第62話 原因
白虎が言っていた、一果や真希がどうたらこうたら、という話を思い出す。
まぁ、愛があるから、それこそが幸せだから、なんて、二言目には“理屈じゃない”なんて言うけれど、理屈のないことなんてないのかもしれない。
思考する。
何故俺は幸せだと感じているのか。
真希と一果がいるから。
その他にも最近なら、鳳やまぁ九条も。
仲間と言える人間たち。
全員が欠けることなくいるからだ。
ならば何故、あいつらが居れば俺は幸せなのか。
アンサーは、孤独でいる恐怖を知っているからだ。
生まれ落ちた時からはみ出し者で、愛など覚えてもいなくて、全ての人から忌み嫌われ、“黒間”なんて悪口を浴びせられ。
俺を擁護する人間なんて誰1人居なかった。
遡れば、存在はしていたのかもしれない。
だが俺は、それに気づくこともないほど、世界の絶望に堕ちていた。
道標になったのは、桜庭さんだった。
その人も失くした。
だけど、その人のおかげで、身近に俺を孤独から守ってくれる人がいることに気付いた。
だから…だから俺は、幸せなのだ。
俺は、俺は幸せなんだ。
ほら、説明がつく。
理屈で、言葉で、説明がつく。
なのにどうしてだろうな。
白虎に言われた言葉に、完璧に対抗できている自信がない。
それに、まだ伝えられていない想いが、喉につっかえている気がする。
当たり前か。
俺が、俺自身が、“幸せ”と言うものを完璧に理解………いや、それについて全く知らないのだから。
壁に囲まれた世界から、声が聞こえる。
白虎が言った言葉は、私の胸に突き刺さる。
消費豚、か。
確かにその通りだ。
弾はこれ以上ないほど、私に平和を、安寧を、そして幸福をくれている。
でも、私が弾にあげられているものはない。
恋心こそ持っているものの、伝えることすら出来ていない。
そんなの、無いに等しい。
壁の中で、弾が身体から蒸気を噴き出し、殺気のこもった眼で白虎に向かう。
拳がぶつかり合い、お互いに体力を消耗する。
やめてよ、そんなこと…。
悲痛な願いも、聞こえる事はない。
仲の良かったあの2人が、殺し合う。
またそんな、不幸な状況が弾を襲う。
いつもは原因は黒間であったり、策略であったり、少なくとも私には関係なかった。
しかし今回は、原因は私。
完全に、私。
ダァァァァァァァァン!!!
考えているうちに、白虎が自ら作った壁に打ち付けられる。
弾が白虎を殴りつけていたのだ。
かつての後輩を、ふき飛ぶほど。
白虎も、負けじと弾に向かっていく。
力強いが大振りのその拳を、弾は紙一重でかわす。
かわされた拳は止まる事なく地面に突き刺さる。
地割れ起こし、その隙にまた弾が白虎を殴りつける。
蹴りつける。
その度に白虎はダメージを受けるが、白虎の拳もたまに当たってしまう。
力任せなだけあって、1発で弾を沈める。
弾も流石と言うべきか、ダメージを受けつつも立ち上がり、続けて応戦する。
次第にエスカレートし、弾は口から火を噴き出し、白虎もかつての拳法を使用しだす。
互角に渡り合っているのか、殺さぬようにどちらかが手を抜いているのか。
ふと、弾の眼から血涙が流れていることに気づく。
それは白虎も同じだった。
2人とも、体をボロボロにしながら互いの意見をぶつけ合う。
私には、それすらも出来ない。
主張すら出来ない。
もしかしたらそれは、自分の意見に対して自信がないからなのかもしれない。
強くなりたい。
初めて、そう感じた。
目の前で、弾が今度は手に火を纏い、体に火を纏って攻撃をしている。
白虎も、風を操って応戦している。
あのバカが、ここまでくるまでには、一体どれほど努力をした事だろうか。
憧れの存在と渡り合えるまでになるには、どれほどの……。




