第16話 足りないもの
今まで15年生きてきた。
学んだものは、人など誰も信じられない、ということ。
自分の知り合い連中を守る為に動く。
だけど、いつ裏切られるかなど分からない。
警察も、俺が黒間というだけで今まで暴れても出てきたことはなかった。
まぁ、今では明王という理由があるのだろうけど。
俺はただ、平穏に暮らしたいだけだったのに。
「今なら謝ったら許してやるからよ…。俺らもお前みたいなふかしたやつ相手してる暇ねぇんだ。」
絡んできた不良達の中で、リーダー格の男がそう言った。
「ビビってんのか、おい。偉そうにしてっけど、テメェらも雑魚じゃねえか。」
「アァ?」
思惑どおり、キレてくれた。
「覚悟しとけよ…テメ。」
リーダー格の男が言う。
ブンッ!
握りられた拳が俺の頬のスレスレの部分で通った。
当たれば……まぁ痛いだろう。
「コラテメェ!」
「雑魚だな、雑魚中の雑魚だ。」
鳳は不良連中の雑魚達の相手をしていた。
まぁ、リーダー格の男といえど、所詮は弱いグループだ。
「よそ見してる場合かよ。」
ゴッ!という音と共に脛のあたりに鈍痛が走る。
だが、以前鳳とやりあったときのダメージの方が痛かった。
アレはキツかったな。
思い出したら、笑えてきた。
「フッ…」
「何笑ってんだ、テメ。」
「いや、思い出し笑いだ。悪りぃ。」
「なめやがって…クソガキ…!」
男の右手がまた俺の顔に迫る。
鳳の拳と比べたら、迫り来る速度が遅い。
寸前でかわすと男はバランスを崩し、前にのめり込むようにフラフラとした。
下半身の筋肉が足りない。
考え口もなしにフルスイングをするから、こんな事になる。
これなら、跳びながらフルスイングすれば、バランスを崩すことは無い。
まぁどちらにせよ、この男にそんな器用なことは出来ないだろうが。
バランスを崩したこいつの腹部に、1発重たい拳を下から上に叩く。
ドスン、と鈍い音がする。
喧嘩の基本だ。
まずは動きを鈍らせられる攻撃を与える。
例えば関節とか、腹部とか。
いきなり急所を狙い撃ちしては、外してしまった時に、自分が不利になってしまう。
「う…ふっ…ぐっ…。」
案の定、動きは鈍った。
だが、想像以上に痛がり、動きは鈍ったというよりもう止まってしまった。
これでリーダー格とは、笑わせてくれる。
低くきた顔に、俺は膝蹴りを入れた。
トドメとなった。
ガクッとオチた男を見下げ、
「割と、俺も鍛えられている…かな?」
「おう、俺に感謝しろよ。」
振り向くと、鳳が三、四人の上に立っていた。
流石に雑魚連中に負けるようなやつでは無い。
「完勝じゃないか。くぐってきた修羅の差…か?」
と言ってケタケタ笑っている。
「まだ全然くぐってねぇよ。これからだ、これから。」
見ていた奴らが、ざわめき出す。
この場所きた第二の、目的。
「おうおう、オメェら、なかなか腕がたつじゃねえか。」
ワラワラと、不良どもが集まりだす。
「だろうなぁ。お前らでは太刀打ちすらできないだろうな。」
「自信に満ちてるねぇ新参者ォ。」
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夕日が眩しい。
もう、集まっていた奴らはいない。
鳳は凄い奴だな、と思う。
能力を一切使わず、こいつは20人程の不良を叩きのめした。
「相変わらず凄いなテメェ。能力を一切使わずに40人くらいを瞬殺しちまうんだからな。」
鳳はそう言うが、俺なりに反省点は見出していた。
「まだまだ、強くならないとな。」
向上心なくしては、成長はない。
斬刃値も、呪眼を手にいれ、完成させなけらばならない。
「やる事は、まだまだある。」
こんな任務で、時間を取っている場合では無い。




