつは一人だろ?今は違うけどさ、それもあんだよ。」


「それもあるがなぁ、差し引いてもこれは酷い。というわけで、課題を出した。これを提出出来なければ、進級はなしだ。もちろん、スキーもなし。」


「まぁしゃーねーわな。」


おっさんが不敵に笑う。


ちょっとキモくてゾッとした。


「それからなぁ弾。それはあの成績では解けん問題になってる。それを見て黒間もこれは解けんと泣きついた。そこで言ってやったぞ、お前の周りには優秀な先輩が兄を筆頭に沢山いるじゃないかと。」


「テメェ余計なことを!!!」


妹の面倒を見るのが邪魔くさいというわけではない。


ただ…やっぱ邪魔くさい。


夏休みはだらだらして、鳳とトレーニングとかして、夜遊びして、みんなで海とか山とか行って花火とかして遊びたかった!


桜庭さんも…居ることだし、俺ももしかしたら平和に元気に居られる数少ない夏休みになるだろうし。


「その為に俺は命懸けで国を守った金で別荘買ったんだぞ!!俺の野望をどうしてくれるんだ!?」


「別荘か!いいじゃないか!勉強合宿してこい!!!」


ガハハハという笑い声と共に、三者面談は終わった。


俺は夏休みが始まり、夏特有の喧騒の中、おもむろに携帯を取り出してある女に電話した。


「……予定は空いているし、真希さんの面倒を見るのはやぶさかではないけれど、貴方と同じ空間に居たくないから別荘に行くのはちょっと懸念するわ。」


だからなんでテメェはそれを知ってんだよ。


「…というか、今貴方の家にお邪魔しているのよ、一果さんや鳳君たちと一緒にね。桜庭さんたちと夏も始まったことだし、今日はパーティーをする事になったのよ。なので今日は泊まらせていただくわ。」


「お前、今日はよく喋るな。」


「…夏も始まったし、機嫌がいいのよ。」


そないか。


平和な日常に感動し、来たる勉強合宿の準備の事と真希を叱ることを考えながら、俺は帰路に着いた。

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