校内戦~予選七日前~
若干コメディーっぽくなったかもしれません…。
「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
「まだまだ、ほれ!!!」
剣と剣がぶつかり合う音が響く。どちらもその剣は【魔力武装】によって強化され振るうたびに魔力で軌跡を描いている。尾を引く魔力が消える前に次の魔力で軌跡を描く。この剣舞を見る人は皆口を揃えて綺麗だと言うだろう。無駄のない動きは彼らのレベルの高さを物語っている。
体制を崩すために先生は俺の脚を払ってきたがそれをジャンプすることで躱し、空中で蹴りを放つがあと少し届かない。しかしそれは数ヶ月前までの話。俺は魔力を脚に集中させると脚の先から擬似的に魔力で脚を作る。が、読まれていたのか後ろへと躱される。
「ふう…。だいぶ使いこなせるようになったな。一応【魔力武装】に関しては基礎を教えた、後は自分で好きなようにアレンジしていくといいだろう。」
ゴールデンウイークの事件から二ヶ月経ち、夏休みが始まろうとしていた。
あれから変わったことといえば蛇野生徒会長が学校を転校した。ということになったことが一番のニュースだろう。変わって副会長が後任として残りの数ヶ月会長となることになった。
個人的なことをいえば夏はあれから学校に来ていない。たまにメールするとちゃんと返信も来るし治療も順調でむしろ強くなっていると話しているが…本当にカウンセリングなのか怪しくなってきた。あと神宮さんが学園を辞めた。どこに行ったのか誰も知らないし、神宮さんのいたB組では色々噂が立ったが、元々目立つような人では無かったらしいのですぐに噂は消えたらしい。なぜ彼女があの場にいたのか。それを含めて彼女には謎が多い。
俺としてはこの二ヶ月で【魔力武装】をマスターした。これは闇魔法でもないので学園で使うこともできる。ただわかるやつには色でわかってしまうのでそれなりの注意も必要だ。しかしこの学園でもわかるやつはそういないだろうと踏んでいる。もしばれたとしても一応学園長にはじいちゃんが話をつけてくれている、ばれた時は上手く誤魔化してくれるだろう。
そんなこんなで今最後の修行を受けているはずだがどうや違うらしい。
「これで最低限の力はついただろう…でもお主にはそろそろ自分だけが持つ力について考えて欲しい。」
「俺だけが持つ力…。」
「お主はなぜ自分だけが五大属性魔法を使えないか考えたことはあるか?」
そういえば考えたことはない、ただ俺には才能がなくてこれは受け入れるものだと考えてきた。だから体術を鍛えたしやれることをやってきた。
「お主と俺が初めて戦った時を覚えているか?お主が追い込まれた時、俺が放った火属性魔法をお主は消したな…。あの時お主の意識ではなかったかもしれないが、紛れもなくお主がお主の身体が使ったことには違いない。つまり推測だがお主が五大属性魔法を使えないのは、お主が五大属性魔法を打ち消す力を持っているからではないかと考えている。そうすれば色々辻褄が合う。明日からはこの力を目覚めさせるぞ、今よりずっとハードになるから心して来いよ。」
五大属性魔法を打ち消す力。もしこれが本当だとしたら俺には強い武器になると俺は大きな期待をした。
*
計画通りに事が運んでいる。ゴールデンウイークの事件で緑の胸には刻印が…聖痕ができた。そして夏までにあいつは完璧に【魔力武装】をマスターした。そして次のこの力を目覚めさせることで第二段階は完了するらしい。未だに奴らの計画はわからない…一体何が起ころうとしているのか…。
この夏が大きな転機になることは間違いない。
俺がやることはただ一つ、緑の為に緑の力を引き出してやる。それだけだ。
*
クラス内はいつにも増して賑やかだった。それも当然だ夏休みが迫っているのだから。もちろん俺だって楽しみだ、修行があることは間違いないが休みだって沢山あるだろう。
そんなことを考えていると聡に声をかけられる。
「なんかみんな盛り上がってるな。」
「だな。よっぽど夏休みが楽しみなんだろうさ。」
「だろうな…正直俺も楽しみだからな。何と言っても初めての校内戦があるんだ、E組のやつらだって楽しみに決まってる。それに成績次第では来年から上位クラスに行けるからなそれに…」
「ちょっと待て。…お前今なんて言った?よく聞こえなかったんだが…。」
「ん?だから来年から上位クラスに…」
「そこじゃないもっと前だ。」
「校内戦……。」
「「…………。」」
「は、ははっ…。まさか知らなかったってことはねぇよな?」
「ま、まさか。そ、そんなわけないだろ。」
「……そうだよな!!校内戦のことを知らない分けないよな。いや俺も一瞬でもお前を疑っちまったぜ。ははははっ!!!」
「知らないわけないじゃないか。はははっ!!」
「「はははははっ!!!!」」
・・・・・・。
「…って、マジで知らねーのか!!緑!」
「あ、ああ。今初めて知った…。」
「マジか…。校内戦ってのはそのままの意味だ、はじめに学年別に7ブロック作るんだ。ああでも一年は6ブロックな。で、そのブロックでトーナメント戦を行って各ブロックの優勝者が本戦に出られるんだ。本戦ってのは各学年のブロックの優勝者たちでトーナメント戦を行うことだ。先生たちも見てるわけだから優秀だと判断されれば来年は上位クラスの可能性が高くなるってわけだ。」
「なるほどな…。」
「だがな…それだけじゃないんだ。この校内戦は実は冬にあるU18・WMCの選考会も兼ねてるんだ。」
「本当かそれは!!」
「ああ。だからみんな盛り上がってるように見えるかもしれないが、俺からすれば躍起だってるように見えるな。Eクラスとはいえ、どこの家もそこそこ有名な一族揃いだ。誇りがあるんだろう。」
「そうだな…。」
U18・WMCとは十八歳以下で行われるWorld Magic Championshipの略でこれは世界各国から選抜された魔法使いたちが技術や戦術を競い合う大会だ。これに選ばれれば将来はほとんど約束されたと言っても過言ではない。そして何より魔法使いであれば誰もが一度は憧れるものなのだ。
—閑話休題。
「で、夏休みと言ってもいつからなんだ?」
「さあな、そればっかしは俺にもわからねぇ。無灯のおっさんが言ってくれるだろう。」
「おっさんって…仮にも担任だぞ…。」
まあ確かにおっさんだけど…。
「まあまあ細かいことはいいじゃねぇか。ほら噂をすれば…。」
「よ~し。静かしろー。俺もあんまり大声だしたくないしな。まあなんだ…。盛り上がってます通り夏休みということで校内戦が始まっぞー。何で夏休みまで学校に来なきゃ行けねーのかよくわかんねぇが…上が言うからよ…だりぃなぁ…。まあそういうことで、八月一日から始まって一週間くらいで予選を終わらせる。どのブロックかは当日発表な。以上。じゃあ職員室帰るわ…。」
「一週間とちょっとか…。調整するに丁度いい期間だな。」
「ああ。そうだな…。」
「…俺は…本気の緑と戦いたい。」
「何言ってんだよ、俺はいつでも本気…」
いつもと違う聡の目には本気の決意が灯っていた。
「…今回も今まで通り本気でいくよ。」
「…そうか…期待してる。」
「ああ。」
微妙な雰囲気のままその日は終わった。
*
そして俺たちは…いや俺たちだけじゃない。学園の生徒は皆、八月一日から始まる予選に向けほど良い緊張感の中夏休みに突入した。そして七月二十四日、予選を一週間前に控えたこの日。俺の力を引き出す唯一の方法。一言で言うなら“荒療治”。俺は今四方八方火炎に呑み込まれようとしていた。
「ま、待て!!ストップ!!無理だって!!できる気しねぇーよ。てか、方法もわかんないんだぞ!!まっ!本当に死ぬ!!!!ぐあぁぁぁっ!!」
「……はぁ…また失敗か…。」
「…何がまた失敗だ…。こっちの身がもたねぇよ!この意味わかんねぇ封印術で闇魔法は使えないし…。」
「…人は何かに追い込まれた時、覚醒するのです……。」
「…って、何悟った風に言ってんだよ!!」
「冗談はこれくらいして…。状況は芳しくないな…。やはり、あれしかないのか…。おい緑!!ちょっとこっちに来い。」
「ん?何だよ次は、また変なことするんじゃないだろうな?」
「安心しろ。ほれ、もっとこっちに。」
俺は先生の正面に立つ。すると先生はデコピンの構えを取る。
「おいおい、何の冗談だよ。」
「いいか、肝心なのは自分の中に力があると感じることだ。自分を信じろ!!お前には力があるからな。それだけだ。ほら…達者でな。」
ピンッと大した力ではないが俺は軽く後ろによろけるが、後ろにはあったはずの床がなかった。
「えっ?」
最後に見たのは先生の笑顔だった。
「うああぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺は真っ逆さまに暗い深みへと落ちて行った。
*
「なんだ…これは…。」
目を覚ました俺が見たのは鬱蒼と生い茂り空を覆い隠す樹々。俺がいたのはジャングルの中だった。
「待て待て…。まず状況を整理しよう。俺はデコピンをされた、間違いないな。そして軽くよろけるとあるはずの床がなかった…そして転落。気がつけばジャングルの中…ってどういうことだ!!!」
しかし当然応えるものはなく虚しく響くだけだった。
ふと、頭の上から液体が降ってきた。
「ん?なんだこれ…雨か?…にしては何かネバネバしてるぞ…。」
俺が見上げるとそこには大きく口を開いた恐竜がいた。白い牙を俺に向けその目は捕食者だった。
「は、ははっ、ははっ。」
乾いた笑がでる。俺は一目散に逃げ出したが、目を血走らせながら恐竜も追いかけて来る。
「あれはヤバイだろ。本当に。」
必死に逃げ俺は樹の影へと隠れる。
(ここまでくれば…安心だろ。)
が、それは甘かった。俺のすぐ隣の樹々たちは一瞬のうちに焼失した。
(え、えぇぇ…。)
恐る恐る影から除くとさっきの恐竜の口から火が出ていた。
「もう、笑も出ねぇよ!!」
俺は再びジャングルを駆け出した。
*
あれからどれくらい経っただろうか…辺りはすっかり暗くなり夜のジャングルは不気味さを増した。あの後俺は雷を纏う虎、(恐らく)大地魔法を使うゴリラ、風を操る翼竜。闇魔法が使えない今、常に死と隣り合わせにある。
そして今淡々と話しているが俺は絶対絶命の危機にある。そう、例の奴らに囲まれている。
「とりあえず、魔力はあるんだ…。【魔力武装】!!」
すると虎が飛びかかってきた。素早くよけた俺は右手に魔力を集めると殴りかかるが横槍を入れられる。ゴリラだ。しかし気づいた時には遅く殴られていた。
「ぐはっ!!!」
(くっ、なんて重いんだよ…。)
しかし追撃が来る気配は無いが詰まれたようだ。周りの動物たち魔力が集まっていく。
直感が伝えて来る…このままだとやばい、このままだと死ぬと。
--自分を信じろ!!お前には力があるからな--
先生はそんなこと言っていたが、使い方もわからないような力をどう使えと…。
--肝心なのは自分の中に力があると感じることだ--
俺の中に…力が…。
ドクッ!
俺の力ならこの状況を乗り切れるかもしれない。
ドクッ!
信じるんだ。自分の力を!
ドクッ!
そして大地は隆起し、火炎が迫る。水と電撃は俺を撃ち抜こうとし、風は切り裂くように迫る。
こんなに時間を長く感じたのは初めてだ。ゆっくりとしかし確実に迫る死。だがやり残したことはたくさんあるんだ、こんなところで死ねない。死ぬわけにはいかない!
俺は死を拒絶する。
ドクッ!!
一際大きく鼓動し体内を魔力が巡る。これから力が発動することを身体が感じている。俺の拒絶する力が発動する!
「【拒絶(Denial)】。」
シンプルに唱えられると同時に全ての攻撃が身体に触れた。しかしその瞬間全ての攻撃が霧散していく。
五大属性魔法に対する絶対防御。しかし代償も大きかった。俺の魔力はほとんど空になり膝をつく。
「はぁはぁはぁ……。」
すると辺りが一瞬で光に包まれる、目を開けるとそこには先生がいた。
「コツは掴んだようだな。」
「…はぁはぁ…まあな…。」
「ゆっくり休むといい。」
「そうするよ…。」
俺はその場に倒れ込むと徹夜明けのように眠っていった。
とりあえずチート能力の全貌が明らかになってきましたね(笑)でもチート過ぎてもあれなので他にも制限を考えてます。




