部活動勧誘週間~最終日、これが図書部~
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長くなりましたが本編どうぞ。
「みどりくん、朝だよ。早く起きてね。」
いつもの朝がやってきた…はずだった。
「んー…。」
(だるい…このだるさは……。さては、昨夜は満月だったな…。)
俺は、この家に来てからというもの、満月の夜の翌朝はとても身体がだるく、気持ち魔力も枯渇気味で、まるで【象悪(Evil Command )】や【黒渦(Collapsar)】を使ったあとのようだ。
しかし、いつまでもこうしているわけにもいかず。俺は自分に鞭を打つと、立ち上がり着替え始めた。
今日から、授業も開始される。
Eクラスとはいえ、二年からは上のクラスへ…!という者がいるので、授業は、とても意識が高かった。一人…俺を除いては。
あまりの、だるさから、全ての授業を睡眠学習にあてた俺は、放課後にはいくらかマシだったが。勉学は前途多難だ。
俺は図書館に向かうために、帰り支度をしていると、見覚えのない箱があり、手を伸ばす。
その箱は爆発した。いたずらの域を超えた爆発音が鳴り響く。
緑の立っていたところは、煙に覆われ様子が伺えない。
しかし、煙が晴れると緑は無事だった。
手には、爆発しかけている箱があった。
「あぶね~。死ぬかと思った。いたずらにしては、度かすぎてないか?」
鋭い目を教室の入口に向ける。
「へぇ、やるな。お前が海原緑か。」
そこには、同じ制服を着た男がいた。
眉の横には切り傷がある。
「お前は、誰だ?」
「…さぁな!知りたかったら倒してみろよ!!」
男は、俺に向かって突進してきた。
一歩引き。右手、左手、右脚、左脚と次々に迫り来る攻撃を躱す。
男の体術はなかなかのもので、机がたくさんある教室だが、無駄な動きが一つもない。
しかし、俺はこんなところで、負けるわけにはいかない。
迫り来る右手を掴み、引き寄せると肘打ちを入れる。
しかし、男も引き寄せられることに驚きながらも、右脚を軸に左脚で蹴りをいれてきた。
お互い、飛ばされるがすぐに体勢を整え、相手を見る。
男が先に動き出す。素早く接近してくると、俺の攻撃をかわして、腹に飛び込むと魔法を発動した。
(しまっ…)
爆発音とともに、辺りの机は吹き飛び、床は焼け、教室を壊すまではないものの、強力なものだった。
俺は、少し本気になった。
「こんなもんか、海原緑!まだ生きてるんだろ?続きをやろう「【象悪】」ぜ⁉」
男は、自分の身体の異変に気づく。
「な、なにしやがった!!」
「ちょこまかと、ウザイからな。少し、空間をいじった。この空間は、俺の支配下にある。何なら、口を封じてやろうか?」
煙の中から現れた姿に男は目を見張る。
身体から、黒い魔力が身体を纏うようにして蠢いている。
俺は、右手で空間を裂くと手を伸ばし、柄握ると引き抜く。
右手には、剣が握られていた。
剣脊が黒く、禍々しいこの剣は《魔剣 ダーインスレイヴ》といい、【時空蔵】に初めて入れた武器だ。そして、この禍々しさこそが、【時空蔵】本来の仕様だ。
本当の【時空蔵】の使い道は、【時空蔵】空間内に干渉し、物を強化する。これこそが、俺の創り上げた闇魔法だ。
俺は、強化された《ダーインスレイヴ》を片手に男に近づく。
しかし、男は笑っていた。
「それが、強化魔法【時空蔵】。そして、補助魔法【象悪】。攻撃魔法…いや…召喚魔法の【黒渦】が見られなかったのは残念だったな…。でも、まあこれだけ見ればとりあえず満足だな。じゃあ、またな海原緑。」
男の後ろで爆発が起こる。
爆風が教室全体を襲う。目を開けるとその光景を疑う。
教室は元の状態に戻っていて、先刻そこで戦闘があったとは誰も思わないだろう。
もちろん、そこには誰もいなかった。
【象悪】を破るほどの魔法…しかし、最後の爆発に、魔力は感じられなかった。
廊下から声が聞こえてくる。あれ程の爆発音が鳴ったのだから、当然だろう。
(やべっ、騒ぎすぎたか…。)
俺は、窓から飛び降りると、校舎から離れた。
*
すごい。あの男を殺れるなんて、ワクワクするわ。
私、蛇野綾は僅かな魔力、魔法の発動を逃さない。
この、感覚スキルが卓越しているからこそ、今回この任務に就くことになった。
そして、何より彼の望むことなら、絶対に成功しなければいけない。
今日も、生徒会長としての、表の生活を眈々と行っていた。
しかし、私の感覚に僅かな、覚えのない闇魔法の発動を感じた。
間違いなく、彼…あの男のものだろう。
私はメンバーに、席を外すことを告げると、急いで発動源に向かい、隠れ見ると、あの男は黒い魔力を纏っていた。
その姿は普段の姿とは違い、禍々しかった。
強い光のこもった目に、私は早く壊したいという欲求に駆られる。
そして、再び爆発音が鳴る。さっきよりも大きな爆発は、教室を元の姿へと戻していた。
生徒達が集まってきたので、私は生徒会長に戻ると、事態の収拾に務めた。
私は、指示を待っている。
*
(とんだ災難だ。)
謎の男に襲われ、力を知られていて、見られた。
追いかけようとしたが、気配を完全に遮断していて追うことができない。
あの体術と機転の速さは、実力者であることを物語っていた。
しかし、今はあの男の事は一先ず置いて、図書館に急がなければならない。
少し遅れ気味なので、俺は走って向かった。
部室の扉を開けて俺は、唖然とした。
「よう!海原緑。遅かったな。」
ソファーには爆発男が座っていた。
「ん?なんだお前ら知り合いか?なら、こいつの紹介はいらないな…えーっと…」
「いやいや、待ってください⁉その男なんなんですか…いや、何者何ですか?」
俺は、状況がよくわからない。
どうしてあいつがここにいる?
どうして俺を襲ったんだ?
なぜ、俺の魔法を知っている?
考えれば考えるほどややこしくなってきた。
妹尾先輩は、躊躇いながら
「ん?知り合いなんじゃないのか?あー…なんだ…えーこいつは妹尾卓…俺の弟だ。そして、図書部員だ。」
……弟?
「そういうことだ。よろしくな、海原緑!お前は思ったより強かったぜ。」
「お前、まさかさっきの爆発はお前の仕業か!」
「悪い悪い、いつものことだろ兄ちゃん。許してくれイタッ!!」
「ったく、お前は…悪かったな海原。突然襲われたんだろ?こいつ、すぐ戦って白黒つけようとするからな…俺も困ってるんだ。」
妹尾先輩の弟ということで、敵でない可能性も出てきたが、安心することはできない。
「はい、とりあえずそこまで!ほら、今日はもう一人いるんだから、顔合わせ済ませるよ。緑くん。こちらは、神宮楓さん。神宮さん、こっちは海原緑くん。みんな仲良くしようね。」
神宮さんは、小柄な人で髪を赤のリボンで結っていて、とても可愛い人だ。
この人が、体術に優れているようには見えない。
「よろしく神宮さん。」
「………(コクコク)」
ほんとに、可愛らしい人だった。
「あとは、先生だけだね。もうすぐ、来るはずなんだけど…。」
「顧問なんているんですか?」
俺は、気になったことを聞いてみた。
「いるよ。でも、正確には顧問じゃないな。むしろ、上司と呼ぶべきかもね。全ての責任は先生が持つし、何より指示を出すからね。僕たちはそれに従って警備していくんだよ。」
そんな話をしていると、扉が開く。
「わりー遅れた。てか、遠いよな…ここ。だるいから、これ最後にしてくれよな。」
そこにいたのは、俺の担任、無灯大輔だった。
「む、無灯先生!?」
俺は、思わず声を上げてしまった。
「ん?…あー海原か、お前図書部だったのか。まあー頑張れや。それから、その他メンバーの諸君、一年E組担任、無灯大輔、三十一歳独身だ。以上。じゃあ、帰るわ。てきとーに警備よろしく。なんかあったら連絡ちょーだい。」
そういって、出て行った。
「…まっ、そういうことだから、早速始めますか。緑くんと、卓くんは地下へ行って禁書庫の扉の前で、警備よろしく!」
…マジっすか。
こうして、図書部の活動が始まった。
*
(何だこの大きさ…。)
俺たちは今、禁書庫の扉の前についたのだが…その扉は、異常なほど大きかった。
思わず見上げるほどで、さらに、ロックも厳重にされていた。
「すげーな…。どうやってあけるんだよこれ。」
俺も同意だ。
「ところで、妹尾。」
「…卓でいい。…何だ?」
「…どうして、俺の力を知っていたんだ?」
「…………それは、言えない。」
「どうして!!」
俺は、卓の襟を掴む。
「どうしてもだ…。でも、俺は敵じゃ無い!……信じてくれ…。」
「信じろって…お前、さっき俺を殺す気だったじゃないか!」
「それについては謝る…。すまん。でも、どうしても知りたかったんだ…お前の実力を。」
その目は真剣で、俺と同じ決意した目だった。
「ちっ…。わかった…。お前を信じよう。でも!俺の友達に手を出した時は…殺すからな…必ず。」
卓は、その本気の殺意によろけると、座り込む。
俺は、手を伸ばして引き上げてやると、笑って他愛も無い話を始めた。
俺は、卓を少しは信じてもいいのかもしれない。
そう思えた。
*
それから、数日特にこれといった出来事もなく、過ぎて行った。
図書部では、卓との関係も良好だが。神宮さんとかそうもいかない。
神宮さんは口数が少なかった。
感情をあまり表に出さないようで、いつも本に目を向けていて、話に入ってこようとしない。
一緒に警備したときは、ただでさえ静かな地下なのだが、完全に無音だった。
時々、神宮さんを見るといつも一点を見ていて、コミュニケーションをとるのには時間がかかりそうだ…。
そんなこんなで、勧誘週間最終日。
俺は、聡からこんな話を聞いた。
「知ってるか、緑。先輩が言っていたんだが。今日が一番熱いらしいぜ。」
「暑い?何だよそれ、天気予報で、今日はポカポカ陽気って言ってたぞ。」
俺は、お天気お姉さんを信じている。
「暑いって、そうじゃねぇよ。“熱い”だよ!今日、勧誘週間最終日だろ?部員の少なかった部活動とかが、片っ端から誘っていくんだってよ。それが、時々過剰にやり過ぎる奴らがいるんだとよ…。だから、緑も気をつけろよ。」
「へいへい。そんな奴がきたら蹴り飛ばすけどな。」
「ハッ、そうだな。」
この時は、笑っていたがまさかあんなことになるとは思ってなかった。
放課後、担任の昼寝のせいでホームルームが遅くなった俺は教室を出る。
いつもより、賑やかな廊下を進んでいく、途中声をかけられたが、部活に入っていると告げると、残念そうに去っていく。
そうして、図書館に向かっていると、中庭で見覚えのある人物がいた。
周りには、五人の先輩?たちがいて、どうやら勧誘しているようだが、ナンパに見えなくも無い。その中心で相変わらず無表情たが、どこか迷惑そうな…オロオロした様子なのは、神宮さんだ。俺は、仲間を助けることにした。
「ねぇ、君。可愛いね。一年生でしょ?俺らの部活入んない?」
「…………。」
「だっせー、お前シカトされてやんの。」
「うっせーな、この娘は恥ずかしくて言えねーんだよ。」
「自惚れ乙ー。ねえ、君。俺らA組なんだよね。やっぱ、仲良くなるならエリートなA組がいいと思うな。」
そういって、男は神宮さんの肩に手を伸ばすが
「すみません、先輩。この娘、俺と同じ部活なんですよ。もう、部活に入ってるんで結構ですよ。」
俺は、男の手を掴むと、できるだけ丁寧に相手の癇に障らないように言うが、当然、何事も無い訳が無い。
「あん?なんだてめー。ん?お前知ってるぞ。海原家の汚点だろ。ハッハッ、今俺らがその娘と話してるだけなんだよ、邪魔すんじゃねーよクズ。」
何が、話だ…
「すみません、急いでるんで。失礼します。」
俺は、怒りをぐっと抑えると、聞く耳を持たず、神宮さんの手を握り歩き出す。
神宮さんは、驚いたようだが今はこうするしかない。
「てめー…クズのくせに生意気なんだよ!」
そういって、男たちは色とりどり、様々な属性の魔法を発動し狙って来る。
俺は、神宮さんを身体に引き寄せると、空間を裂き【時空蔵】から《魔剣 ダーインスレイヴ》を取り出すと、右手で素早く振る。普段なら片手でこのスピードでは振れないが強化によって軽量化した今の状態では、容易いものだった。
迫り来る、魔法を打ち払う。
この荒業こそ、師匠の剣である。
そして、一通り止むと、次の攻撃が来る前に【象悪】を発動し動きを止める。
「なっ、動けねーぞ。」
「ふざけんなよ!なんで、こんなクズに…」
「黙れ!」
男たちは、殺気が感じられないほどバカではなかった。
「二度と、俺たちの前に現れるな。次、海原家をバカにしたら殺す。」
俺は【象悪】を解くと、神宮さんと歩き出した。
*
「ごめん神宮さん、みっともないところ見せて。」
「……(ブンブンブン)」
「つい、カッとなって…。怒鳴った時耳痛くなかった?」
「……(ブンブンブン)…かっこ…よかった……ありがとう。」
「えっ?今…」
ボソッと、何か喋った気がする。
神宮さんは、耳まで真っ赤にして俯くと、手を引っ張って行ってしまった。
余談だが、その後手や握ったまま部室に入ったので、妹尾兄弟に冷やかされ、神宮さんは顔から湯気が出るほど真っ赤になり、それを見た俺も思わず赤面してしまった。
感想お待ちしています。
戦闘描写の練習を兼ねて、少しずついれています。おかしな点ありましたら、ご指摘お願いします。