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第11話 傷モノ

高く飛ぶ俺を鳳は唖然と見ていた。


青眼を発動させている俺は、簡単に10メートル程は跳べる。


高く上がった俺は


「真っ炎!」


と叫んで鳳に向かって大きな火を噴いた。


かつて、俺が黒間を殺す為に噴いた火の2倍ほどの火を、俺はもう操れるようになっていた。


着ていた薄着が、ハタハタと音を立てながら火の反動を受ける。


下にいた鳳は熱さで我に返り、とっさに火を避けると、俺に向かって跳び上がってきた。


青眼を発動させている鳳もまた、10メートル飛ぶ事など、簡単なことだろう。


空中でぶつかり合った俺たちは俺の出した拳や蹴りを鳳が避けたり当たったりして、鳳が出す拳や蹴りを俺もまた避けたり当たったりし、空中戦を繰り広げた。


2人同時に着地すると、今度は鳳が


「陽炎、処楼!」


と叫んで手から火を出した。


その火はネジの、ギザギザの部分のような形をして俺に向かってきた。


避ける俺に追撃する準備を鳳はしているだろうと踏んだ俺は


「暴護壁!」


と叫び、フンッと力を込めた。


足元から勢いよく出てきた炎が、鳳の陽炎、処楼を止める。


避ける必要のない俺は壁の中でこうげきの準備を整え、鳳に向かって


「蜩、処火!」


と叫んで、唾を吐くように矢のように細くて短い火を勢いよく噴いた。


鳳はそれを脚にかすらせ、矢がかすったような傷を負い、その箇所を火傷した。


これだけ聞いていれば、俺が優勢のように見えるが、俺は鳳の陽炎、処楼を完全に止められた訳でなく、左肩に鳳と同じような傷を負っていた。


更に2人とも、人並みをゆうに超えた力で殴り合っていた為、傷だらけで、まさに互角、と言う感じだった。


「やるな…。良いね、こういうの。大切な何かを守る為に遠慮なくぶつかり合えるのは。」


鳳がそう言ったところに、一果と真希が走りながら入ってきた。


遅れてゆっくりと、鳳の側近であろう黒いスーツを着た2つほど上の女が来た。


皆、俺たちの帰りが遅く、または嘘がバレて心配してきた、と言うところだろう。


「お兄ちゃん!何してんの!」


真希が本気でキレている、という感じで言ってきた。


「……あー、真希、一果、何してるの?こんな真っ暗の中女の子2人で。家の鍵、ちゃんと締めた?空き巣とか怖いから…」


「はぐらかさないで!」


言い終わる前に、一果に遮られた。


鳳の方も、


「坊ちゃん…………」


「いや、このままで構わない。冴香、………」


と、何か会話を続けている様子だった。


それを見た俺は


「おい一果、真希。今は取り込み中だ。少し出てろ。」


と少し脅し気味に言って外へ出した。


2人は俺のこんな表情を見たのはきっと初めてだろう。


軽蔑しただろうか、構わない。


お前らさえ、無事なら。


こちらの様子を見た鳳も、冴香さんとやらを外へ出し、再び倉庫は俺と鳳の2人きりになった。


「ギャラリーが多いよ。もう派手な事は出来ないし、とりあえず話し合わないか?お前が闘いを望むなら、後日ということに…」


「いや、構わないよ。きっとこのまま闘っても共に死んで、この世に被害を遺すだけだ。」


フッと、2人笑いあって充満していた殺気が消えた。


ただ、2人とも重傷を負い、血が垂れた流れていた。

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