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第70話 賭博

今まで出会った人間で、俺の為に死ねと言う奴は居なかった。


皆が言うのだ。


死ぬなと。


死にたがりではないが、死に急ぐ俺に、死ぬなと一言。


なんと病院から出てきた俺に説教を垂れた奴もいた。


居なかったから、それが当たり前だと感じていた。


かつての敵たちも、俺に敵意はあれど、自らのために死ねと言う人間は1人だっていなかった。


誰かのために死ねと言った人間はいたがな。


ともかく、それを当たり前に感じてしまっていた自分が恨めしい。


馬鹿なのだ、救えないほどの。


元々忌み嫌われて生まれ落ちた俺が、いつからか“誰かの為”に生きようとしていた。


そして誰かも、俺のことが“必要”だと思っていた。


なんの茶番なのだろうか、思い出せば恥ずかしくなる。


彼らは善意で言っていたのだ。


「お前が必要だ」


と。


そのほかに選択肢がなく、仕方なくそれを言っていた訳ではない。


詰まる所、俺は必要がないのだ。


そんなところに言われた。


お前がしたいようにしろ、思うがままに生きろ、と。


そうさせてもらおうか。


ねぇ桜庭さん。


貴方は、俺と九条との賭けで、俺が負ければ死ぬんだ。


ならさ、桜庭さん。


おれが賭けに負ければ、俺と、かつて貴方がしたいと言っていた青春を、あの世で送ろうじゃないか。


そうだな、題名をつけよう。


“死神と女神、あの世でのアバンチュール”


………この映画はきっと、ヒットしないだろうな。












首元を食いちぎったとはいえ、流石は悪魔、人間のように血飛沫をあげない。


ピュッ、ピュッと血が出ているが、その程度、魔眼の回復力が勝るだろう。


勝ち目が見出せない。


「一応、最悪の場合のことを考えたわ。」


九条に言われたことを思い出す。


「なんの話だ?」


襲撃前の教室。


授業中に珍しく九条が話しかけてきたのだ。


「桜庭さんを救うって話。でもこの方法はかなりリスキーよ。外せば貴方に明日はないわ。」


「あぁ、構わない。1%でも可能性があるならば、俺はもちろんそれに全てを賭ける。」


そう言うと思った、と九条の顔には書いてあった。


「…なら私と貴方の賭けよ、黒間弾。私はこの方法は成功しないに賭けるわ。この作戦には、そもそも作戦自体が成立しない可能性すらあるのだから。」


まるでこの策には乗るなと言っているようだった。


悪いな、九条。


お前を巻き込む気は無かったのだ。


「なら俺は成功する方に賭ける。で、どんな作戦なんだ?」


「悪魔との契約の内容は、悪魔が死ねば桜庭さんも死ぬし、桜庭さんが死んだとしても、悪魔は貴方を殺すという使命を自らが死ぬまで遂行するのよね?」


「そうだな。確かそれであってる。」


「ならば先に桜庭さんを殺すのよ。」


愚かな提案に、俺は九条を睨みつけた。


本気で睨みつけた。


「…何言ってんだテメェ?」


「殺すと言っても、仮死状態にするの。幸い彼女は病弱よ。瀕死ではダメなの、仮死状態にするの。要は再生可能な範囲で一度殺すのよ。」


「仮死の意味くらい分かってる。なぜ殺すんだ?馬鹿なのかテメェは。殺したくねぇからその方法を頼んでんだろうが。」


「最後まで聞いて。一度彼女を仮死状態にすることで、彼女は死んだ扱いになる。彼女の体から呪印は消えるはずだわ。残るのは悪魔の使命だけよ。」


言いたいことを理解して、寒気がたった。


俺は臆病者だから。


「仮死状態からもう一度命を吹き返すには制限時間があるわ。その限られた時間の中で貴方は悪魔を殺すの。で、彼女を生き返らせる。そうすれば悪魔だけを殺すことができるわ。要所は、そもそも仮死状態で彼女の体から呪印が消えるのかどうか、それから制限時間内に悪魔を殺せるか。」


狂ってる。


いや、なんてやつだ。


感心すらする。


「ポイントを伝えておくならば、先に悪魔を瀕死の状態まで追い込むことね。殺してはダメ、ギリギリの状態で桜庭さんを仮死状態にし、悪魔にとどめを刺す。これが私に浮かんだ中での最善策だわ。」


ハハッ。


ハハハハッ。


「ハハハハハハハハッ!ハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」


騒がしくて俺たちの会話が聞こえない、明王院にしては珍しい光景の教室が静まり返る。


それでも笑いは止まらない。


「アハハハハハハハハッ!アッハハハハッハハハハ!アーッハハハハッ!アーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!おい九条!お前狂ってるよ!なんだそれ!アーッハッハッハッ!可笑しくて堪らないわ!!」


いつものしてやったりといった顔で微笑みかけてくる。


「その狂った女の賭けに乗り、その狂った案に賭けたのは貴方よ。私から見れば、よっぽど貴方の方が狂ってるわ。」


間違いないな。


さあ。


界の体力は今どこまで落ちただろうか。


魔眼が出ている時点でまだまだだな。


「今はまだ長くなっても、どこまでも付き合うぜ、界…!」


「こいよ、弾。お前らの作戦は上手くはいかない。」


いやいや、だからなんで知ってんだよお前。


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