表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第七章 overwrite personality
90/114

第85話 恋人のふりだって言ったのに byヴィクトリア

「今度の日曜日、トリアは翔君とデートすること」


最近できた遊園地、ティルナノーグランドのチケットを手に、イヴォンヌがそう爆弾を投下した。恋人のふりをするならうってつけだとのこと。大方、新聞屋に押し付けられたチケットなんだろうけどなんだかなあ。


「そう言えば、はちゅって何の英雄になったの?」


「トリアってごまかし方下手ねー」


「……ほっといて」


と言うわけで、私は久保とデートすることになった。

こんなこともあろうかと、とばかりに義姉さんが仕上げたガーリーな服を身にまとい、久保と……。


「腕とか、組んだ方がいいのかな?」


「いや、普通でいいだろう」


チケットを係員に見せて二人で肩を並べて中へ入ったそのとき。


「お、お客様!ライフルの持ち込みは、ご遠慮ください!」


「問題ない。ハンティングのライセンスは、持っている」


「ここは、禁猟区以前に遊戯施設です!他のお客様の迷惑になりますので……」


「あなた!みっともないことしないの!」


「ひでぶ!?」


どこかの知らない夫婦が、入り口で係員ともめているようだ。

声に聞き覚えなんか全くないのに、何で変な汗かいてるんだろう。

だからとにかく、振り向くな私。

でも、うちのお父さんもハンティングのライセンス持ってるんだよね。

うん!偶然って、すごいなあ。


「お客さん。写真一枚どうだね」


ハンチング帽をかぶった時雨沢さんがカメラ片手にそう言ってきた。

少しは変装とかしようよ。


「カップル限定で、パネルにして入り口に無断で張り付けておくサービスを実施中です」


「待て!ここには無断なのか!」


「ええ。やったもの勝ちです」


酷いな。無表情でVサインとかしてるし。

断るのも不自然だから応じることにしたけど、フレームに入らないとか言って必要以上にくっつけようとしてない?


「あ。写真サービスやってる」


「すみません。俺らも写真、いいですか」


そういって現れたのは、2人の男。一瞬、あの二人かと思いきや違って何よりだ。

でも、何でディルムッドとク・ホリンの二人だと思ったんだろう。全く似てないのに。


「申し訳ありませんが、これはカップル限定のサービスとなっております」


「大丈夫。俺ら付き合ってるから」


そう言って男の一人がもう一人の男の腰を抱き、その人は彼にしなだれかかる。


「……なら、問題ありません。1+1は?」


「「に!」」


まあ、本人たちが幸せならいいんだろう。彼らの写真を入り口に貼られるティルナノーグランドの明日はどっちか分からないけど。


ホモカップルを待ってまで、写真撮影に応じる必要はないので取りあえず鉄板のジェットコースターやフリーフォールに乗り、通りがかった先にあるのはお化け屋敷。


「苦手か?」


「まさか!」


私は先に進もうと……。


「暗がりで二人きりなど認めん」


「カーミラちゃん直伝!アイアンメイデン!!」


「ほげら!?」


義姉さんに技を教わる人っているんだな。振り向かないよ?こうなったら意地だ。

中に入ると隣に久保が追いついて横に並んだ。


「さっきから何者なんだろうな、あの猫人をしばき倒す栗鼠人は」


「なんだろうね。アトラクションみたいな感じじゃない?」


「ヒーローイベントのために誘拐される役を選ぶみたいな感じか?」


「そうそう。そんな感じ」


なんでかなあ。

帰ったら、お父様に腹パン入れようって固く心に誓ってるんだけど理由が分からないや。


【フィオナ視点】


遊園地で、中年の猫人が中年の栗鼠人にタコ殴りにされていると言う珍妙な光景を目の当たりにしていると、妙にげっそりしたク・ホリンとディルが戻って来た。


「まさか、ホモカップルを演じる羽目になろうとは」


「姫君が作った、容姿を変化させる装置がなかったら自害物だな」


あの二人にばれないように、光の屈折率と反射率を変えて姿形を別人に見せる装置を作っておいて正解だったようだ。お姉さまが、あの兎人とデートだなんて冗談じゃないわ。お姉さまのクラスにいる獣人の一人を、こちら側に引きずり込んでなかったらと思うとぞっとする。おっと、この二人に言わなきゃいけないことがあったんだっけ。


「あれ、入り口に飾られるらしいわよ」


「「誰得だあ!!」」


うるさいわね。ばれたらどうするのよ。大の男が二人して、涙目で叫ばないで。

それより私も、装置を使ってから後をつけないと。


「そんなことよりも、どっちでもいいから付いてきて。一人でお化け屋敷に入ったら、確実に変な女じゃないの」


私とディルは、変装してお化け屋敷の中へ。薄暗いのは、ばれにくいからいけど、このおどろおどろしい曲は、要らなくない?


「姫君」


「何ですか?」


「ひょっとして、怖いから一人で入れなかったのですか?」


私の腕は何故かディルの腕に絡まっており、体が震えてるのを見ての結論だろう。

何をバカな。これは武者震いです。


「それなら別にかまいませんが、あそこから恐らく手がうわあっと出て来ますから気を付けてください」


「何で言うかな、何で言うかな」


勘違いしないでよね。思わず、涙目になんかなってないんだから。

……出ない。ディルの予想も当てには……。

間をおいて、天井から血まみれの腕が大量に垂れてきた。


「きゃあああああああああああああ!!?」


ディルは、腹を抱えて笑ってる。だましたわね。

私も、彼をひっかけようとしましたが全戦全敗でした。ホラー嫌い!


【フィオナ視点 了】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ