第14話 動き出す陰謀
鳳と黒間が手を結んだ。
その一方は驚くほど早く伝えられた。
俺は、口元がとても緩んだ。
武力で融通のきくこの世の中で…
青眼と赤眼が、手を結んだ?
「日本は…世界一になれるぞ…」
「俺も国と協定を結ぶよ。」
そう言った鳳と俺はまた官邸に来ている。
「は?」
俺は耳を疑った。
あれ程、誇りがなんだプライドがとか言ってたやつが、何故国の犬に自らなるのか。
「いや、だって、国は今すぐにこの赤眼が欲しいはずだろ?俺と協定を結べばいくら鳳組といえど手は出せまい。
これも組を守る為だよ。」
と言ってこの男は笑った。
「では、この書類にサインしてくれるか?」
総理の真中は鳳に言った。
やはり忌まわしい集団の長と手を結ぶのは嫌なようだ。
好きに目を使える。
この条件には勝てなかったようだが…。
「今日から君は明王補佐として働いてくれ給え。期待しているよ。」
作られた屈託のない笑顔で言った。
「俺が弾より下かよ。クソっ。」
「たりめーだバカ。てめぇ俺より雑魚だし。」
と笑って答えてやった。
「あぁ、そうだ弾君、キミの青眼の研究、進んだよ。でもどうやら適合した体でないと発動しないみたいだ。」
そんなこと頼んでいたのか、と言う顔で鳳が俺を見る。
俺は、自分を守る為に真希や一果達にも青眼を開眼して欲しかった。
そしたら、俺の存在価値も無くなるかな…。
「そうですか…。」
残念そうに答えた。
実際残念だったわけだが。
「だがね、これはまだ分からないんだが、君の青眼と鳳君の赤眼は足すと能力値も足し算になるみたいだ。赤眼と青眼が能力を上げるメカニズムは違っていて、違う方法であげればそりゃ能力は更に上がるよね。」
希望が湧いた。
更に強くなれる。
俺が、この世界を統べる。
敵など、滅ぼしてやる。
俺1人でだ。
「だが…細胞を自力でなく他力で活性化させる分、身体に与えるダメージは計り知れない。それでも、弾君は…それを望むかい?」
「いや、しないでしょ」
「はい。両眼の研究を進め、是非その眼の開発をお願いします。」
遮る鳳を無視して俺は合意を示した。
鳳は青眼と赤眼の協力、鳳と黒間の共闘を望んでいるようだが、俺は違う。
俺の大切な人が、もういなくならないなら、俺がどうなろうが知ったことではない。
「お前!」
鳳は叱ろうとしたが、俺の青眼を見て思いとどまったみたいだ。
「そうか…こちらも研究は続けるが、君の破滅など誰も望んでいない。よく考えてはおいてくれ。」
10年前から変わらぬ意志だ。
人を殺すこともできる意志だ。
変わるはずなどない。
「お願いします。」
そう言って俺は部屋を出た。
鳳も後を追うように出てきたが、会話を交わす前に
「冴香を待たせているんだ。先帰る。」
と言って、そそくさと行ってしまった。
慌ただしいやつだ、と俺は思いつつ官邸を出た。
青空がやけに眩しい。
自らの身体を蝕み、悪魔のような力を得られる
「呪いの目…呪眼…か…。」
と呟いて帰路を歩いた。
一瞬、幸せそうに俺がみんなと過ごす風景が浮かんだ。
くっだらない。
消し去って俺は歩いた。
未練などは無い。




