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Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第七章 overwrite personality
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第83話 ヴィクトリアのうかつさは父譲り

「……はあ」


私は、深いため息を吐いた。フィオナが爆弾を投下して3日と経たずに、私とフィオナが出来てると言う噂が学院中に広まってしまったのだ。好奇の視線にさらされるのはまだましな方で、たまに俺が男の良さを教えてやると私に迫る男も現れる始末。


「これと言うのもみんな、あんたのせいだってこと分かってる?」


私はフィオナのいる教室に入り、五感支配ナイトオブラウンズで全身を切り刻まれる幻覚を与えて弱らせてから、屋上へ引きずり込んだディルムッドを、眼下に収めてそう言った。


「何がですか。アーサー王」


「八つ当たりだってことは、十分承知してる。あれは、連れ出すタイミングを誤った私とフィオナの天然による事故だってことも。あなたが、私とフィオナが百合ップルだと言う噂を、ク・ホリンと一緒になって学院中に触れ回るほど節操のない英雄だとも思っていない」


「恐らくは、あの場にいたクラスメートが話してネズミ算的に広まったものかと。我々は、一切他言してはおりません」


そうよね。仮にも英雄が、自分の名を汚すような真似はしないでしょう。

でも、私は思うのよ。あの時、私がフィオナを屋上に連れ出すのをあなたが邪魔しなければこんな目に合わずに済んだと。


「だから、憂さ晴らしついでに後顧の憂いを断つ」


私は王者の剣とエクスカリバーを構えると、ディルムッドは2本の剣を構えた。

長剣のモラルタと短剣のベガルタか。


「最初は二本の槍じゃないの?」


「王が剣で向かうのに私が槍では負けを認めるようなものですからな」


なるほどね。でも、王は騎士とは一味違うわよ。


「火刑に処す」


ディルムッドは火に包まれる幻覚に苦しみだした。

私は戦うなんて言ってない。王が騎士を処分するだけだ。


「これは幻覚のはずだ。なのに肉が焼ける匂いが……火の爆ぜる音が……灼熱の炎が照り付けるとは」


「アーサー王の火刑は騎士により失敗している」


これはただの勘。横に飛びながらエクスカリバーで棘を切り払い床を転がると、私がいた辺りに立っていたのはク・ホリン。


「やってくれるじゃないか。犬」


「てめえ。ゲイボルグの棘を、切り捨てやがったな」


致命傷になるところだけを、切り払っただけだけどね。それ以外の場所は、鞘が治してくれるし。


「どうせ、竹の子みたいにまたにょっきり生えてくるんだろう?細かい男は嫌われるぞ。何なら漫研に行って、ク・ホリン×ディルムッド本でも書いてもらうよう依頼してやろうか?」


戦闘モードに入ると、アーサー王の人格が前に出て来やすくなるな。ただでさえ、記憶障害になっているからなおさらか。

うちのクラスは、魔王対策で作られたので部活に入ることは許されないが、この学院自体には部活動がある。実際、私も前のクラスでは弓道部だった。


「今回は、あの鳳凰人はいないのか?」


私の前には、手負いとはいえディルムッドとク・ホリンがいる。今回は、単独行動のため確かにやばい。

幻想は創らせないとばかりに、ク・ホリンは私に槍で猛攻してくるしこれはひょっとして万事休すというやつか。


【モイセス視点】


「私といいことしない?」


俺はステファニーに呼ばれ、体育館裏に来てみたらそんな用件だった。

何でどいつもこいつも俺がカーミラの配偶者だからってあいつと同じような目で見るんだ。


「一つだけ言っておく。俺は、カーミラじゃない」


「は?何でそこで、セクハラの女王が……て、違う違う!そう言う意味じゃないから!」


何でも俺に魔王側のスパイをやってほしいんだとか。孫行者と言えば天界や地上で悪逆の限りを尽くした

妖怪だ。ならばつけ入る隙があるとでも思っているのだろう。


「魔王復活に協力して欲しいのよ。何ならあなたが再び斉天大聖となることも推挙しましょう」


「頷くとでも思っているのか?」


だが俺はそんな地位はどうでもいいし、それ以前にこいつらと組むメリットはひとかけらも見当たらない。


「嫌だと言っても従ってもらう」


そう言うとステファニーはアロンダイトを抜き出した。


「単なる伸びる棒が、アーサー王と同等の霊格を持つランスロッドの愛剣・アロンダイトに打ち勝てると思わないことね」


俺はそれを聞くと声をあげて笑った。ランスロッドがアーサー王と同等の霊格だと?これは傑作だ。


「ステファニー。いや、ランスロッドよ。本気で言っているのであれば、俺はお前の健忘を疑わねばならん。裏切りに合うも戦場で騎士として果てたアーサー王と、昔の女が忘れられずに再度アタックするも袖にされ、その女が死んだことを知ると自ら食を断って後追い自殺をしたランスロッドが、同等の霊格だと?これは愉快だ。こいつが、ただの伸びる棒なら、お前のそれは、ただの刃こぼれしないだけの刀だろう?」


因みに、その単なる伸びる棒の重量は一万三千五百斤、およそ8トンだったりする。言わないけどな。

本来なら、重さも鋭さもない棒術は軽視されるがだからこそつけ入る隙があるんだ。

俺は偽装を兼ねて如意棒を旋回させると、ステファニーをアロンダイトごと吹き飛ばし背中を壁に叩きつけた。


「へぶあ!?……何、今の一撃……重すぎる」


こいつ、一瞬原形がなくなっていなかったか?それなのに、あっという間に復元しやがった。こいつ、ランスロッドだけの能力じゃないな。そう言えば、あのショタコンは頭だけで生きていたな。こいつも、同じような呪いをかけられたのかもしれん。だとしたら、つくづく間抜けだな、ランスロッド。


【モイセス視点 了】

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