後日談~高校生活は波乱の予感?~
お久しぶりです!合宿も終えこの話で一章も完結です。これからもよろしくお願いします。
目の前に広がるのは青く澄んだ空でも無ければ病院の白い天井でもなかった。
“世界の終わり”
そう言うべきだろうか…空には厚い雲が光を遮り地上は荒れていて、その傷跡は人間のつけることのできるレベルを超えている。
そして世界をここまで破壊したであろうものたちも視認できる、それは七人の人間と七柱の人間あらざる異形の生物だった。一般的にはこれらを“天使”と呼ぶのだろう…しかしその姿は悪魔のようでもあった。
状況としては一対六…睨み合いが続いている。俺はこの状況に見覚えがある…多少違う点もあるが間違いない…これは俺と姉さんが好きだった本『七人のそうぞうしゃのてんしとあくま』とほとんど同じだ。
そして人外の戦いが始まったが実力は七組とも互角のようだが、明らかに一対六では少数が不利だ。ついに追い詰められると中でも一際輝く天使はさらに近づく。
--どうしてだ!何故我を…--
--そうだ!何故俺たちを!--
しかし答えることはなかった、そして輝きは一層増し大規模な封印魔法が発動した。封印が完了されるその瞬間俺は見た…悲しく愛おしく葛藤が入り混じるその表情を。この状況はやむ終えないものだったと…彼女らは誰よりも彼らを愛していたのだろう…。
*
目を開けるとそこには白い天井が広がっていて、今回は病院のようだ。
俺は一先ず安堵した。無事戦いに勝ち生き続けられたことを、しかし同時に自分の未熟さを悔いたーーまだまだ俺は強くならなければいけない。
あの後どうなったか知りたかった。神宮さんには改めてお礼も言いたいし、色々聞きたいこともあった。すると部屋に看護師さんが入ってきて俺を見ると驚いたように目を見開いた。俺に「ちょっと待っててね、今すぐ先生呼んでくるから。」そう言うと慌てて出て行った。その後やって来た若めの医者は俺を診ると、もうしばらく安静にしたら退院してもいいと言ってきた。
看護師さんが驚いたのも当然だ。本来はいつ目覚めるかもわからないくらいの状態だったらしい。それなのに俺はたった三日で目を覚まして、容体も安定していて驚くべき回復力だそうだ。
この病院には雨美たちと一緒に誰かが運んでくれたようで、玄関に置かれていたのを看護師さんが発見して今に至るそうだ。雨美たちも心配はいらないそうですぐに退院したらしい。それを聞いて俺も安心した、とりあえずみんな無事らしい。しかし四人をここまで神宮さんが運べるとは考えにくい…一体誰が…?
ぼーっと、何もすることがなく外を眺めていると部屋をノックされた、俺が応える間もなく入ってきた人は俺へと駆け寄ると飛びついてきた。
「みどり…君。よかった…無事で。」
「…雨美…。大丈夫だよ俺は。お前こそ大丈夫か?ごめんな、怖い思いさせて。」
「ううん…心配したんだよ…。」
見たところどこも痕に残るような怪我してないようで安心した。ふと顔をあげると少し離れたところに目を赤く腫らして立っている菜瑠がいた。
「菜瑠も悪かったな。怪我は大丈夫か?」
「…は…はい。全然…大丈夫です。…本当によかった…緑さんに何かあったら…わたし…。」
泣き出してしまった二人の頭を撫でながらあやしてやると次第に落ち着きを取り戻していき、いつものような笑顔が戻った。
「そうだ。あいつはどうしたんだ?夏は無事なんだよな?」
二人の顔がみるみる曇っていく。
「実はね…あの時会長さんの幻術にはまって…みどり君を撃ったらしいの…それでショックから立ち直れてなくて…。あれから毎日会いに行ってるんだけど全然会ってくれなくて。」
「そうか…そんなことが。」
「このままだったら夏ちゃんは銃どころか魔法すら使えなくなるかもしれません…カウンセリングの先生が言ってました、心のダメージが重傷だって。だから緑さん…夏ちゃんを助けてあげてください。」
夜、俺は昼間のことを考えていた。とりあえず夏にメールは送ったが当然返信は来なかったし、電話しても出ることはなかった。直接会うしか方法はないようで、それを考えると居ても立っても居られなかった。早くしないと手遅れになる…そんな気がした。
*
日本某所、とあるビルの最上階にその組織の本部はあった。ネオンサイン輝く街並みを見下ろせるこのビルは全てこの組織の所有地だ。そこに若い男が二人話をしていた。
「---と言ったところが今回の顛末だ。俺の見る限りではやはりあいつの力は強力だぞ。早いところ手を打つべきだと思うんだが…。」
「……まだだ。今手を打ったところでは一時的な結果しか得られないだろう。それよりも神宮楓だ。」
「彼女は未だに拒んでいるがあいつには異常な執着を持っている。あいつを引き入れることで間接的にでも彼女とのパイプができる…その点で考えても先にあいつに手を打つべきだ。」
「だめだ。本当に求めた時こそ最良の結果が得られる…それまではコンタクトはなしだ。引き続き監視を続けろ。」
「…っ!…わかったよ。」
不満そうに部屋を出て行ってしまった。
残された男はタバコを取り出すと火をつけて一服する。部屋にはタバコの火だけが灯り明かりは一切ない。
「“スコータイ”か…。“幸福の夜明け”とはよく言ったものだ…。決してあいつを死なせてはならん。あいつは俺らの希望だ…頼んだぞ卓。」
*
彼女は軽く傷の治療を受けるとすぐに謁見の間に連れていかれた。
「ダメだよラミア、勝手に組織のこと話しちゃ。任務は失敗だし、これは銀もご立腹じゃないかな?」
「……っ!」
「はははっ!冗談だよ、彼はもうすぐここにやって来る。それに彼は簡単に仲間を殺したりはしないのはラミアが一番知ってるよね?じゃあ僕はお腹が空いたから食事にするよ。今日は誰にしようかな?」
楽しそうに行く姿は子供のようだが、あれは人の何倍もの時間を生きた化け物だ。人の血と肉と骨を喰らい何一つの残さない。
「よう!久しぶりだなラミア…今は蛇野綾…だったか?」
「はい!今回の任務…本当に申し訳ありません。」
彼は彼女の元に来ると顔をぐっと近づける、彼女はきっと顔から火が出そうなほど恥ずかしいだろう。
「よかったよ。ラミアが無事で…痛かっただろ?任務は失敗したがちゃんとデータも取ることができたし状況も決して悪くない。よくやってくれた。暫くゆっくり休め。」
「はっ。ありがたきお言葉…。」
彼女は嬉しそうにそして彼に酔ったように応えるとここから去って行った。
「相変わらずね。あの娘貴方に惚れてるわよ。」
「紫か…。なにあの女は利用する価値があるだけだ。上手く利用するにはそれなりの信頼も必要だ、好意を持たれるなら尚扱いやすいだろう。違うか?」
「フフッ、本当悪い人。まあでも彼女のおかげで計画通りいっていることは確かね…本当にこれが成就すれば緑は…わたしたちは昔みたいに戻れるのよね?」
「…心配はいらない、願いは叶う。」
「……ならいいのだけど…。」
そう言って去って行った。
「ハッハッハ!何もかも順調だ!これが成就すれば平和な世界が訪れる!絶対に創り上げて見せるからな幸せで平和な世界を。見ていてくれよ…氷花。」
首にかかるロケットペンダントには小さな女の子が満面の笑みを浮かべていた。
*
退院した俺はゴールデンウイーク最終日夏の家…火野家本家に行くために部屋で着替えていた。
鍛え上げた肉体は傷も多いが今一番目が行くのは間違いなく左胸に残ったこの刻印だろう。
紅い羽根は大きく広がっていて、どう考えても目立つ。痣といって誤魔化すには無理がある。色々と対処を考えないといけないようだ。
たどり着いた火野本家は相変わらず広くさすがは名家というべきだ。
とりあえずインターホンを鳴らすと使用人が出たので夏の見舞いに来たことを告げると、夏は誰が来ても追い返すようにと伝えているようで中には入れてくれなかった。
「これは…しょうがないよな…。ああ、間違いないこれは緊急事態でやむ終えないことだ。」
俺は自分に言い聞かせると【象悪】を使って火野家に張られている結界に綻びを作り、素早く中にはいると細心の注意を払って夏の部屋へ向かった。
部屋の前に着くと改めて気を引き締める、夏に声を上げられてしまえばすぐに使用人がやって来るだろう。ノックすると中から返事がする。どうやら元気ではあるようだ。
「誰?お父様?って…み--」
声を上げるその前に俺は夏の口を手で塞ぐ。
「悪いな夏。話があるんだ、聞いて欲しい、だから声を上げないでくれ。」
そう言うと夏は部屋の中に入れてくれた。
初めて入る夏の部屋は意外にも人形なども多く置いてあって女の子らしい部屋だった。
俺が部屋を見ていると夏が言った。
「ねぇ…あたしまだ心の整理が出来てないの…。銃を持てば手が震えて撃つこともできない。魔法だって傷つけてしまうかもしれないって思えてきて発動できない!暫く緑とは会いたくなかった…一方的だけどちゃんと話せるかわからなかった。」
「ごめんな…夏。俺がもっと強ければ…お前が苦しむことなかったのにな…。」
お互い言葉を発することが無いまま、時間だけが過ぎて行った。
「…あたしは暫くカウンセリングが続くから学園は休むわ。あたし…火野の後継者なのに…情けないよね…。」
「夏…。」
そんなことない。そう言ってやりたかったがその言葉を遮るように言ってきた。
「大丈夫。あたしはこんなことで挫けるような女じゃないわ、それは緑もわかってるでしょ?必ず夏までには帰ってくるわ……べ、別に夏と夏をかけた訳じゃないから…。」
顔を赤くして照れたように言うと顔をそらした。
そしてどちらともなく笑い始めた、夏にいつもの笑顔が戻った。もう大丈夫のようだ俺たちは待って応援してあげればいい。そして俺はもっと強くなる、夏が帰ってくるその時彼女が同じ思いをしなくて済むように。
俺の高校生活は始まったばかりだ。この先に何があるのかは誰にもわからない。
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