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まもる者~promise~  作者: ユガミウ(旧名 立花 優)
高校生活は波乱の予感?
9/28

禁書庫と伝承

少し遅くなりました。忙しくて、大変です。

時は流れ、四月も終わろうとしていた…いや、ゴールデンウイークが始まろうとしていたある日。

学校生活にも慣れ、これから始まる連休に胸を踊らせている者が多く、浮ついた雰囲気がクラスを包んでいた。

俺、海原緑もまたその一人であり、放課後が楽しみで仕方がなかった。

そう…今日は待ちに待った、禁書庫に入ることのできるようになる日だ。

毎日毎日、そのまだ見ぬその書庫に夢を馳せながら警備し続け、ついに、その扉に俺たち新入部員の魔力もインストールされたのだ!


禁書庫の開錠方法は、その扉にインストールされた魔力にのみ反応して開くそうだ。

それ以外の者が開けようとしても開くはずがなく、さらに下手に魔力を注ぐものなら警備装置が発動するらしい。


図書部に入部したことを第一歩とするなら、これは、さらに一歩姉さんに近づくことになる。

俺の高校生活は早くも軌道に乗りかけていた。



放課後、誰よりも先に教室を出ると、急いで部室に向かった。


「こんちわー。」


俺は、勢いよく扉を開け、中に入るがまだ誰も来ていなかった。

さすがに、一人で勝手に地下へ行くことはできないので、部室を見回ることにした。


実際、ここ最近この場所に来ているが、モニターの前にいるが、ちょっと、ソファーに座るだけで、部室について詳しく知らない。



この部屋は、仕事スペースと休憩スペースとがはっきりしていて、仕事スペースには、図書館の資料に関するものや、監視モニターがあったり、組織の隠れ家的スペースになっている。

一方休憩スペースは、テーブルの周りにはソファーがあり、今のメンバーが全員座れるだけの場所がある。


俺は、この前教えてもらった暗証番号で金庫を開けると、例のあの本(・・・・・)を取り出す。

とても分厚く、図書部の歴史を具現化したように分厚い本を広げる。

中には、過去の出来事が書かれていた…だが、恐らくこれは当時で言うと、未来の出来事…運命だったのだろう。

年度ごとに見開き1ページで、入部者の人数から始まるこれは、図書部の歴史そのものだ。


ふと、とある年度のページに目が留まる。

このページの始めに書かれていたのは…


『災厄の始まり』


今までのどのページにもなかった、決定的な違和感がそのページにはあった。


その年の出来事をみると、四月に本が盗まれたらしい、しかも禁書庫から。

そして五月には一冊の本が届けられ、禁書になりかけたが、一般閲覧本になった。

そんなことが書いてあり、その五月に以降何も書かれていない。


不思議に思っていると、隼斗さんがやって来た。


「やあ、緑くん。早いね。何を見てるんだい……って、それか…。それは、見ちゃダメだって言ったはずだよ。まあ、先の未来は部長しか見れないようになってるけど。」


「ごめんなさい!すぐ、片付けます。」


俺は、慌てて閉じると、金庫に入れる。


しかし、隼斗は見逃していなかった。

彼が見ていたページは、災厄の年。

十年前(・・・)のページであったことを。




それから、しばらく隼斗さんと話しているとメンバーが集まって来た。

そしてようやく。


「よし!じゃあ、今日も活動始めるよ…って言いたいところだけど、緑くんも楽しみにしてることだし、禁書庫見学に行きたいと思います!」


「あぁ、俺パスな。あそこ好きになれないんだよな。それに、一人くらいここにいた方がいいだろう?」


「じゃあ、妹尾くんはここに残るということで、みんな行こうか。」


俺たちはいつものように地下へと潜って行った。

ただ一つ違うのは、俺の足取りはいつもより軽快だった。



禁書庫の前に着くと、隼斗さんはこちらを振り向くと。


「じゃあ、誰から行きますか?この扉は、流した魔力の者しか通しません。僕は最後に行くので、みんなは先に行ってね。それから、僕がそっちに行くまでは、何も触らずに待っててね。」


俺たちは互いに見合うと


「よしっ!じゃあ、俺から行くわ。緑程じゃねえけど、楽しみだったんだよな。」


卓は、扉の前まで来ると、手を扉に添える。


「そのまま、魔力を流して。そうしたら開くから。」


卓が魔力を流すと、扉の中央に青白い光の線が入ると、そこから左右に扉が開く。

すると、扉の向こうには空間が歪んで(・・・・・・)いた。


卓も神宮さんも、その光景に驚いていて、隼斗さんが声をかけると、卓はこちらを向き笑うと、


「じゃあ、お先!」


中に入って行った。


(さて…次は。)


俺は、俺の右腕に掴まっている彼女を見る。

まるで、「どうしたの?」と言わんばかりに首を傾げる。

そう、ここに来るまでずっと…いや、ここ最近部活中では彼女…神宮さんは、俺の右腕にくっ付いたままだ。

普段は、あまり厄介ごとを増やしたくないので、特に注意して言い聞かせている。

きっかけは、あのチンピラを追い払った時からで、時々顔を赤くしてくっ付いてくるので、こちらとしても反応に困って仕方がない。


「どっちから行く?」


「…………。」


「先に行く?」


「………(ブンブン)。」


「じゃあ、先に行くよ?」


「………(ブンブンブン)。」


「えっ?でも、一緒には無理だよ。」


「………(しょぼーん)。」


あからさまに、落ち込む姿を見ているとどうしても、母性本能がはたらいてしまう。


「すぐ行くからさ、ねっ?先行って待っててよ。」


渋々ではあったが、了解してくれると神宮さんは、魔力を流して扉を開き入る前にこちらを見る、あの顔はとても不安な時の顔だ。

俺もこの数週間で神宮さんの表情が読めるようになってきた。


俺が笑ってやると慌てて中へ入って行った。


「頼られて…いや、依存(・・)されてますね。」


隼斗さんは、鋭い。俺の一番の不安要素を突いてくる。

そう、神宮さんの行動は依存の域に達している。


人間は弱い。依存しているものを失った時にすぐに壊れてしまう。

いつか、神宮さんの行き過ぎた“頼り”を正さなければならない。“頼り”と“依存”は似て非なるものだ。


「さて、最後に緑くん。僕もすぐに行くから待っててね。」


俺は、手を扉に添える。

魔力を注ぐと今までと同じように開く。

歪んだ空間に手を伸ばし中へと入って行った。


「あっ、言うの忘れてたなぁ…あっちに着くまでは、じっとしておくようにって。まあ、大丈夫かな。」


能天気な隼斗だった。



目を開く。俺は、何も無い空間を浮遊している。上下左右は無く、無限に広がる空間。

これを俺は知っている。


まるで、【時空蔵】のようだ。


きっと、俺のあれも、大きくすればこんなものなんじゃないのか…と思わされる。

しかし、奇妙なのはその【時空蔵】の原理が使われていることだ。

この原理…空間に空間を作るというものは、黒崎家が得意とするもので、高度な技術が必要な割には、その応用性がない。それが世間のイメージ、否、常識と言ってもいいだろう。

残念ながら俺は知らないが、黒崎家はその(・・・)があるらしい。

つまり、黒崎の人間以外がこの術を使うはずもないので、この入口…禁書庫は黒崎の人間が作った(・・・・・・・・・)ことになる。


ところで、こうしていつまでも浮かんでいるのもあまりいい気はしない。

俺は、一か八かいつもの要領で空間を裂いてみると裂け目はみるみるうちに広がり、俺は、その中に引き寄せられて行った。




「うぁぁぁぁぁぁあ。イタッ!」


俺は、ずいぶんな高さから落ちたようだ。

素早く受け身を取るが、突然の出来事に上手くいかなかった。


「…いっ…てぇ……ここはどこだ?…ん?あれは…?」


見るとここは、天井が高く禁書庫というわけでもなさそうで、むしろ、神殿に近い造りになっていた。

奥の祭壇には何か置いてあるのが見え、そこへ向かう。



ーー汝、選バレシモノーー


ーー汝、我ニ力ヲ示セーー


ーー我ハ、選定スル使徒ナリーー



(何だ…今の……。)


静かな静寂が辺りを包む

突然、獣の雄叫びが聞こえる。



ヴガァォァァ!!



すると、上から何かが降りて来る…否、落ちて来る。

その大きさは人を遥かに超え、山のようだ。


それが地に着くと、地面が揺れ、凄まじい衝撃が俺を襲った。


「ぐは…っ…。」


壁に叩きつけられ息が漏れる。


(何だよ…あれ…。)


俺は、目を疑った。落ちてきたのは“鬼”いや…“悪魔(イフリート)”だった。



ーー汝、力ヲ示セーー


悪魔は、凄まじいスピードで突進して来る。

間一髪で避けると、体制を立て直してそれを見る。が、すでにいなかった…。

背後に殺気を感じると、悪魔はその大きな腕を振るってきた。

俺は、咄嗟に【象悪】を発動し、一先ず自分の位置をずらす(・・・・・・・・・)

すると、腕は俺の幻影を殴る。すぐに、霧散すると悪魔は、こちらを一瞥すると、振るった腕をそのまま引き戻しながら俺を狙う。裏拳だ。

俺は、思いも寄らない攻撃を受けてしまう。


「ーーーっ。」


声にならない叫びをあげ、再び叩きつけられる。

一瞬意識が飛びそうになるが持ちこたえる。


ーー汝、ソノ程度カーー


口の中の血を吐くと


「はっ!舐めんなよ!」


俺は《ダーインスレイヴ》を取り出し、悪魔へと突進する。

素早く、右肩を狙って斬りかかる。

その速さについて行くことはできなかったが、斬ったはずの右肩には、ほとんどダメージがない。


(チッ…)


それから、相手の攻撃は避けるがいくらやっても、決定的なダメージにはならなかった。


(剣がダメなら…)


詠唱を素早く始める、すると足元に黒い渦が出来る。


【黒渦】


俺の最高の魔法。召喚魔法(・・・・)を発動する。


【黒渦ー(せん)ー】


【黒渦】は形を変え、数多の鋭利なものへと変わり悪魔へと向かって行く。

凄まじい速さで次々に刺していくと、みるみる傷がついていく。


ヴガァァァァ


そして、多くのそれは一点…心臓を貫く。


ヴヴゥゥヴアァァァァ!


悪魔は、心臓に刺さるそれらを掴み砕く。

砕かれた【黒渦】は地に着くと再び一つにまとまる。


今までの比でない殺気が放たれる。

悪魔の背後に魔法陣が浮かぶ。


(まさか…っ)


次の瞬間俺は、炎に包まれていた。


俺は、慌てて【黒渦】で身を包むが間に合わなかった。


「うぁぁぁぁぁーーーっ!!」


あまりに強力なその業火に焼かれる。


悪魔は追い打ちをかけてきた。

目の前に大きな拳が迫り、強い衝撃が奔る。

三たび壁に叩きつけられた俺は、立ち上がる力すら残っていなかった。

しかし、諦めるわけにはいかなかった。


「俺は…俺は…。誰にも負けるわけにはいかないんだ!!」


【黒渦ー無ー】


悪魔の右脚を黒渦が呑み込むが、沼に脚を取られたような状態になる。


【黒渦ー黒炎ー】


「喰らえ…!」


脚を喰らうようにして、右脚を覆い尽くす。


ヴァァァァァァァァ!!


ブチブチブチブチ!!


【黒渦】は右脚を喰らい、怪しく蠢いている。

右脚の無くなった悪魔は、バランスを崩して倒れる。


しかし、悪魔の背後に再び魔法陣が浮かび上がる。

悪魔の手元に、太陽が出来上がっていく。


(どうする…どうすれば…!)



ヴガァァ


太陽のような玉が襲いかかる、黒渦を何層にもし、強度を高める。


ビキッ…


しかし、すでに、魔力の尽きかけていた俺の黒渦は儚くも散っていった。


(こんなところで……っ!)


ーーセワノヤケルーー


(…!?)


右手が勝手に動くと、前へ差し出す。


【 】


俺は…俺の身体は何かを詠唱すると、炎の塊は、霧散(・・)していった。


「何だ…今の……。ゔぅ…。」


胸が熱く、焼けるようだ。

俺は、確認すると胸には紅く、何かが刻まれていた。


ーーようやく、繋がったかーー


ーーだが、お前はまだ弱いーー


ーーよく見ておけーー


再び、身体を奪われると、《ダーインスレイヴ》を構える、左手で魔法陣を描くと、俺は魔法陣を斬る。

すると、魔法陣から闇の波動が悪魔を襲う。


ヴガァァァァァァ!!


今までつけた傷とは比べものにならない傷が胸についていた。


「終りだ…。」


次の瞬間、懐に飛び込むと魔力を込めて、一閃した。




ーー汝…選バレシ……モノーー


ーー汝……コ………ナリーー


悪魔は最後に何か言って消滅した。



ーーわかったかーー


ーーお前には、力がある。次に会うのを楽しみにしているーー


そう言うと、身体から何かが抜けていき、胸には傷が無く、まるで夢だったかのように、不思議な気分になった。




俺は、祭壇へ向かう。祭壇には何か書いてあるが読めない。


「汝、選ばれしもの。黒の魂、再興を願う。」


「へぇー…。何か、よくわかんない内容だな………ってか、誰⁉」


辺りを見回しても誰もいないが


「おい、ここだ。」


ん?俺の少し上を、何かが飛んでいた。

それは、さっきの悪魔の羽の生えたやつ…のようだ……まさか。


「そう!俺は、選定の使徒。黒の一族の中でも継承を司ったものだ。俺の役目は、ここで選ばれし子孫を待ち、伝承するためにある。それから、今はこれだが、ちゃんと人間だ。ところで、今年は何年になる。」


「えー…20××年です。」


「やはり…そうか、あれから十年(・・)経つか。つまり、お主は…まあいい。実は俺は十年にすでに継承を終えた。相手は…そうお主の姉だ。」


戦闘描写難しい…

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