表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第七章 overwrite personality
83/114

第78話 犬も歩けば王にあたる

『誰だお前』


皆で声をそろわせなくてもよくないか。それ以前に何故ばれた。

皆が言うにはヴィクトリアの食べ方は上品と下品の中間みたいな食べ方なんだとか。

雑なのに品がいいという誰にも真似できないようなと言うか他の人間がやっても下品にしかとられないような所作で優雅に食べるそうだ。

なくて七癖。彼女の記憶だけでは補完できない言動もあるということか。


「私は私です」


「確かに顔も声も姉ちゃんだけど目が赤いし何からしくない」


「なら魂を作り変えられたとでもなら言えば信じるんですか?」


そもそも私はたばかるのは苦手だ。そういうのはマーリンに任せていたからな。

いや、違う。そういう記憶が存在していると言った方が正しいか。

私はヴィクトリア・フォン・ヤマモトであった者であり、アーサー王などと言う実在が疑われる魂を宿す余地はない。

私は生卵をゆで卵に変えるようにヴィクトリアからアーサー王に変換されただけなのだ。


「それって姉ちゃんの人格を別の人格に上書きされたということか」


「そういうことだ。私は皆の記憶も持っているし新たな人格の持つ伝説を自らの思い出としている」


それならいいかと言う空気になり私は義姉さんと学院に通うことにした。兄さんは病欠だとか。

人体模型のはずなのに熱が出て汗をかいているところを見ると長寿の生命体になるのかもしれないとは義姉さんの予想だ。

無事乗り越えてくれるといいんだが。


【クー・フーリン視点】


面白い気配がする。俺は新たな反応を追っていた。神聖波動と魔力。決して共存するはずがないそれが一つの個体の中に共存している。

この反応は明らかに英雄に変性した者の反応だ。探索のルーンを使いその新たな英雄を見つけ出すことができた。


「そこの英雄。名を何と言う」


学院の制服を着た赤い目の女の前に立った。昨日の鳳凰人が緊張を全身に走らせているが安心しろ。

今のお前に興味はねえ。


「我が名はク・ホリン。鳳凰人の隣に立っている人間の女。名を名乗れ」


そう言って槍を構える俺に女はアーサー・ペンドラゴンと名乗った。

アーサー王ねえ。姫君フィオナが覚醒させたからケルト神話関連の英雄に変性したんだろうか。

だがそれはこの際どうでもいいがな。

アーサー王ということは武器は聖剣エクスカリバー。得物はこちらの方が有利だ。


「剣を構えなアーサー王。クランの猛犬がその首もらい受ける」


戦いの空気を感じているからだろう。俺の肉体が変貌していくのが分かる。


「犬が王に噛みつくか。だがお前は大切なことを忘れている」


何だと?

アーサー王の真意はすぐ知れた。周りにいる学生たちが鎧兜をつけ、槍を手にしてこちらに向けてきたのだ。


「彼の者を滅せよ。円卓の騎士ラウンドオブナイツ


王と戦うからには騎士を相手にしろってことか。だがその考えは甘いにも程がある。

俺は自軍の兵士がヴァハの呪いで身動きが取れない中、援軍が来る5日間文字通り孤軍奮闘したんだ。

即席の軍勢なんか目じゃねえよ。


だがそれは俺の油断だった。かわしたはずの槍の穂先が脇腹に刺さり、ゲイボルグでたたき落としたはずの大量の矢が俺の全身を貫く。


「かはっ!?」


口から出る血は鼻に鉄の味と匂いを感じさせる。俺は負けるかもしれない。だがこの名を持つ俺が犬死にすることだけは許されない。


「危ない!」


そう女の声がすると周りの人間はただの学生に戻り鎧兜も武器も見当たらない。それどころか俺は傷一つついてはいなかった。

あれが幻だと言うのか。アーサー王を名乗る女がいたところにはディルムッドが立っており、彼女自身はどうやら鳳凰人の女が突き飛ばしたようだ。


「まだ彼らを手にかける時ではないはずですよ。ク・ホリン殿」


「ちょいと遊んでやろうと思っただけさ。どんな英雄か分かれば対策の仕様もあるってもんだろ。ディルムッド」


嬢ちゃん達に別れを告げると姫君のところへと向かった。お小言は手加減してほしいがな。


【クー・フーリン視点 了】


ひいてくれて助かった。さすがに英雄二人は骨が折れる。


「クー・フーリンは何で一人で悶えてたんだい?」


「私があれの感覚を支配したからさ」


恐らくあれは私と同じ様に英雄に作り替えられた人間だ。ならば視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触角の5つも当然存在している。

ならばそれを支配し、矢や槍で傷付けられたと脳に直接命令すれば痛覚は応えるのだ。一番分かりやすい例でいうと催眠術。

これは火だと暗示をかけて氷を手につけるとその部分が火傷を負ったということがあるらしい。本当かウソかは分からんが。


「レェジくうん!」


変態の声がして思考の海から出ると礼志君が1/10サイズのヘルメスに襲われていた。


「調教してやるよ!」


礼志君は脳天にバトルバールを叩きつけて脳に直接神聖波動を叩きこんだらしい。

ヘルメスは断末魔を上げて消滅した。肉体が残っている様子がない以上再生は不可能だろう。


「お早う、礼志君。それどうしたの?」


「お早うお姉ちゃん。母ちゃんから変態には容赦するなってこれを送られてきたんだ」


「なるほど」


「それよりお姉ちゃん。その目どうしたの?」


今日は質問責めされる日らしい。覚悟する必要がありそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ