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Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第七章 overwrite personality
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第82話 セクハラの女王は雷神

私は、フィーア先生にフィオナの教室がどこかを教えてもらい、「話があるから来て」と彼女を連れて屋上に一緒に行くように促すと、ディルムッドが私に槍の穂先を向けた。


「これは、何のつもり?」


「こちらのセリフですよ、アーサー王。一騎打ちなどされては、我々の立場がありませんからね」


「そう言うんじゃない。私はただ、彼女に聞きたいことがあるのよ」


「私に、ですか?」


「ならば、ここでもいいでしょう。それに、屋上まで行っては帰ってくる頃には授業が始まっていますよ。ヤマモト先輩」


小憎らしい切り返しだけど、確かに彼の言うことはもっともだ。

私はため息を吐くと、彼女に本題を告げることにした。


「ステファニーを、ランスロッドに変性したのはあなたの仕業?」


「ええ。彼女なら、お姉さまに迎合することはないでしょうから」


それはそうね。あいつが、私に協力することなんてまずないとトリアの記憶も同意している。

でも、本題はそこじゃない。私が聞きたいことは、ただ一つ。


「つまり、私と同じことをステファニーにしたの?ずいぶん軽いわね、あなた」


「な……違います!!彼女には、血の契約をしただけです。指を傷付けて、唇にその血を塗って呪文を唱えただけです!私は、お姉さま以外の人とキスする気なんかありません!!」


バカ!何、直球投げてるのよ?教室には、彼女のクラスメイトが大勢いるからぼやかしたのに台無しじゃない。もっとも、それだけ彼女を興奮させているということか。

百合か?百合なのか?とか、こんな大勢の前でカミングアウト?勇気あるわねえとか、ユリップルの痴話げんかかよ、とかクラスでごちゃごちゃ騒がしくなってるじゃない。

でも、彼女の情報はできるだけ引き出したい。


「その呪文って、何よ」


「それ以上は……ぐ!?」


開かれたドアから電流が放たれ、ディルムッドに命中。

体がしびれて、まともに動かせないようだ。


「流石は英雄。普通なら、失神する電圧だったんだけどねえ」


「カーミラ・フォン・ヤマモト……貴様も、英雄になったのか」


「ああ、私は雷神ゼウスに変性したのさ。雷の魔法を得意としていた私には、うってつけの英雄だと思わないかい?」


どちらかというと、配偶者に頭が上がらない女好きだからだと思うけど。

それはともかく、ディルムッドは義姉さんに任せておくことにしよう。


「その呪文は何か、教えてくれるかしら?」


彼女の髪を撫でて、耳元でささやくと「Eloim, Essaim Elo'tm, Essaim(エロヒムよ、エサイムよ、わが呼び声を聞け)」だと教えてくれた。

ありがとう。私はそう言って教室を出、義姉さんも付いて来た。実は、義姉さんに教室の扉の前に待機してもらっていたんだ。


「義姉さん、フォローありがとう」


「いやいや、気にすることはないさ。でも、槍を向けられたとき、私に出るなと目で合図してきたときは奴にばれるかと思ったよ」


「うん。私も」


あいつの前ではああ言ったけど、やっぱり私は女の子との恋愛はないわ。

グィネヴィアとは、愛し合ったけど……グィネヴィア……。


「どうしたんだい、トリア?顔を真っ赤にして」


「な、なんでもありませんのことよ!?」


「ま。いいけどね」


教室に戻ると、私はフィオナがステファニーを英雄に変性させた方法を話した。


「それなら、確かに出来るかもなあ」


さすが兄さん、神様の分け御霊を宿しただけのことはある。


「そんな回りくどいことをしなくても、モイセスさんが皆にキスすれば英雄になるんじゃないの?」


「……礼志、一つだけ言っておく。俺は、カーミラじゃない」


「ごめんなさい。僕が、間違ってました」


何で、それで説得できるんだい!?しかも、納得しないでおくれよ!!とわめく義姉さんを尻目に、私はため息を吐いた。


「義姉さんは、もっと上品に迫ればプレイガールになれるんじゃない?」


「ほっといておくれ」


あ、ちょっと涙目になってる。


「HRの時間は、始まってるぞ」


いつの間にか来てたフィーア先生は、呆れた声を出した。


【フィオナ視点】


「姫君、あれでは新たな英雄を変性されかねませんぞ」


「お姉さまに軽い女と思われるぐらいなら、そっちの方が万倍ましです」


「何があった?」


ク・ホリンが、ようやく教室に顔を現した。げっそりしているのは、気のせいかしら。

今まであったことを話すと、彼まで頭を抱える始末。何よ、いいじゃない。


「しかしそうなると、あの鳳凰人は何でゼウスに変性したんだ?血の契約を知らなかったということは、キスで変性したんだろ」


「ということは彼女が英雄になったのは、モイセス・フォン・ヤマモトによるものか。そう言えばあの鵺、すっぽ抜けたアロンダイトを棒で叩き落としていたな」


「棒術となると、恐らくはシャイナ系の英雄だな。一番有名なのは、孫悟空か」


あれ?でも、カーミラ先輩とか言う鳳凰人はセクハラの女王とか言われてなかったかな。

どこかの女の子とキスして、みたいな可能性もあると思うけどどうだろう。


【フィオナ視点 了】

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