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第74話 認識

学校とかで、休んだ次の日に教室に入るのには抵抗がないだろうか。


小学校くらいの時までは、俺にもあった。


輪の中から、出された様な感覚、いや説明しきれない、なんとも言い難い感覚。


でもいざ入ってみれば、まるで休んでいた事実がなかったかの様に輪の中へ迎え入れられる。


しかしそもそも、輪の中からは出ていなかったのだ。


よくある誤解だが、人が作った縁というものは、そう簡単には切れない。


縁が繋がり輪になればもっとだ。


…いい縁も、悪い縁も同じ事なのだが。


兎に角、縁というのは簡単に切やしないから、無駄な心配に終わるのがさっきの話だ。


しかし、その縁というものの認識をお互いが違えた場合、その縁は別物になる。


簡単な話、親友同士でも喧嘩をしてしまえばあっという間に敵同士という名の縁になる。


まぁそんなところ。


つまり縁とは、お互いの認識があって初めて成立するのだ。


俺と桜庭さんの縁は、お互いに想い合っていた両想いという名の縁だった。


やがて彼女の認識はターゲットとなり、俺の認識は敵となった。


今、まだ彼女との縁が残っているが、俺の認識は確実に敵ではない。


…敵という認識を無くすために、命を賭けたのだ。


だが次の認識が分からない。


答えが出てこない。


こうやって、縁というのは切れていくのだろうか。












そりゃ惚れ直すわ、という出来事があった。


説明するまでもないだろうが、明王は私の命も、運命も救ってくれた。


私は1人の男としての黒間弾も、明王としての黒間弾も、彼の何もかもを愛している。


恋している。


しかし、この感情は報われない。


報われるべきでもない。


私は想い人を裏切ったのだ。


快気祝いのパーティーに参加して良いものかも、散々悩んだ。


結果彼の妹の黒間真希に背中を押され、出席することになったが、正直怖かった。


案の定、彼はパーティーが終了し、皆んなが片付けを始めた時に私を呼び出した。


屋上まで車椅子を押してくれた彼は、やはり鬼とは思えぬ程に優しかった。


そういえば、泣いた赤鬼だったか、そんな物語に登場する青鬼は彼にそっくりだなと、笑ってしまった。


屋上に着くと、彼は私に頭を下げた。


「桜庭さん、危ない橋を渡らせて本当にすみませんでした!」


深々と下げられたその頭は、今は1人の黒間弾のものだろう。


「いえ!こちらこそ謝らなければならない事だらけです…。黒間弾くん、本当に…本当に、本当に申し訳ありませんでした!!!」


私は車椅子から転げ落ち、土下座をし、頭を地に打ち付けた。


彼は慌てて頭をあげてくださいと叫んだ。


「お互いに、謝罪合戦を始めてはキリがない、水に流そうとは言わないが、そこは2人で乗り越えた事にしましょう。」


と彼は笑った。


懺悔すべきは、今もまだ彼と相思相愛の関係で居られるのではと期待していた事だった。


罰は当たるものだ。


「…桜庭さん、謝罪でどうにかなるものではないが、今俺はスランプなんですよ、感情に名前を付けることの、感情の正体を知ることの。だから今俺が貴方に抱いている感情が憧れなのか、物欲なのか、恋か愛か、全く検討もつきません。」


追い詰めたのは私だ。


責めるどころか、責任さえ感じている。


「…もう前までの様に、急ぐ必要はない、だから少しだけ、俺に時間をくれませんか?俺が貴方にどんな感情を抱いているのかを確認する時間をくれませんか?」


「もちろん構いませんよ、寧ろ敵意以外の感情であることに安心しているくらいです。」


そう言って笑った。


「…以前、貴方に抱いていた感情は確かに恋であったと思います。しかし、今抱いている感情はあの時とは違うんです。これが愛なのか、はたまた敬意なのか、情なのか、それが全く分かりません。」


かつて恋されていたという事実に、気分が高揚する。


「…いつまでも待たせていただきますよ、弾くん。ただ、1つだけ言えるのは」


そう間違いなく。


そこだけは、なんの疑いもなく。


「私はあの時も今も、変わらず貴方に抱いている感情は愛に違いありません。それも恋の方の、恋愛感情です。」


そう言って笑うと、彼の頰が紅色に染まった。


あどけなさは、やはりまだ高校一年生だ。


「それから提案なんですが…。」


彼はなんと、不便な車椅子生活に身寄りのない私の事を心配し、彼の家に住む事を提案してくれた。


断ってはみたものの、内心はそうしたくて仕方がなくて、結果その提案を受け入れさせてもらった。


恋敵は多い。


それに強敵ばかりだ。


これだけは負けたくないと、彼の無垢な笑顔を見て私も笑った。

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