合同修練
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「えっ?」
「だから、今日は三年のA組と一年のA組、そしてうちの三組で合同修練があるんだってよ。」
明日からゴールデンウイーク。俺は今日の授業を適当に消化し部活もそこそこに早くゴールデンウイークを迎えたかった。とはいえ、ゴールデンウイークはもっぱら修行なのだが…しかし強くなるためだ煩わしいことなんて何もない。
「なんでまた…A組同士でやってろよ。どう考えてもA組との力の差は歴然だろ…。」
「学校としては少しでも優秀なやつを引き抜きたいんだろう。」
聡はニヤリと俺を見てくる。
「前から思ってたんだけどよ、お前さ何か隠してるよな。」
…勘の鋭い奴め
「何のことだよ。俺は見ての通り剣術と武術だけの戦士だよ。お前ら魔法使いとは違うんだ。」
「そうか…。ならお前は上級戦士だろうな。」
またしてもニヤリと口元を吊り上げる、どうやら聡には皮肉が通じないらしい。
*
今俺たちは演習場に来ている。
(こうやって見ると普通なんだけどな…。)
慣れた様子で授業前の時間を友達とじゃれ合ったり、話をしている三年のA組の先輩たち。
机の上とは違う授業にワクワクが抑え切れていない一年生。この光景はよくあるものなのだが…俺たちE組のメンバー以外は財力のある一族の人間、もしくは本当に強い実力者たち…どちらにしても俺たちとは育ってきた環境がまるで違う。
あいつの言っていた言葉はやはり正しい。現に今俺は蔑みの目でチラチラ見られてはヒソヒソと囁かれている。
「みどりくん…大丈夫?」
やって来たのは雨美と夏だ。
「何のことだ?俺はいつだって元気だぜ。」
「いや…そうじゃなくて…。」
「……心配するな。俺はこんなもんで傷つくほどヤワじゃない…わかったらお前らは向こうに行ってろ。変に思われるぞ。」
雨美は何か言いかけるがA組の元へと戻っていく。
「…………。」
「ん?どうしたんだよ夏。お前も行けよ。」
「……どうして…?どうしてそんなに平気でいられるのよ!」
「………さあな。」
「……でもあたしは…あたしはあんたの力認めてるから。雨美だってあんたを信じてるわ。」
「なんだ?慰めてくれてるのか?」
「なっ…!そ、そんなわけないでしょ!!も、もう行くわ!」
「…ありがとう。」
恐らくあいつには聞こえてないだろう。
「さて今日は合同修練だ。一年生は三年生からしっかり学ぶようにな。それから三年は改めて基礎基本を確認するいい機会だ。ではE組から三年とペアを組んでくれ。」
先生の合図で各々先輩とペアを組み始める、しかし俺は自らいけるはずもない。俺は余った先輩とペアになり、先輩はハズレを引いたように残念がるのだろう。
そんな俺の元に思わぬ人物がやって来る。
「緑君。わたしと組まない?」
周りがどよめく。俺に声をかけたのは生徒会長…蛇野先輩だった。
「会…蛇野先輩…。俺でいいんですか?」
「ええ。もちろんよ。」
迷うことなくはっきりと応えた先輩。
周りからは「まさか断るんじゃないだろうな?」や「お前が会長と組むなんてあり得ない。」と言いたげな視線が向けられる。
「…俺でよければぜひ。」
「じゃあよろしくね。」
「ちょ、ちょっと待てよ!なんで蛇野さんがそんなやつを?」
声をあげたのはいつか見たあのチンピラの一人だった。よく見ると他の奴らもいるようだ。
「なんでって言われてもね…。彼が残っていたから…気になるからじゃダメかな?」
「なっ!」
俺が驚くと。女子はキャーッと沸き立ち。男子からは嫉妬の目で見られる。
「…チッ。」
不満そうだったが蛇野先輩が相手だからだろう、すんなりと引き下がる。
こうして合同修練は始まった。
修練は基本的にはペアの先輩の指示に従って基礎を行う、その後実戦的に試合をしてみる。このシステムでやっている。
俺には五大属性魔法が使えないので魔法は避けるしかない、そう言い出した先輩は魔力を打ち出してきた。先輩はやはり【魔力武装】が使えた。その色は黄色だった。
「ん?へぇ~これわかるんだ。フフッ、わたしは見ての通り雷属性を使うの。」
次々に迫る魔力の弾を避けるが時より混ざる体術にも注意していると何発か当たってしまった。
「はぁはぁはぁ…。」
「お疲れ様、緑君。」
「いえ…。大丈夫です…今更ですけど俺、先輩に名前言いましたっけ?」
「言ってないわね。でもわたしは生徒会長よ。知らないことは無いわ。」
「そうですか…。」
職権乱用ってことかな?
そうしてるうちにE組の修練は終わった。その後A組も終えると試合に入るようだ。
「よし!今から実戦的にここで戦ってもらう。もちろん死人がでるような魔法は禁止だからな。じゃあ誰からやるか?」
「なあみんな!せっかく蛇野さんが海原緑を指導したんだしよ、やっぱみたくねぇか?」
そう言って立ち上がったのはまたしてもあのチンピラだった。
周りの奴らも便乗して囃し立てた。
「そう言ってるが…どうだ海原?やってみないか?」
「いや…その……」
「それはいいですね!わたしとしても見たいところですし。」
俺の言葉を遮って蛇野先輩は言った。
「ちょっ、先輩。」
「大丈夫よ。緑君ならあの人たちくらい。フフッ。」
先輩の笑顔があまりに妖艶で冷や汗が止まらない。
「ま、まさか…?」
「そうね。あなたたち五人で相手をしてくれないかしら。」
「いくらなんでもそれは無茶なんじゃないか、蛇野。」
先生も口を出してきた。当然だろう。E組の落ちこぼれが三年のそれもA組の五人を相手にするのだから。
「いえ、大丈夫です先生。彼なら大きな怪我を負うこともないでしょう。最悪の場合はわたしが止めに入ります。」
「そうか…。お前が言うなら許可しよう。」
おいおい、それでもあんた先生かよ。俺は無理だっての。
「待ってください!みど…海原君じゃ無理です。五大属性も使えないんですよ。A組の先輩の相手になるわけないじゃないですか!」
声をあげたのは夏だった。
しかし先輩は一歩も引かなかった。
「あらどうかしら?わたしはさっき相手をして判断したのだけど。火野さんは彼が信じられないの?」
「そうじゃありません!でも…。」
夏は返す言葉がなかった…はぁ…。
「わかりました。先輩の期待に添えるかはわかりませんがやってみます。」
先輩は満足そうに頷くとチンピラA (仮)に向かって言う。
「彼はやる気だけど、あなたたちはどうかしら?」
「もちろんやりますよ。」
あいつらは懲りてないらしい。ニヤニヤと笑うと準備を始めた。
まさかこの試合が故意的に仕組まれたものだとは誰も思わなかっただろう。
*
「じゃあもう一度確認するが殺傷能力の高い魔法は厳禁だからな。」
先生は確認をとると少し離れて成り行きを見守った。
「やめておくなら今のうちだぜ。」
「なんですか先輩。あなた達の所為でこうなったんでしょうに。」
「この…ガキ…。」
「あまり歳は変わらないと思うんですが…さあ、さっさと始めましょう。」
「その余裕がいつまで続くだろうな、ハッハッハ!」
チンピラAとEは詠唱を始めた。俺はすぐに懐へ潜り込もうとするが、チンピラBとCが剣を構えて間に入ってきた。
(チッ…)
俺も剣を取り出そうとするが、ここでは人の目が多すぎて使うわけにもいかない。
迫り来る刃を躱すと次の刃が迫る、俺はCの手首を掴むと動きを止め腹に蹴りをいれる。苦しそうに喘ぐが大したダメージではない。
Bにも蹴りを入れようとするが、バックステップで躱されてしまう。
するとAの詠唱は終わったようで、火炎が迫っていた。
俺は横に転がるように躱すがその先にはDがいた。
(しまっ…)
慌てて顔を覆うとその腕に衝撃が奔り蹴り飛ばされる。
(まずい…)
予想以上の連携だった。さすがはA組と言うべきだろうか。
俺はどうにかして剣を出さなければ勝機はない。
だが、相手は手を緩めない。
再びBとCとDが向かって来る、Eは未だに詠唱していて余程の大技と思われる。
(まずはEをやらないとマズイな。)
スピードなら優っている。素早く躱して一目散にEへと向かうが、Aが邪魔をする。
「邪魔なんだよ!」
横蹴りするが躱される。
そして、俺は腹に火の玉を受けた。
「ぐぁっ!」
「どうしたんだよ、ガキ。そんなもんか?」
おかしい…この前までとは比べ物にならない。連携といい…あの蹴りだって間違いなく決まっていた。それに今のも…。
俺は腹に目をやるとゼロ距離で受けたため服は焼け、皮膚には火傷のように赤くなっていた。
「なんだ。詰まらなかったな。終わりだ。」
Eの詠唱が終わったようだ。俺の目の前には青い炎の玉が…それも特段大きなそれが俺に迫っていた。
「お、おい!やめろお前ら!それは危険だ!」
先生はやめるように言うが聞く様子はない。
「死ね。」
蛇野先輩は目を細め妖艶に微笑んでいた。
(助けるんじゃないのかよ…仕方ない…よな…【黒…)
「【氷水(Ice Aqua)】」
透き通った声で紡がれた魔法はその火の玉を凍らせていく。
そして全てが氷に覆われ氷塊となると、それは粉々になり空気中に舞う。キラキラと輝きダイヤモンドダストを見ているようだ。その光景に皆目を奪われる。
(この魔法は…。)
俺はこの魔法の使用者…雨美の方を見る。雨美は安心したのかヘナヘナと床に座り込む。
すると、すぐに顔をあげてチンピラ達を睨んだあと蛇野先輩へと向ける。
「どうしてですか、会長!!わたしは会長が危なくなったら止めてくれると夏ちゃんに言ったから何も言わなかった…でも!あなたはみどり君を助けなかった!」
雨美が珍しく怒っていた。見慣れないその剣幕に皆驚いていたが先輩は違った。
「ごめんなさい。悪気はなかったの。ただ少し彼の本気が見たかっただけ。」
「本気…?本気ってなんですか?みどり君が実は魔法が使えるとでも言うんですか?そんな保障はどこにもないはずです!会長…わたしはあなたを許しません…あなた達もです!」
そう言うとチンピラ達を睨むが、全く気にした様子がない。
……やっぱり変だ…。
あの後、あいつらは先生と一緒に指導室へ行き。蛇野先輩は俺に謝ると先生についていった。
雨美は俺のところにやって来ると火傷した腹を水で冷やしてくれて、夏も心配そうにやって来ると火傷の痕を見ていた。
俺は何か引っかかっていた。この前とは動きが…いや、威力も違い過ぎた。疑うには十分過ぎる。
(何かイヤな予感がするな…)
予感が外れるといい…切実に願っていた。
*
月が輝き、今夜は夜風が気持ち良い。しかし彼女らは陰湿な廃ビルにいた。
「どうかしら?その力気に入ってもらえた?」
妖しく笑んでいるのは、生徒会長…蛇野綾だ。
「もちろんですよ。この力…この力があれば、あのガキを凌駕できる。」
「そうだな…。それにまだあの力を使ってなくてこれだ…使うとどうなるんだろうな。ヒッヒッヒ。」
男達は怪しげに笑う。その様子は常人の様子とは違っていたが、その事に彼らは気づいていない。
「じゃあ明日も彼、部活みたいだから帰りにでも襲って殺っちゃいなさい。」
「当然ですよ。殺ったらこの力貰っていいんですよね?」
「ええ、もちろん。好きにどうぞ。」
男達は楽しそうに笑いながら去って行ったが、足取りは覚束ない様子だった。
「せいぜい楽しませてね、おバカさん達。彼とどこまでやれるのか楽しみだわ。」
月の光が彼女を妖しく照らした。
明日は満月だ。
もう間もなく一章が完結します。これからもよろしくお願いします。
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