女神の友情 前編
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「ふう…。」
俺は剣を地面に刺し服装を整えた。
ー勝者…海原 緑!!ー
審判の声をあげると会場も拍手に包まれた。試合をこなす度に応援してくれる人が増えている。まだ納得できていない生徒も多いが夏前までに比べると雲泥の差だ。
ともあれ二回戦も突破し、一回戦の先輩たちほど苦戦することなく勝つことができた。視線を観客席に向けそこにいる聡を見る。
(約束は…守ったぞ…。)
俺は剣を引き抜くと控え室に戻って行った。
*
「み、緑さん!」
観客席に行くと声をかけられ、その方向を見ると菜瑠がいた。
「こ、こっち空いてます…よ。」
「ああ、悪いな。ありがとう。」
「い、いいえ!」
「「………。」」
「ついに…きちゃいましたね…。」
「ああ…そうだな…。」
「覚えてますか?前の時。」
「…覚えているよ。もちろんね。火野家・地下訓練所一ヶ月立ち入り禁止。本人たちは火傷と凍傷全治二週間。加えて巻き込まれた俺と菜瑠は風邪と軽い火傷。」
「大変でしたね…あの時は…。」
「でも今回はもっとヤバイかもな…。」
俺たちが話しているのはこれから行われる試合…夏と雨美の試合で起こるであろう惨事を考えながら、昔の出来事を思い返していた。
あの時から俺はただ二人が仲がいいだけでなく、ライバルとしてお互いを見ていたことを知った。夏はもちろんのこと、雨美も表には出さないものの負けず嫌いなところがある。つまり二人は似た者同士だった。
*
「〜〜〜♪」
「ご機嫌ね、雨美。」
「それはもちろん!夏ちゃんと戦えるからねー。」
わたしたちは控え室で準備をしていた。別々の部屋を用意していたようだけど、わたしが一緒の部屋がいいことを伝えると夏ちゃんも賛成してくれて今に至る。
「そうね…あたしも楽しみだわ。前は途中で有耶無耶になったしね。」
「そうだったねー。お父さんたちにもすっごく怒られたしね。」
「…懐かしいわね…。そういえば、またあいつ勝ったわね。」
「あいつ…?ああ!みどり君のことね。凄いよね〜、一回戦で先輩たちに勝っちゃうんだもん……ねえ…夏ちゃん。夏ちゃんは…みどり君のこと何か知ってる?」
わたしは思わず口にしてしまった。どうしても知りたかったからだ、そして夏ちゃんなら何か知ってると思った。
「…何のこと?一緒に暮らしてるんだから雨美の方が詳しいでしょ?」
違う!わたしが聞きたいのは…
「違うよ…。わたしはみどり君があんな魔法使えるなんて知らなかった…。夏ちゃんはみどり君が…」
するとわたしの言葉を遮るようにドアがノックされる。
「そろそろ準備いいですか?始めますよ。」
「はーい。すぐ行きます。ほら、行こう雨美。」
「…うん。」
言えなかった…黒崎の人なの?って。
お互い無言のまま通路を進んでいると
「さっきの話……その質問の答えをあたしが知っていたとして、簡単に話して良い内容じゃないんじゃない?」
「………。」
「本当に知りたいなら直接聞いた方が良いことも多いわよ。ともあれ、まずはあたしとの試合に集中してよね。生半可な覚悟じゃ今のあたしには一分と持たない。」
「……うん。わたしも学年主席としての、海原家跡取りとしてのプライドがあるもの。」
フィールドに出る直前、夏ちゃんは手を出してきた。
「良い戦いをしましょ。」
「うん!」
握手を交わしてわたしたちはフィールドに出た。
*
「おっ!出てきたな。うわぁー、二人ともやる気満々じゃん。」
「本当ですね…。雨美ちゃんも刀まで用意してますし…。」
菜瑠の言うように雨美は刀、正確には海原家に伝わる刀の一つ、太刀・霙を用意している。濃い青の鞘に収められているその太刀の長さは雨美の身長を上回る。
俺にはあれを使いこなすことはできなかった。間合いは取りにくいし、何よりも機動性が悪かったからだ。だが雨美はそれも計算した動きをすることで使いこなせた。
俺は別の刀を貰ったがそれはまた今度話すことにしよう。
「次の試合は…次世代、当主対決です!!まずは一人目、一年生学年主席、容姿端麗、非の打ち所がない少女…『清雅の女神』海原 雨美!!
対するは、不死鳥の如く復活を遂げた…悲劇のヒロイン!『赫灼の女神』火野 夏!!」
「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」
観客…正確には二人のファンが声をあげ熱気に包まれた。一方の本人たちはというと…
「何が悲劇のヒロインよ!!」
「まあまあ、夏ちゃん。落ち着いて。」
別の意味で熱くなっていた。とはいえ…
「相変わらずの人気だな。」
「そ、そうだね。やっぱりすごいな、二人は。」
「何言ってんだ、お前も相当だぞ。強いし可愛いし。そんなお前と俺が仲良くしてんのが不思議なくらいだ。まあそれを言ったら夏と絡んでんのも……ってどうした菜瑠?」
菜瑠は「あわわわわっ……。」と言った表現が適しているような挙動不審な状態で顔を赤くしていた。
「そ、そんな…不意打ちなんて……。」
「ん?どうした?大丈夫か?」
「はっ、はい!!大丈夫です!」
「そう?それならいいんだけど。」
変なやつだな…と思う俺だった。
*
ー始めッ!!!ー
審判によって開始の合図が送られた二人は、俺のようにすぐに相手の懐に入り込むのではなく、直ぐに詠唱を始めた。
「【津波 (Tidal Wave)】!!」
水の無いこのフィールドで空気中の水分を媒体に魔力で水を作り出した雨美。水辺で行使したのではないかと思うほどの水属性魔法が夏を襲うが
「【地獄の業火】!!」
こちらもさすがで落ち着いて詠唱すると炎と水がぶつかり合い水蒸気で辺りは白く視界が悪くなる。
しかし二人の攻防は止まらない。雨美が水、風、氷と属性を変え続けて発動すれば、夏もそれ全てを火の魔法で焼き尽くす。そして魔法が止み視界も良くなる。
「す、すごい!!すごい戦いだ!!これが一年生の試合なのか疑うほどだー!!これが次世代当主の戦いなのかー?!」
盛り上げるようにアナウンスが入り一層熱気に包まれた。
「立て続けに三つの属性魔法を使う雨美もすごいが…それ全てを火属性魔法だけで対処した夏の火力がすごいな…。」
「本当ですね…。」
あの二人は既に学生の域を越えた力を持っていた。
「さすがね、雨美。三連続は驚いたわ。」
「こっちのセリフだよ。炎だけで防がれるなんてね。」
すると、雨美は太刀を構えると飛び出して行った。すぐに反応した夏は腰から銃を抜くと発砲し、赤い弾が雨美へと向かって行き、雨美はそれを太刀を抜くと斬った。
弾は二方向へ分かれ緊急時保護シールドに当たって爆発した。
一方の雨美はそのまま突き進み太刀の有効範囲内に着くと太刀を振るったが避けられる。
しかし雨美は笑みを浮かべると魔法を行使した。
「【決壊水 (Break Water)】」
ここまで波動が伝わってくるほどの衝撃を持った水が至近距離で夏に放たれたが、夏も同じように笑みを浮かべると。
「【熱鉄扉 (Heat Iron)】!」
夏の真下の地面から赤いドロドロしたものが噴き上がってくると決壊水と夏との間に入り夏を守った。
凄まじい衝撃波が会場を襲う。
「くっ……。」
思わず俺の口から漏れる。
フィールドに目を向けると夏の前には黒く煙を帯びた鉄扉が立っていたが、その鉄扉は水の威力を物語るように凹んでいた。
「す、すごい!凄すぎる!!これが次期当主、七大名家の実力だー!!開始早々白熱した攻防に目が離せない!!」
目の前の攻防に静まり返っていた会場はその一言で熱気を取り戻し、観客のボルテージは最大だ。
「地中の金属を溶かして固める。簡単のようで難しいのにやれちゃうんだね…しかも咄嗟に。」
「これでも雨美とは長い付き合いだし、何と無くわかるわ。何を狙っているのかなんてね。」
「そうだね…。昔…そう…あの頃からは考えられないね、あの頃のわたしは夏ちゃんみたいな子とは絶対仲良くなれないと思ってた。でも今はーーーー」
*
「今日は火野家の御息女、夏ちゃんと会ってもらうよ、いいかい?夏ちゃんは雨美と同い年だからこれからも何度も会うことになるだろうし、いずれ雨美たちはそれぞれの家を継ぐんだ。昔から火野家と海原家は親しくしている。雨美たちも助け合い、一緒にこの日本を引っ張り守っていくんだよ。わかるかい---?」
そんなお父さんたちの…いわば政略からわたしは初めて夏ちゃんと会った、まだ五歳の頃だった。
(うわぁ〜かわいい。)
初めの印象がこれだった。
オレンジ色の肩までかかる髪は綺麗でクリッとした目も子供らしく全体的にあどけなさがあった。だけど、話を始めるとその印象は一変した。
口調は五歳とは思えないほどしっかりとしていて、自分の意見をしっかりと持っていたが、友達になるには親しみにくい子だった。
海原雨美。どんな子なのか密かに楽しみにしていたあたしは驚いた。
腰まである長い髪は黒く、それ以外の色を受け付けないほど艶があり綺麗で、穏やかな柔らかい目であたしを見ていた。本当に可愛かった。でも何も考えてなさそうだった、たとえ自分たちが五歳であってもあたしには、七大名家の跡取りとしての誇りがあった…でも彼女からは何も感じない。だから仲良くなれそうにはなかった。
とても成功だったとは言えない交流から数年。小学校へと入学したわたしはクラスの中にいつまでも馴染めていない子を見つけた…夏ちゃんだった。それでも成績は優秀でわたしといつも競っていたけど、近づき難い雰囲気から夏ちゃんに寄っていく人はあまりいなかった。
いつも成績は上位だった…でも一番にはなれなかった。いつも上には海原雨美がいたからだ。何でもできて人付き合いが上手くいつも彼女の周りには人がいた。今思えば少し嫉妬していたのかもしれない…そんな時、七大名家に事件が起きた。でもあいつは生きてた…そしてここに入学してきた。
最近家族が増えた。いつも悲しそうで…そんな彼…みどり君は何だか夏ちゃんと仲が良い。元気を取り戻したみどり君は家族にも見せたことの無いような顔で笑っていた。それが何だか悔しかった、わたしにも向けて欲しかった…心が落ち着かなかった。
そんな状態のままわたしたちは高学年へとなっていった。そんな時わたしは偶然夏ちゃんが変な男たちに連れていかれるところを目撃した。
(ど…どうしよう……。)
所詮わたしは小学生、名家の跡取りとはいえ実力はまだまだだった。でも目の前で連れていかれる彼女を見捨てることはできなかった。
「待ってよ!火野さんを……夏ちゃんをどこに連れていくの!!」
男たちはもちろん、夏ちゃんも驚いていた。
「あ、あんた…。」
「夏ちゃん…。今助けるからね!」
魔力を込めて魔法を詠唱しようとするが、その前に男たちの魔法が放たれた。
「きゃぁぁあっ!」
「海原さん!」
「そうか…やはりお嬢ちゃんは海原家の子か…。おい!こいつも連れていけ。」
男たちがわたしを捕まえようとした瞬間、男たちの車が激しい音を立てて爆発した。
「な、なんだ!何があった⁉」
爆発し、炎の向こうから現れたのは男たちと同様に黒いスーツを着た赤い髪の男の人だった。
「ひ、火島!!」
夏ちゃんは声をあげてその男の人の名前を呼び、その声には安堵が含まれていた。
「くっ……これ以上近づくとこの娘がどうなっても知らねぇぞ!」
男たちはわたしから火島さんに注目し背を向ける。夏ちゃんを捕まえている男はナイフを持っていた。
「ほら!離れろよ!さもないと…。」
そう言って首元にナイフを突きつける。
「構わないわ火島!この男たちを焼きなさい!」
「しかし……。」
火島さんは躊躇っていた、人質を取られていては難しいだろう。
(あのナイフさえなければ…。)
わたしは夏ちゃんが苦手だった…でもそんな彼女を助けたかった。
(わたしが…やるしかない!)
わたしはずっと練習してきた魔法、大気の波を使って意思疎通を図る干渉魔法を使い火島さんにメッセージを送る。
ー火島さん!わたしです。海原雨美です。ー
「!!」
一瞬驚いたような顔をしたが、相手には気づかれていない。
ーわたしが今から魔法であのナイフを弾きます。その隙にこの人たちを…夏ちゃんを助けてください!ー
火島さんは小さく頷いたのを確認すると狙いを定め小さく魔法を行使する。狙いはナイフ!手から弾けばそれで火島さんが何とかしてくれる!
「【水玉】!!」
「なっ!!」
真っ直ぐナイフに向かって放たれた魔法は見事に命中し、音を立ててナイフが地面に落ちる。そして男たちがこちらを向くと同時に火島さんが動いた。
「【滅火】」
途端に男たちに火がつき跡形もなく消えていった。わたしは緊張の糸が切れ、ドッと疲れがこみ上げてくる。
すると火島さんと夏ちゃんがこっちに近づいてきた。
「助かりました、雨美様。貴女のおかげで夏様も無事でした。本当にありがとうございます。」
「い、いえ。そんな…。」
するとずっと俯いていた夏ちゃんが顔をあげる。その顔は少し赤かった。
「そ、その……さっきは…ありがとう…。海原……雨美のおかげで助かったわ。」
「ううん。わたしが助けたいと思ったから助けたんだよ。」
「……ありがとう。」
その日からわたしには一番のライバルで一番の親友ができ、夏ちゃんの周りにも少しずつ人が集まり始めた。
*
「ここからが第二ラウンドだよ!」
「臨むところよ!!」
【銀世界 (Silver Ice)】
雨美が魔法を発動すると雨美を中心に青と白の澄んだ銀世界が広がっていくが夏も黙ってはいない。
【聖火 (Sacred)】
夏を中心に大きく円を描き、何があっても消えることのない炎で対抗し、二人を分け隔てるようにフィールドの半分は生命の死んだ銀世界に、もう半分は消えない炎が煌めいていた。
終わらせるつもりが…次に続きます。
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