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第9話 弾自身の運命

「君が今、歴代最強の明王で、自分の一族を滅ぼした黒間弾君か。」


その男は、俺に向かって親しげな笑顔で話しかけてくる。


「はい。お呼び頂き光栄です。」


一族を滅ぼしたのち、俺は政府から忌まわしき黒間一族を滅ぼした名誉を実際に形にして授与したいということで呼び出された。


今目の前にいるのは、総理大臣である、真中康作だ。


「ハハハッ、そんなに硬くならないでくれ。気楽にしてくれていいよ。」


真中はわざとらしい笑顔を俺に向けてくる。


何か思惑でもあるのだろう。


なければ、本当に一族を滅ぼしただけで俺に笑顔を見せるやつなどいない。


嘲笑う顔なら別だが。


「いえ、ありがとうございます。」


それでも、明王という建前の上、この男に逆らうことなどできない。


「まずは黒間弾君、此度の功績は、本当にありがたい。国を挙げて感謝する。」


真中は賞状の様な紙切れを俺に両手で手渡す。


「ありがとうございます。」


俺もそれを両手で受けとる。


「で、だ。本題はここからなんだが、最近は世の中も物騒だろう?能力を使って犯罪を犯されれば、いくら警察や自衛隊といえど太刀打ちできない犯罪が増えてきている。」


やはりな。


結局人は、変わりなどしない。


俺はいい。


だが、真希でさえ…純粋な真希でさえ、嘘の笑顔に騙されてしまうのだ。


なら、最後までその嘘を突き通させればいい。


俺が犠牲にさえなれば、できないことではない。


愛する妹のために、動いてやらない兄が何処にいる。


「はぁ…」


「そこでだよ。黒間くん、明王である君はきっと僕が知る中では日本で一番強い。だからその君が、明王としての立場で政府と手を結び、慈善活動のつもりで犯罪取締という職務につかないか?」


「……」


「この契約を結んでくれるなら、明王としての職務中は一切の法を無視しても構わない。」


それじゃあ、俺1人で戦争をしろと言っている様なものだ。


この男からすれば、俺は単なる爆弾なのだ。


「…弾くん。黒間一族は、今までその素行により世間から忌み嫌われてきた。きっと君たち兄妹も嫌な思いをしてきたんじゃないか?でも、君が今日から、黒間一族のイメージを変えるんだ。この契約をする事で、黒間一族は栄光の一族だ…って。」


脅しでしかないじゃないか。


断れば、少し回復している黒間に対する世間の評価を、また前の様に落とす、と。


そしてそんなことがあれば、お前の妹や、周りの人間の立場は…分かるな?


とでも言わんばかりの、脅迫だ。


もとより断るつもりもない。


「…はい。俺なんかでよければ、喜んでさせていただきます。」


「そうか!君ならそう言ってくれると思っていたよ。今日から頑張ってくれ!」


そうして契約は終わり、明王には犯罪取締という義務がついた。


こんな出来事があった数日後、もう夏休みだという日の放課後には、黒間は栄光の一族だ、なんでもてはやされ、真希も幸せそうに友達と遊ぶんだ、なんて話をしていた。


ただ一果だけ、何故そんな契約を結んだのか、と何か怒っている様子だった。


昔からこいつはよく分からん。


こいつを傷つける様なことをしなくても、こいつはよく俺に説教してきた。


飽きもせず、俺に話しかけているのは一果くらいなものだ。


せっかく綺麗な顔をしていて、赤いショートカットのまるでモデルかと言わんばかりの容姿をしていて、あちこちの男子から言い寄られているというのだから、俺なんかとは関わらなければいいのに。


「もう、また俺なんか、なんて言わないの!もう…。」


と困った様に俺の肩を小突いた。


俺はと言えば、やたら女子に言い寄られた。


きっとこの名誉が欲しいだけなのだ。


俺のことを見ているやつなど、誰1人としていない。


「なぁ……お前黒間弾か…?」


校門の辺りに差し掛かったところで、同い年くらいの少年に声をかけられた。


「あぁ……。」


「俺は、鳳一族の現当主、鳳大輝ってんだ。……明王なら、言わなくてもわかるよな…?」


ニヤリと笑って、少年は言ってきた。


俺はそいつを強く睨んだ。


横では一果が焦った顔をして俺を見ていた。


「そう睨むなよ。今日は挨拶に来ただけだ。またそのうち会いに来るよ…。その時までに食いたいもんは食っとけな…。」


「お前もな…。」


すかさず言い返すと、少年は、ハハッと笑って背を向けた。


鳳にはなんの恨みもない。


だが…これはもはや宿命なのだろう。


俺がこの眼を持って生まれた時には、こうなることは決まってたんだ…。


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