女神と会長と不安を抱え
武器の名前には、苦労しそうです。ネーミングセンスがない。
あたし、火野夏は、イライラしていた。
また、アイツが妹と腕を組んで登校したらしい。べ、別にアイツが誰とベタベタしていようと……あたしには…関係……ない。…でも……あー、もう!なんなのよ!まったく…。
ふと、あたしは、E組が騒がしいことに気付く。その方向に目を向けると……アイツ…海原緑がいた。
昔から緑は中性的な顔立ちで、いつも、お姉さんの後ろに隠れてるウジウジしたやつ。それが、あたしの印象だった。
でも…あの事件……七大名家の一つ黒崎家の滅亡から全てが変わった。
黒崎緑は死んだ。
正確には、死んだことになった。黒崎家と所縁の深かった、火野家と海原家の大和じい様は、唯一の生き残りだった緑を助けると、海原家の養子にした。
幸い、緑はまだ、世間には知られていなかった。百年に一度の逸材と呼ばれた、緑の姉、黒崎紫を授かっていた黒崎家には、既に緑は不要だったのかもしれない…。
そう思っていると、見るからにがさつそうな男…聡が今にも緑に飛びかかろうとしていた。あたしは、ストレス発散、と自分に言い聞かせ、愛銃《SUMMER72》を片手に、聡の背後へ回ると、その銃口を聡へと向けた。
*
現れたのは、夏だった。
オレンジ色のショートヘアーは、よく似合っていて、すらっとした手足は、よくモデルに間違えられるが、七大名家、火野家のおてんば娘と呼ばれている。ちなみに、こいつに、胸の話は禁句だ。
閑話休題
銃口を向けられた聡は、動けなかった。俺は、夏が助けに来たわけではないことを悟ると。
「な、夏…さん…?」
「なに?」
今まで見たこともないような満面の笑みを浮かべる夏。
そうして、俺たちは女神?から鬼神へと変貌した夏に式が始まるまでこってり絞られたのは言うまでもない。
*
式が始まると、聡は興味なさそうに俯くと、すぐに寝息が聞こえ始めた。(おいおい…ったく。)
そう思っていると、新入生代表の挨拶が始まるようだ。特に意味もなく、前に立つ代表を見る。そいつは、歩くだけで様になり、全ての人を魅力した。そして、館内を見渡し、俺と目が合うと、微笑み……って、雨美⁉
雨美はテンパっている俺を見て満足したようだった。
続いてでて来たのは、生徒会長だ。中高一貫のこの学園だが、外からの入学生も二割ほどいる。生徒会長もそのうちの一人のようで、夏に負けず劣らずのスタイルの良さだが、何より目を引くのは紺色の髪で、妖艶な雰囲気を醸し出している。
挨拶を終えた会長は舞台袖へハケるが…
ーーー刹那、彼女と目が合う。
俺は石にされたかのように、動けなかった。
「フフフッ」
彼女は笑みを浮かべると舞台袖へと消えて行った。
俺は全てを見透かしたかのようなその笑みに不安を抱えたままその日を終えた。
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