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第68話 二の舞

目にも留まらぬ速さ。


いや私の目が悪いだけなのか。


とにかく、レベルは高いなんてもんじゃなかった。


退院し、その足で明王院学園へ向かった。


弾君が登校していることは知っていたし、ケリをつけるならここしかないと思ったから。


…今日が私の命日だ。


上手くいけば、彼の命日にもなる。


性格の悪さがにじみ出る。


あんなに幸せそうな彼を見てもなお、やはり自分と彼の命日が同じになればいいのになんて思ってしまう。



どこまでも、彼と一緒に在りたいのだ。


彼と私では違い過ぎるのに。


さておき到着すれば明王が登場する。


彼を死ぬほど愛する盾であった界さんが、明王の顔を殴り飛ばす。


彼の体は吹き飛び、鈍い音と共にビルが崩れた。


あぁ、始まってしまったか。


私は安全な場所へ身を隠す。


とは言いつつも、安全な場所などないので周りの人間が避難した場所…明王院学園へ向かう。


戦いに目を通す為、全てを見渡せる、そしていつかを彷彿させる屋上へ行った。


驚いたことに、屋上には今の彼の仲間たちが居た。


あぁ、やられるな、と思ったが彼らは私を一瞥しただけだった。


すぐさま黒間弾の心配をしたのだ。


爆発音が鳴り響く。


果たして私は、こんな運命がなかったとして、この輪の中に入れていただろうか。


…叶わぬ仮定が多過ぎただろうか。










奴から受けた1発で冷静になる。


俺は明王だ、と言い聞かせる。


桜庭さんの避難を確認し、覚悟を決める。


「一つ聞きたいんだが。」


黒間界に語りかける。


「なんだ。」


雰囲気が前までとは違う。


仮面を外したことで、ようやくありのままの奴を見られている気がする。


長くは見られないが。


「お前は俺を救う立場に回り、運命が変わった。己の為に奔放に生きていたのが、俺のために奔走する羽目になった。挙げ句の果てには悪魔に成り下がり、庇っていた人間に拳を向けられる始末だ。」


申し訳ないとは思っている。


状況がこんなでなければ、俺は命を差し出していたかもしれない。


「…煽るつもりで言っているのでない、本気で知りたい、今どんな気分なんだ?俺には分からない。分からないことがこの上なく…悲しい。」


界は優しく微笑みかける。


かつての俺に向けたように。


殺意に満ち溢れた印象は、悪魔の契約によって消えた記憶を取り戻すことにより、暖かくなっている。


「お前も同じなんじゃないのか?」


「え?」


「いやだから、お前も俺がいなくなってからは、この世に裏切られてばかりだったんじゃないのか?実際、俺もお前を裏切るような形で居なくなったわけだ。もちろん俺としては、あの白虎のガキと同じ意見だし、お前は孤独に世の中と戦っているように見える。」


そんなつもりはない、が、“つもり”なんて言葉に力がないことは、根拠がないことはよく分かっていた。


「……俺が今どんな気分か?教えてやるよ弾。心配さ、あぁ、狂いそうなほどに心配だ、弾。お前が俺の二の舞になりそうだからな。確かにお前は天才だ、俺とは出来が違う。でもな、お前は俺やお前の親父によく似て、大切なものを守る為に周りが見えなくなる。」


「俺は、あんたの二の舞にはならない。全てを無にして、終わるつもりだ。」


「その時点で駄目だと言っている。俺は知ったこっちゃないが、お前は黒間の娘や幼馴染っ娘、親友に後輩が大事なんじゃないのか?あいつら、特に妹ちゃんなんてお前が死ねば後を追うぞ。」


片隅にはあったかもしれない。


いざ言葉にされると、息がつまるほどの重さがあった。


「…そうならないように、手は打っておく。」


「浅はかなんだ、弾。黒間の娘は、お前の予想を超えるぞ、お前が俺の予想を超えたようにな。」


言葉が出ない。


いや、出す言葉がない。


「なぁ弾、諦めろよ。お前は英雄だ。だが世界を変えることはできない、誰1人守ることはできない。お前1人が助かることすら危うい。」


とっさに界を殴り飛ばす。


奇眼は呼応させたままだったので、奴の体は吹き飛び、ビル一つを破壊した。


だが奴は何もなかったかのように立ち上がり、体についた埃を払う。


「魔眼……。」


「弾、お前の意見もわかる。でも今ならまだ間に合うのも確かなんだ。考えてみろ。お前は英雄だ、運動神経も抜群で、明王院学園へ入れる程頭脳明晰だ。ルックスも抜群、明王の国家契約のおかげで金もある。素の性格は少しばかり抜けていて面白い。モテないはずがないだろう。」


魔眼は煌々としている。


「普通の学校へ転校しろ、そうだな全寮制だとなお良い。そして今の仲間のことは全く忘れてしまえ。過去も全て忘れてしまえ。そうすればな弾、幸せになれるぜ、考えてみろ。お前が彼女を持ち、平凡な学生生活を送り、終いには結婚して、親になって、孫を持って、平凡で、でも穏やかで幸せに死んでいくんだ。争いなんてない、今みたいに不幸でもない!頼むよ…黒間に責任を感じる必要なんてないんだ。」


俺はさらに界を殴りつけ、崩れたビルの瓦礫に押し込み、馬乗りになる。


「ふざけんな!俺は今幸せなんだ!!最高の家族がいて、最高の仲間がいて、それで!!」


過去なんて忘れられるはずがないだろう、お前や親父におふくろ、ジジイ達。


愛された記憶を消してまで。


「…他の誰かに愛される為に人生かけられるほど、俺の人生はクソじゃない。」


不思議と涙が溢れる。


ポロポロ、ポロポロと、止まらず、それは界の目元に落ちて、界もそれを流す。


「じゃあなんで泣いてんだよ、お前。揺らいでるじゃないか。…揺らいでんじゃ…ねぇか。」


「うるせえ!!!」


叫び、さらに界の顔を殴りつける。


2発、3発と何度も何度も。


「これからの未来は、あまりにも酷なんだよ!弾!なぜ分からない!」


「分かるかよ!俺を捨てた奴が!今までも死ぬ思いをしてきた!あと何度死ぬ目に逢おうが、慣れたことなんだよ!命が短い?平凡に死ねない?知らんわそんなもん!!真希を、一果を、鳳を!白虎や九条を!!愛し抜いて死ねたという事実があれば、俺はそれで良いんだ!」


「この分からず屋が!!!」


そう叫び、界は俺を殴り飛ばす。


俺の体は真上に上がった。


いや、殴られた部位もひどく痛む。


他の何処かも、同様に。


「くそったれが!」


下から声が聞こえる。


同時に、火の玉も飛んでくる。


俺の出す火の玉とは比にならないほど大きな、火の玉。


防御する気にもなれず、俺は火の玉に突っ込む。


体のどこかが燃えている気がするが、関係ない。


空中から、瓦礫の上に立つ界の元へミサイルのように落ちる。


界は回避し、俺は地面へ突っ込む。


瓦礫を押しのけ、コンクリートも突き破った。


頭から血が流れて邪魔だ。


捨て身で良い。


俺は生まれて初めての、親子ゲンカを体験している気分だった。


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