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第5話 鳳編 序章

私がこの組に入ったのはもうずっと前のことで、その頃から私は先代の弟にあたる鳳大輝様におつかえしてきた。


先代である一輝様は天下一の極道とも言われる鳳組の組長…だった。


彼の8歳下である大輝様には両親もおらず、一輝様も忙しい身であり、構う時間が少ないということで養育係に私が配属された。


5つ程しか変わらぬ私達はまるで姉弟のように見えていただろうが、それは全くもってありえない話だった。


あくまで私は大輝様の養育係にして側近という立場だったので、今までずっと敬語を使わなかったことは無い。


従わなかったことも無い。


だが大輝様は、養育などはなくともとても素直で優しいいい子だった。


兄である一輝様を慕っていらしたし、私にも側近、としてではなく姉のように接してくださった。


しかし今では、もう面影すらも感じ取れない。


全てはやはり、あの忌まわしい眼が開眼してしまったからだろう。





鳳一族は、昔からその名の通り鳳凰を操る一族として恐れられてきた。


炎を使い、まるで鳳凰のようになっていく俺たち一族が世間から疎外されるのは当然だったのだろう。


その頃から俺たちは、極道という生き方を強いられている。


俺は今、そんな鳳組の組長だ。


俺は昔、事故…として扱う事件で両親を亡くした。


まだ15だった俺の兄である鳳一輝は、俺に側近として近衛冴香を置いてくれた。


彼女は昔から群を抜いて綺麗だ、とは思っていたが、最近ではモデルやアイドルになった方がいいのでは、と思うほどだった。


俺はそんな彼女に親近感を抱き、姉のように接していたし、兄は兄で貴重な時間を俺に割いてくれたので、幼い俺は慕っていた。


そんな日々が5年続いたある日、兄の一輝はもう12になった俺を呼びつけ、話がしたいと頼まれた。


別に暇だった俺は聞くことにした。


「なぁ、大輝。お前ももう12になったし、これから先にどんなことがあるかは分かりなどしない。ただな、大輝。この組は鳳一族の組なんだ。構成員が他の組の人間でも何の問題も無い。」


12の俺が聞く話ではなかった。


「でもな、大輝。きっと先代達誰に聞いても、組を最優先にするだろうが、俺は一番お前が大事だ。」


兄の目は、怒りも、悲しみも、心配も、全てを含んだような目をしていた。


「これから先、俺がどうなろうと仲間を…そうだな、お前の場合は近衛とか、あいつらを絶対に信じろ。そして、お前はそれを大切だと思えるようになってくれ。」


まるで兄はもう自分はいなくなるかのような口ぶりで話を進めた。


「お前は紛れもなく鳳一族で、俺の弟だ。組の経営には常に細心の注意を払い、近衛達とうまく連携を取り合って、いつかみんながみんな、大切なものを守れるようにしてくれ。」


そう言った兄は涙を流し、笑ってごまかしたあとは俺たちは他愛も無い話で談笑していた。


その後、兄はまるで運命に従ったのだ、とでも言うように死んでいった。


事故として扱われる…大きな事件だった。


まだ12歳だった俺は家族を皆失い、絶望に打ちひしがれていた。


ただ兄の、たった一言、


「仲間を信じろ…。お前ならそうだな、近衛とか…」


という言葉を思い出し、俺は姉のように思っていた近衛に頼った。


あの時の俺はまだ、やはり12のガキだった。



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