石川聡の負けられない二回戦。
今回は早くかけました。
次は…新作の二話目いくか…この続きを書こうか…。
「ほらあそこ空いてるよ、みどり君。」
本戦二日目午後、本日最後の試合は都合から二回戦の第一試合…つまり聡の試合だ、それを雨美と見にきたというわけだ。
相手は二年生のイルザーク家のガラード、クラウ=トーマス先輩。
「なあ、トーマス先輩ってどんな人なんだ?」
「うーん…。実力はノエル先輩のガラードをしているほどだから強いらしいよ。戦闘方法は主に武術だとか。」
「武術か…。なるほどな。」
「うん。はっきり言うけど…多分、石川君は勝てないよ。みどり君でさえ厳しいかも…。」
「はははっ!確かに俺じゃ無理かもな。でも、聡は違うぜ。まあ見てろよすぐにわかるから。」
雨美は不思議そうに首をかしげていた。
*
あいつは勝った。
本当のことを言うと緑が風雅先輩たちに勝つことは無いに等しいものだと思っていた。
確かにあいつは強い、いつも驚かされるしまだ隠していることがあるような気がする。でもそのあいつでさえ政府公認のデュオである先輩たちには勝てるはず無いと思っていたが、内容はどうであれ結果は勝ちだった。
しっかりと戦闘服を纏い、腰にも小物のナイフや小刀を準備する。
相手はガラードだが魔法よりも武術を使う武闘派。ならば勝算はある、アレは緑との試合のためにまだ使うわけにはいかない。
「一足先に三回戦を決めさせてもらうぜ、緑。」
俺は控え室を後にした。
観客は程々、今日の最終戦だからついでに…というのがほとんどだろう。イルザーク家のガラードに、落ちこぼれEクラスの男子生徒の試合ならば好んで見に来る人は少ないだろう。
場を盛り上げるために放送の生徒が面白おかしく、かっこよく俺たちを紹介する。
俺にとって、U18・WMCが興味ないわけではない。しかしそれ以上に緑と戦い見極めたい……否、それは建前だ。ただ純粋にあいつと本気で戦いたいんだ!
だからこそ…負けられない。
開始の合図があった。
トーマス先輩はやはり真っ直ぐ向かってきた、脚には魔力を纏っている。
(当然、武闘派なら纏ってくるよな!)
俺も迷わず向かって行く、腰から日本古来の武器クナイに似たナイフを取り出すと投擲する。
(そのスピードで向かってるんだ、簡単には避けられないだろう)
しかし先輩の三メートル内に入った時、地面が盛り上がり先輩を守るように土壁ができた。
(なっ!大地魔法…!)
先輩は壁から地面を蹴り飛び出して来た、俺は小刀を取り出すと斬りかかり、先輩の魔力を纏った拳とぶつかり合う。
「凄い…拳ですね…。」
「まだまだこれからだぞ、坊主。フンッ!」
そう言うと先輩は拳から魔力を放出させた。
「ぐあっ!!」
俺は大きく後ろに弾き飛ばされた、手にあった小刀は刃が折れ使い物にならない。
「武闘派って聞いていましたが…魔力操作も上手ですね…。」
唇を拭うと指には血がついていた。
「魔力あっての最強の武術だからな。武闘派だからといって魔力が、魔法が使えないわけじゃない。」
「はっ!その通りだな。敬語ってあんまり慣れないんだよな…。勝負の間は敬語じゃなくてもいいよな?」
「生意気だが…いいだろう。それを負けた時の言い訳にされても困るからな。」
「そうこなくっちゃ!」
俺は腰から小刀を二刀取り出す。
磨き上げられた刃には自分自身と相手を映し出す“明鏡”
何も映さず光全てを呑み込むように黒く刃がボロボロとなっている“冬黒”
「さあ!ここからが本番ですよ先輩!」
脚に魔力を纏い、思い切り地面を蹴る。
「なっ!」
瞬間、俺は先輩の目の前にいた。腹に入り込むように低い体勢のまま刀を振るが、僅かに後退され空を切る。
しかし追撃を怠らない。魔力を纏ったままの右脚で蹴りをいれる。
「ぐっ!」
「まだまだですよ!!」
猛襲、更なる追撃、一度この二刀を持てば俺は歯止めを失う。手を休めることはない、ただひたすら自分の勝利のために。内にある本当の衝動に気づかぬふりをして。
「調子に……乗るなっ!!」
気がつくと俺は両サイドから岩に挟まれていた。
「うっ…。」
「君は強いね。石川君…だっけ?俺もその本気に答えるよ。」
先輩は腰から西洋のものと思われる剣を抜く。
「っぐぐぐぐ……。ウラァ!」
「魔力で岩を斬ったか…さすがだ。これならどうだ!」
先輩は剣に魔力を纏い振るう。
二刀を交差させ防ぐがこちらが持ちそうにない。
俺は明鏡の角度を変え光を反射させて先輩の隙を作る。
「まぶしっ!くそっ!小細工を!」
俺は距離を十分に取ると冬黒の先を先輩に向ける。
「王手。」
*
「凄い…。」
「あいつは大技は持っていない。でも状況に合わせた的確な判断、そしてそれを実行する身体能力を持っている。」
「でも決め手が無いね…。」
「まだだ、あいつが凄いのはこれからだよ。あいつを見て何か違和感はないか?」
「違和感…?」
雨美は聡の姿を全身くまなく見るとある事に気がついたようだ。
「もしかして…でも…そんなことって…。」
「そう…。あの脚に纏っている魔力を見てわかるとおり無色。だが魔法が使えないわけじゃない、特化した得意な魔法属性が無いんだ。つまりどういうことかと言うと…ほら、始まったぜ。もうあいつの勝利への駒の動きが決まった、先輩は詰んだな。」
*
「初めは香車。付加…雷。」
冬黒の先から魔力が溢れ出し、一瞬で伸びた魔力の刃は先輩を貫いていた。
「何だ…これは……痺れるぞ…雷…?」
「まだだ!」
次は明鏡を先輩に向け、こちらも同様にして先輩を貫いていた。
しかし次は貫いた場所から凍り始めていた。
「付加…風、水。」
「ぐゔぅぅっ!」
「次は飛車。」
伸びを縮め、一瞬で先輩の前まで来ると右手に持つ冬黒は斜め左下へ、左手に持つ明鏡は斜め右下へ斬りかかる。
服は焦げ傷口は深かった。
「ぐあぁぁぁっ!」
「付加…火。」
「………くそっ!」
先輩は膝をついた状態でがむしゃらに剣を振るった。
「先輩の負けだ。降参したらどうですか?」
丁寧にいったのが癇に障ったのかキッと睨まれた。
「うるさい!」
またも剣を振るうが当たるはずも無い。
「そうですか…残念です。」
俺は冬黒を腰に戻すと右手に明鏡を持ち直す。
「王手と宣言され、逃げる場所もなく降参しない王はもう取られるほかありませんね。手加減はしますんで。」
*
聡の右手に持つ明鏡が一際大きく光を放った。とても綺麗な虹色の光を。
そして目を開くと地面が抉られ、ぐったりと気絶している先輩の姿と明鏡を腰に戻し勝利宣言を待つ聡の姿があった。
「一体…何が?ねぇ、みどり君。」
「あの光は【虹光の波動(Rainbow Undulation)】全魔法属性を付加させ放つ魔法。俺はあの光が好きなんだよな…何回かしか見たことなかったけど、俺はあれが世界の在り方だと思ってる。昔は魔法属性で人間が分けられてただろ?その名残りが七大名家。そんな名家も威張り散らし力を誇示する一族も皆平等で対立し合わず上手くやっていけると良いのにな…あの光のように協力し合えばさ…。」
「…そうだね…。」
*
「この試合の後、あの少女に接触を試みるとしよう…。どうも予想とは違い思ったほど負の感情が育たなかった…。しかしこれは十分に効力を発揮するだろう。」
白衣の男はポケットから薬を取り出した。
カプセル型のそれは黒くとても合法なものには見えない。
「あぁ…楽しみだ…。学年主席、七大名家次期当主であるあの少女はどんな力を見せてくれるのか…。隣にいるのがオリジナルか…。君たちのお陰で我々の研究は順調---」
「何が順調なのかしら?」
白衣の男は驚きすぐに警戒する。
「最近あの子は気づいてないみたいだけど、雨美に向けてなーんか変な視線が向いてるなーって思ったらあんただったのね?話は聞いたわ、その薬が研究成果?それも緑に関係している。」
「ちっ!」
白衣の男は逆のポケットから注射を取り出した、中には黒い液体でそれを迷わず男は射った。
「ぐっ…………。フフフフフッ!湧いて来るぞ、力が湧いて来る!」
「魔力の感じが変わったわね…。」
すると男は一瞬で距離を詰めて来た。
(速い!)
「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ー【滅火】ー
彼女に触れる寸前で男の身体は上半身と下半身とに焼き分かれた。切断面も焼け焦げ血は出ていない。
「え………っ……ぁ…。」
「大丈夫ですか、夏様。」
「ええ、大丈夫よ。助かったわ火島。」
「いえ、当然のことです。」
「それよりこいつは一体…。それにこの薬…。」
夏は男のポケットから薬を取り出す。
「この男は緑のことをオリジナルと呼んでいたわ。それにこの注射したあとの男の魔力の波長が僅かだけど緑に似ていた…。あくまで推測だけどこの薬はゴールデンウイークのものと同じように思うわ。つまり、くろ…緑の一族の力を得る薬…。どう思う火島。」
「何ともですね…。この男の正体もわかりませんし…もう少し調べる必要がありそうですね…。その薬は研究部に回しておきます。」
「ええ、お願い。」
「ではお帰りになりましょう。死体の後始末はこちらで済ませておきますので。明日は雨美様と試合なのでしょう?」
「そうだったわね…。」
(負けないわよ…雨美。)




