第31話 黒間五歌
功績。
それは大きければ大きいほど、人生にハンデをつくる。
実際、俺が今回の総理暗殺や黒間組襲撃という大事件を起こした首謀者だとしても、やはり黒間会を本家から壊滅させた英雄なので、きっと明王に復帰出来るだろう。
黒間組も大事件と言えど、功績の部類なのかもしれないし。
俺が総理である真中を殺した事で、新たな総理が就任したようだ。
その男が真中のようなクズではなく、きちんと国を、民を思いやってくれる人間ならいいのだが。
俺も少しは考えなければな。
鳳が来た時点で、屋敷の外では野次馬が埋め尽くし、サイレンも喧しい程鳴っていた。
報道のヘリも上空では飛んでいるので、きっと世間ではちょっとしたニュースになっている事だろう。
“前明王で総理暗殺の黒間弾は生きていた!”
いかにも連中は食いつく内容だ。
逃げられやしない。
真希や一果は勿論、もう色んな奴に俺の存在はバレてしまった。
計画ではサッと殺して、報道が来る頃には姿を消すつもりだったのにな……。
黒間会。
かつて国を二分していた、大勢力の黒間一族と鳳一族。
その黒間一族の末裔が時代が進むにつれ凶暴化し、暴力団と化した大勢力。
そんな黒間会の会長、黒間大三郎の長男、黒間四歌の一人息子として生まれた。
本来ならば、俺が黒間会を継ぐことになっていたはずだ。
なのに、俺が物心つく頃に生まれた弾に青眼が宿っていた為、黒間会の人間は掌を返した。
おかしいだろう。
弾の父、黒間昴は次男なのだ。
さらに言うなら、その息子ともなれば、確実に継ぐことは出来ないはずだ。
黒間は代々そうして跡継ぎを決めてきたのだ。
それが青眼というたった一つのアドバンテージで覆された。
俺にはそれが許せなかった。
俺も生まれてからずっと、それなりの教育は受けてきた。
黒間以外で生きる事など許されやしなかった。
なのに……あろうことか弾の一家は黒間から逃げたのだ。
もうこうなってくれば恨みすら芽生える。
でも…仲良くしたい気持ちもあったんだ。
なんてったって従兄弟だから。
そんな時に、弾の両親、黒間昴が死んだ。
天涯孤独となった弾の才能は既に開花しかけているという事だった。
必然だったのだろう。
弾の跡継ぎ案が再浮上した。
子供の頃の俺は、たまたまそれを聞いてしまった。
そう……本当、子供だったんだ。
だから、嫉妬と恨みと後悔と、様々な感情を弾の大切なものを傷つけるという形で表現した。
「親を一気に2人もなくした気分はどうだ?黒間を蔑ろにするからこんな事になるのだ。少しは自分達がどれだけ愚かか気づいたか?」
今思えば本当に酷いことをした。
なのに……弾は俺に反論すらしてくれなかった。
相手にしなかったのだ。
時が経ち、弾が黒間を潰したことを知った。
俺も黒間組を立ち上げ、組員も俺に忠誠を誓ってくれだした、まさにこれからという時期だった。
弾は明王という立場に立ち、様々な権力を持つと聞いた。
弾が青眼を開眼したと聞いた。
弾が大阪を統一したと聞いた。
どれも自分の事のように嬉しかった。
弾に近づく、不穏な輩がいることを知った。
そして思った。
“今が懺悔をする時ではないのか?”
なので俺は真中に雇われた。
ポストを俺で埋めておいた。
だが予想外のことが起きた。
「中継!中継繋いでおります!こちら官邸前!現在確認出来ているのは、総理大臣の真中首相は死亡!犯人と思われる黒間弾は、その妹である黒間真希の手によって絶命したと思われます!」
弾が……死んだ?
耳を疑った。
いや、世間を疑った。
吉と出た。
組員に調べさせると、弾は身を潜めているだけだと分かった。
なら……あいつはここへ来るか…。
嬉しかった。
やっと復讐してもらえる。
罪滅ぼしが…やっと出来る。
だが簡単に殺されては、いけない理由が俺にはあった。
守るべきものが、今の俺にはあったから。




