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第22話 覚醒

目の前で、想い人が胸から血飛沫を吹いて倒れた。


綺麗に仰向けに倒れた彼は、なぜか吹っ切れたような表情をしていた。


だからかもしれないが、私は心配することも、動揺することも無かった。


いや、動揺くらいはしたかもしれない。


けれど、大丈夫だよね……。


どこかで、心の隅の隅で、安堵があった。


だから見ることが出来た。


総理大臣の、正義を装う真中は…


笑っていた。







目の前は真っ暗になる。


胸に少しばかりの痛みを感じる以外は、ほとんど何の感覚も無かった。


鼓膜が破れそうなほどの鼓動の音が聞こえる。


だんだんその音が小さくなってきたので、あぁ、死ぬのかな、なんて呑気に考えていた。


真中だけ殺すつもりだった。


自衛隊に重傷を負わせたのは、駄目だったな…。


一果は大丈夫だろうか。


真希は…俺を恨んでいるかな、


ドクン、ドクンと、小さくなりつつも大きい鼓動の音は頭痛を引き起こす。


流石に耐えられない程の痛みに襲われる。


頭がいたいっ……。


胸がいたいっ……。


眼がいたいっ……。


何より……このまま死ぬのが怖いっ…!


何とも言えない恐怖に襲われた。


真希たちをこのまま遺して死ぬのは、、


「やっぱりお前は、間違ってるよ。」


走馬灯のように、鳳の声が聞こえた気がした。


あぁ、お前の言う通り、あそこで考え直しておけば良かったか。


「何がしたいんだよ…。」


何だったんだろうな、結局俺は何のために生まれてきたんだろう。


この眼のせいで、真希にも…一果にも…お前にも迷惑かけたな。


「正気か……?」


お前らに、少しでも贖罪ができたかな。


ふと、両親の姿が浮かんだ。


「親父……お袋……。」


2人は、うっすらと、やがて消えてしまった。


後に残った俺の手を握る、小さな真希が居た。


「お兄ちゃっんっ…うっ…。」


真希は泣いていた。


「真希…どうしたんだ…泣くなよ…。」


それでも真希は泣き続けた。


リアルな走馬灯もあったものだ。


「お兄ちゃん、私はみんなと笑っていられると、それだけで幸せなんだからね?」


大きくなった真希は俺に言った。


「そうか。なら俺も頑張らなくちゃな。」


「そこにはお兄ちゃんも居なくちゃ駄目なんだからね?」


それも…叶わないか…。


そう思った刹那、また泣き崩れる真希が浮かんだ。


ここで死んでちゃまた真希を泣かしてしまう。


起きないと…。


起きないと……、


起きないと…!!!



パチリと目が開いた。


胸が痛い。


頭も痛い。


煩いほど鼓動も聞こえる。


焦る顔の真中も見える。


俺はゆっくりと立ち上がった。


「なんか一日中寝たあとに起きたみたいだ。やけに目覚めがいいや。」


「な、…何だその眼は!?」


真中が焦ったように聞いてきた。


俺の眼には、青眼とも呪眼とも違う眼があった。


ふだん白目である部分が真っ黒で、ふだん黒目になっている部分にまるでダイヤモンドリング(皆既日食)のような、金の指輪のような、そんなものになっていた。


「呪眼が覚醒したみたいだ…。そうだな…奇眼とでも名付けるか…。」


そう言って真中を睨みつける俺は、既に理性を失っていた。


「全員……殺してやるよ…。」


そう言って微笑んだ瞬間、俺は真中に向かって走り出した。

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