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Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第七章 overwrite personality
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第80話 男子厨房に入るべからず by初音

どうしてこうなった。私は保健室のベッドで横になっており、礼志君が心配そうにしている。

問題が起こったのは昼休み。お弁当を食べているときふと礼志君のお弁当が気になった。

男の子が自分で作っているだけあって肉主体だ。さすがにバランスが悪いだろうと礼志君とお弁当のおかずを交換して彼手製のミニハンバーグを食べたとき一瞬で意識が飛んだというわけ。


久保によると彼の弁当から薬品臭がしたとか。どういうこと?

お母様がやってきて礼志君にいろいろ料理の作り方を聞いてたけどレシピを見て作ったと言うだけありそんなに間違ってはいなかった。お弁当もちゃんと冷ましてからふたを閉めたというし手も事前に洗っている。じゃあなんで私は保健室送りになったのか。


「質問を変えるわ。礼志君、あなた料理を作ってる最中何故か鍋とかフライパンが溶け出したりしなかった?」


「うん。鍋がみるみる溶けていくのに焦ったよ。あれどうやって防ぐの?」


鍋は普通溶けないよね?なんでそうなるの?

お母様はため息を吐くとやっぱり陽翔君の血かとため息を吐いた。お母様によると御厨のおじさんがうちでメイドとして働いていた頃決して厨房に入れてもらえなかったのだそうだ。なんでも普通に料理を作るだけで化学薬品を生成してしまう困った体質の持ち主だったからであり、礼志君にもそれが遺伝しているんだろうとのこと。


「ああ。そう言えばこの前礼志君のミートボールを食べたときシュワシュワしてた」


私を保健室に運んでくれた優華ちゃんはなんともなかったそうだ。

欲しいなあその黄金の胃袋。


「トリア。今日は大事を取って休んだ方がいいわ」


「そうはいかない。私はもう大丈夫だし外せない用事があるのよ」


あいつに逃げたなんて思われたくないからね。


【フィオナ視点】


放課後になった。ステファニーはアロンダイトを手に屋上に立っている。

あれは別にどうでもいいけどお姉さまの戦う姿をこの目に焼き付けられるなら重畳というもの。

あ、お姉さまも来た。右手には長剣、左手に短剣を持っている。

ってアーサー王って二刀流だったかしら?


「何であんたが二刀流なのよ!?」


「アーサー王が二本の刀を所有していたのは当然でしょう」


「一本目が折れたから二本目を手にしたんでしょうが!どっちがどっちよ!」


「長いほうが王者の剣。短い方がエクスカリバーよ」


「ふつう逆じゃないの!?」


バカね。それで正解よ。エクスカリバーは鋼すら断つ霊刀。ならば長いリーチなんか必要ない。

王者の剣はあくまでダミー。それに気づかなければステファニーに活路はない。

二人は間合いをとると一気にそれを詰め、しのぎを削る。

お姉さまの実力は意見させてもらうわ。


【フィオナ視点 了/モイセス視点】


屋上に行くと既にトリアとステファニーがつばぜり合いをしていた。

それはいい。問題は魔王一味がいるということだ。


「まさかとは思うがそこの鵺。俺たちがあいつらに茶々を入れるとか思ってないか?」


「違うのか?ク・ホリン」


「一人の英雄としてあの決闘を汚す真似はしねえよ」


アーサー王とランスロットは決着をつけていない。だがランスロットは何度もアーサー王を出し抜いているし何より騎士としての評価はアーサー王より上だ。


「モイセス。この戦いどう見る」


「分からん。剣の技量においてはアーサー王よりランスロットの方が上だ。だがヴィクトリアはステファニーよりも強い」


「±0か。厄介な」


トリアが長剣でアロンダイトを受け止めその隙に短剣をステファニーに突き刺そうとするも驚異的な反射神経でかわしていく。

だが拮抗しているのは剣の腕のみ。ステファニーに疲れが見え始めた。そりゃそうだろう。子供の頃から波動柔術を習い続けたトリアとただの少女では基礎体力が違いすぎる。

というか顔が汗で溶け始めてないか?


「あ!?」


手の汗で剣がすっぽ抜けアロンダイトがこちらに飛んできた。


「ふん」


如意金箍棒で叩き落とすとトリアは短剣の先でステファニーの喉元をとらえていた。


「私の勝ちよ。ステファニー」


長剣がへし折れているところを見ると楽勝と言う戦いでは決してなかっただろう。

これが英雄化した者の膂力なのか。


【モイセス視点 了】


「何?これで勝ったつもりなの?」


ステファニーはそう言うと剣先にスタンガンを当てた。

電気が全身にほとばしる。


「な……それアリなの!?」


義姉さんの言葉に笑って答えたのはク・ホリン。決闘に剣しか使わないとは限らないと。


「もっともスマートじゃないがな」


ステファニーはアロンダイトのある位置まで駆けるとそれを手にした。


「今回は私の負けということにしておいてあげるわ」


そう言うとステファニーは一礼して去って行った。かなり強力な電圧だったらしく私は片ひざをついたまま決闘は私の勝ちに終わった。これじゃあ私が負けたみたいじゃない。


「試合に勝って勝負に負けた……か。らしいと言えばらしい結末だな、アーサー王」


ほっといてよ、犬。

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